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指揮者・藤岡幸夫 関西発のクラシックを届けたい

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関西フィルハーモニー管弦楽団(関西フィル)の指揮者になって19年目を迎えた藤岡幸夫さん。オーケストラが集中する東京以外の都市でクラシック音楽の裾野を広げたいと、関西フィルと共に歩み続けてきた。就任当初は財政状況が厳しかったが、今では本拠地のコンサートは毎回客席がほぼ埋まる。地元企業も数多く支援してくれるようになり、黒字が続いている。大阪を拠点に、全国にクラシック音楽を発信していく藤岡さんの思いを聞いた。

2018年1月、大阪のいずみホールで演奏会直前の関西フィルと藤岡さんのリハーサルの様子をのぞいた。本番を数時間後に控えた最後の調整で、張り詰めた空気が漂うかと思いきや、ステージからは笑い声も。演奏中でも思い通りの音色が響くと、藤岡さんは笑顔で楽団員に向かって手でOKサインを出す。楽団員側からも音の大きさやリズムについて質問が飛び交う。指揮者と楽団員が、本番ぎりぎりまでこれほど活発にやりとりする様子は初めて見た。

「ラテン系」な関西フィルとともに19年目

藤岡さんは「関西フィルとはいつもこんな調子」と笑う。「よくケンカもしますよ。19年もやってますから、いろんなことがありますけど、一つだけ言えるのは、根に持たないようにしている。ケンカをしても、次の日にはその相手の方に自分から声をかける。言いたいことはお互いに言い合っても大丈夫、という雰囲気をつくっている。意見を聞き合って『一緒に音楽をつくる』というのが僕たちのスタイル。いろんな人に驚かれるけれど、それは僕たちの特徴だと思う」

藤岡さんが関西フィルと出合ったのは、1998年。慶応義塾大学を卒業したあと、日本フィルハーモニー交響楽団の指揮研究員を経て英国王立ノーザン音楽大学で学んだ。その後英国でデビューし、欧州を中心に活動していた時に、関西フィルの客演に招かれた。指揮をした第一印象は「ラテン系なオーケストラ」だった。「普通、日本の楽団は練習中もシーンと静かにしている。ところが関西フィルは団員が楽譜を持ってああでもない、こうでもないと意見を交わしてざわざわしていて、その感じがとてもヨーロッパ的だった。団員の服装もみんなカラフルで、雰囲気があるんです」

 2000年に関西フィルの正指揮者に就任した藤岡さんは「東京以外の街のオーケストラ」と一緒に仕事をすること強く望んでいたという。

「英国に留学して、ヨーロッパにかぶれてもう絶対に日本に帰ってこないと思っていた。ところがいざ行って外から見た日本は、やっぱり素晴らしい国だと思った。マンチェスターに住んでいたけれど電車が時刻表通りについたことなんかないし、びっくりするくらいいい加減。日本のすべて、食生活でも経済でも、日本人にとって当たり前のことがすごい事なんだと気づかされた。ただ、一つだけおかしいと思ったのは、何もかも東京に集中しすぎていること。これは絶対に間違いだと思う」

実際、国内には日本オーケストラ連盟に加盟している正会員と準会員のプロのオーケストラが36団体あるが、このうち東京に拠点を置くのは11団体。定期演奏会の会場も東京23区内に集中している。「クラシックの世界も、なんでもかんでも東京というのが続いているうちはダメだと思って、東京以外の街のオーケストラとやっていきたいって思ったときに関西フィルと出合った。だから我々にしかできないことをもっとやっていきたい。一介の指揮者にすぎないけれど、それが日本という国の発展のためにもなる、という思いで関西フィルとの活動に全力を挙げてきた」

現代作曲家の交響曲初演に挑みチケット完売

2007年には関西フィルの首席指揮者となり、今では多いシーズンは年間50回以上の演奏会を指揮する。「演奏会のプログラムは全て違うので楽団員とは1年のうち100日以上一緒にいる関係。よく続いているなと思う」。指揮者に就任した当初は厳しい財政状況にも直面した。国内のオーケストラのほとんどは、演奏活動による収入に加え、国や地方自治体からの助成金なしには運営がままならない状況だ。

そこで藤岡さんは自らスポンサー集めにも奔走した。今ではダイキン工業を中心に、阪急電鉄やサントリーホールディングスなど、地元の有力企業の支援を取り付け、黒字が続く。「スポンサーにしても企業にしても、ただすばらしい音楽を演奏するので応援してください、ではダメ。関西フィルの強みや、どれくらい集客力があるのかを明確にしないと支援してもらえないので、どうお客さんを増やし、スポンサーを増やすか相当考えてやってきた。より多くの方に聴いていただけるようにすれば、新しいことにもチャレンジできる」

クラシックファンの裾野を広げるため、本拠地大阪での定期演奏会以外の公演を数多く行う。自治体や企業からの依頼を受け、周辺の都市でも小規模の演奏会を重ねてリピーターを増やす作戦だ。「日本はコアなクラシックファンは世界に比べても結構いる。ところが気軽にクラシックコンサートに足を運ぶお客さんが少なすぎる。そういう層をいかに増やすかがとても大切だと思う」

 本拠地以外のコンサートは比較的とっつきやすい演目を選び、より楽しんでもらえるよう自らのトークも必ず入れる。一方、本拠地での演奏会で力を入れているのが、新しい作品の演奏だ。

「新しい作品をどんどん演奏していかないといけないと思っている。ただ、現代音楽はクラシックに比べて難解。もっと分かりやすく、聴きやすい調性のある作品を書ける作曲家は、映画音楽やドラマ音楽の世界に大勢いる。そういう人たちにクラシックの作品を書いてくださいと頼んでいる」。16年にはテレビドラマやCM、映画などの音楽プロデュースで知られる菅野祐悟さんに交響曲を依頼し、「初演でチケットは完売。立ち見まで出て大成功だった」という。ほかにも千住明さんや大島ミチルさんなどとも新しい作品づくりに力を入れている。

新しい作品にこだわるのには、師と仰いだ指揮者の渡辺暁雄氏の言葉がある。「我々音楽の世界の人間は、ベートーベンやブラームスといった過去の作曲家のおかげで飯を食っている。その恩返しを今の作曲家にしないといけない、と渡辺先生はよく言っていた。10年間、新しい作品を発表し続けて、1作品でも世に出ればもうけもんです。でもやらないと絶対に生まれない。そういう意味で僕はすばらしい才能の作曲家の協力も得て、他の楽団では演奏しないような作品を演奏し続けたい。そうすることでいつか、本当にすごい作品が生まれることを願う」

本拠地大阪で奏でるベートーベン「田園交響曲」

新しい作曲家や演奏家の紹介は、自ら司会し、毎週関西フィルと登場するBSジャパンの音楽番組「エンター・ザ・ミュージック」(毎週月曜午後11時放送 4月から毎週土曜午後11時半放送に変更)でも積極的に行っている。長年の目標だった「関西フィルと出演する全国放送のレギュラー番組」も、放送4年目を迎えた。「作曲家の方たちにも出演していただいていて、新しい作品を紹介する番組は珍しいと思う。いままでになかったような音楽番組をつくりたい」

関西フィルとの演奏は藤岡さんにとってライフワークとなり、終わりはない。今の目標は、関西フィルを日本中のどこへ行ってもチケットが売れるオーケストラにすることだという。「たまに東京などに行くけれど、定期的な演奏会はない。演奏旅行で全国をめぐる楽団にするためにはどうしたらいいかと常に考える。逆に東京から新幹線に乗ってでも、『藤岡関西フィル』を聴きたいというお客さんも増やしたい。関西フィルならでは、藤岡ならではというものに、どんどん磨きをかけていきたい」と抱負を語る。

今回の映像では藤岡さんが関西フィルを指揮してベートーベンの「交響曲第6番ヘ長調作品68『田園』」を練習するリハーサル風景を捉えている。鳥のさえずりや小川のせせらぎが聞こえてきそうな標題音楽の性格を持つ「田園」は、古典派からロマン派への時代の幕開けを告げる作品だ。しかしフランスの作家ロマン・ロランが著書「ベートーベンの生涯」で指摘したように、すでに難聴に苦しめられていたベートーベンが耳を傾けていたのは、心の中の田園の響きだったといえる。東京ではないにしても、やはり大都会の大阪のただ中で奏でられる「田園」も、来場者一人ひとりの心の中に自然への憧れを生まずにはおかないだろう。そんな豊穣(ほうじょう)な響きを第5楽章「牧人の歌、嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」の映像から感じ取っていただけたらと思う。

藤岡さん自身は東京で生まれ育ったが、母親は関西出身で「ふるさと納税っていうのがあるけれど、息子を関西に納めました」というのが口癖だったそうだ。「母親の遺言なので、僕は大阪に納められた、という強い思いでこれからも関西フィルと関西に心血を注いでいく」。藤岡さん率いる関西フィルの型にはまらない音楽活動は、地方都市発の新たなオーケストラのあり方を示してくれそうだ。

(映像報道部 槍田真希子)

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