1分程度の短い動画で料理の作り方を説明するレシピ動画サービスが、「料理をせずに見て楽しむ」ニーズも取り込み伸びている。なかでも、後発での参入ながら動画数世界一を達成するなど、快進撃を続けているのが「クラシル」だ。人気の秘密はどこにあるのか。運営会社であるdelyの柴田快取締役に聞いた。
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クラシルは当社(dely)が2016年2月に立ち上げたレシピ動画サービスだ。現在、月間1000本以上のレシピ動画を配信しており、累積本数は1万3000本超。17年8月、サービス開始から1年半で、数年先行していた競合他社を抜いてレシピ動画数世界一を達成した。12月にはアプリのダウンロード数が1000万に到達している。
もともとはキュレーションメディアを手がけていた当社がレシピ動画に着目したのは、当時「動画元年」といわれている割には、動画が「来ている」感じがしなかったからだ。ならば自分たちでやってみようかと、代表の堀江裕介がフライパンとまな板を買ってきて、自ら作りながら撮った「ホワイトペンネの作り方」の1分動画。思えばこれがクラシルの原点だった。

レシピは簡単だし、画質は粗っぽく、おいしそうとは言い難い出来栄え。しかしフェイスブックで公開すると、驚くほどアクセスが伸びた。当時のフェイスブックは、ユーチューブへの対抗上、動画配信を伸ばそうとしており、アルゴリズム的に動画の表示が優遇されていたのだ。それに気づいた僕らは、とにかくどんどん動画をアップする作戦に出ることにした。
題材に料理を選んだのは効率が良かったからだ。料理ならば数十センチ幅のスペースで動画を作れるが、例えばファッションなら街や公園に出かけなくてはならない。しかもファッションにははやり廃りがあるが、レシピ動画なら時間がたっても価値が失われない。また料理をしない人でも「見て楽しむ」ニーズが高まっており、世界的にも手がける企業が増えていた。「レシピ動画に集中しよう」と決めるのに時間はかからなかった。
「分散型メディア」に見切り
当初のクラシルは、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSで動画を配信する、いわゆる「分散型メディア」。SNSからの流入がメインとなる分散型メディアは当時、今後の主流になるといわれていた。
しかし、サービス開始から2カ月ほどで、僕らは分散型よりも、公式アプリからの利用を重視する方針へとかじを切ることになる。分散型一本でいくことに限界を感じたからだ。今はフェイスブックが優遇してくれていても、今後その方針が変わっただけで、成長が止められてしまう。安定して成長し続けたいなら、自分たちがアルゴリズムを手中に収めなくてはダメだ。