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日本のハイスキル人材の収入は金額や伸びで中国やマレーシアに及ばないという調査結果が出た。 写真はイメージ =PIXTA

日本のハイスキル人材の収入は金額や伸びで中国やマレーシアに及ばないという調査結果が出た。 写真はイメージ =PIXTA

もしも今の2倍の報酬を提示されたら、国外で働きますか――。英大手人材紹介会社のヘイズがアジアで働くハイスキル人材を対象に2017年秋実施した調査によると、給与を不満に感じる人の割合が日本では64%に上った。仕事のために国外への移住を考えている人も58%いた。背景には世界的に激しさを増す人材争奪戦がある。

ITエンジニア需要、アジアで高まる

「年収はとりあえず2倍ぐらいになりますかね」。大手メーカーに勤務する40代の男性社員は、欧米系企業に転職が内定した。勤務先はインドネシアだ。過去に海外勤務の経験があり、IT(情報技術)エンジニアとしての技量も高く評価された。「不安は大きい。使えないと判断されれば、辞めなくてはいけない。しかし、このまま日本にいても、将来、年金ももらえるかどうか、挑戦してみようと」と決断したという。

ヘイズはアジアを対象にした給与調査を08年から実施しており、今回が11回目となる。対象国・地域は日本、中国、香港、シンガポール、マレーシア。調査はクライアント企業約3000社を対象に雇用実態をたずねた部分と、求職者・元求職者を対象にその意識を尋ねた部分で構成されている。調査の実施時期は17年10月から11月にかけて。意識調査の回答者は日本が338人、中国が1345人、香港が314人、シンガポールが768人、マレーシアが779人の合計3544人だ。

無意識の偏見を排除するため、ヘイズでは「ブラインドリクルートメント」という、求職者の属性を隠して採用を進める手法を採っている。各国の回答者にはそこで働く外国籍の人材も含まれているが、この方針に従い、あえて回答者の国籍や性別、年齢などの情報はとっていない。

ヘイズの日本法人「ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン」代表のマーク・ブラジ氏によれば、「ハイスキル人材への需要が増している大きな要因は、第4次産業革命ともいわれるテクノロジーの進化」だ。あらゆるモノがネットにつながるIoT、人工知能(AI)、ディープラーニング(深層学習)などの用語が日々、新聞や雑誌をにぎわせる。自動車業界では自動運転の開発競争も激しくなっている。

このような状況を背景に、どの産業のどの企業も、IT(情報技術)分野におけるスペシャリスト、とりわけプロジェクトを率いることのできるリーダーがほしい。一方で、そのような人材は世界的にも限られており、人材の供給や育成が追いついていない。「なかでも深刻なのは日本だ」とブラジ氏は言う。

「企業は国内だけではなく、地域や国を越えたレベルで人材の獲得を考えなくてはならない時代に入っています。実際、スキルが不足している分野に関して国外からの採用を考えている企業は多いのですが、人材獲得競争は1位にならなくては意味がなく、その点で日本は著しく不利な立場に置かれています」(ブラジ氏)。

主な理由として挙げるのは言葉の壁や文化の違い、所得税の高さなどだが、日系企業の多くで、経営者を含むシニア層の給与が競争相手に比べて低く抑えられている点も大きいという。

この点についてブラジ氏は「終身雇用や年功序列など日本独特の雇用慣行・制度は、国籍を問わずに動くハイパフォーマーたちからはますます不公平な制度だとみられている。このままでは日本から海外への頭脳流出が進み、次世代の経営者候補までもが流出してしまう事態を招きかねません」と話す。

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