
五穀の麺はかなり太く、固めにゆでた全粒粉の極太パスタのような歯ごたえ。かむのに疲れるほどの弾力だが、穀物特有の香りと甘味を強く感じる。味見をした五穀のリガトーニは、柔らかく食べやすかった。「サーモン&リコッタのレモンクリーム」などの洋風ソースから「タイ風グリーンカレー&パクチー」などエスニック風味ものまでそろえており、ほかのメニューもいろいろ試してみたくなった。
気になるのは、麺の量だ。「麺は全体の4分の1程度。サラダやデリ、ソースと比べても多くならないようにした」と川内ブランドマネージャーは話す。だが、ちゃんぽんと違って汁がなく、麺のボリュームが少ないので男性には少し物足りないかもしれない。

日替わりメニューで野菜高騰に対応
リンガーハットは過去にも女性をターゲットにした新業態を立ち上げた経緯がある。2011年にオープンした「リンガール東京」だ。メインメニューは「ちゃんぽん」ならぬ「ちゃんPon」と「皿うどん」ならぬ「Saraうどん」で、価格帯も通常のリンガーハットより高く、約1.5倍だった。現在は全店撤退しているが、その理由を「おしゃれにしても、結局『ちゃんぽんはちゃんぽん』だった」と川内ブランドマネージャーは振り返る。リンガールの1号店はリンガーハット既存店を業態転換したので「同じメニューでバージョンアップしただけでは、既存店と比べて割高に感じる人が多かったようだ」(川内ブランドマネージャー)。そこでエブリボウルは、ネーミングもメニューも「リンガーハット色」を封印。看板や内装にもリンガーハットを感じさせるものは採用していない。

エブリボウルは2020年までに20店舗まで増やす予定だというが、「100店舗、200店舗といった多店舗経営化するつもりはない」と、川内ブランドマネージャーは話す。その理由は2つ。まず、消費者の嗜好が多様化しているなかで、1ブランドで100店舗以上展開するのが難しい時代になっているということ。そして、もう1つは、ここ数年の野菜の高騰の影響だ。
リンガーハットは2009年から原料を全て国産野菜に切り替えているので、天候不良などで野菜の仕入れ値が上がるとダイレクトに影響を受けるという。特に、リンガーハットの代表的なメニューである長崎ちゃんぽんには大量のキャベツを使用しているため「契約農家だけではまかなえず、高値で取引している市場からも仕入れた結果、1カ月で約3000万円ほど原価が高くなった月もあった」(川内ブランドマネージャー)。
それに対し、デリを日替わりにするなど、季節の食材を中心にメニューを展開するエブリボウルは、そのときに価格が高い野菜をあえて使う必要がなく、店舗数も抑えているので野菜の高騰の影響をさほど受けずに済む可能性があるというわけだ。
「エブリボウルを創業ブランドの『とんかつ浜かつ』、主力ブランドのリンガーハットに次ぐ第3の柱にしたい」と川内ブランドマネージャーは意気込む。
(ライター 桑原恵美子)
[日経トレンディネット 2018年2月26日付の記事を再構成]