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片手のストック、両足で補う 技術極めて6回目パラへ スキー距離の新田佳浩選手、2大会ぶりの2冠を射程に

2018/3/12 日本経済新聞 朝刊

平昌パラでスキー距離のスプリントとミドルに出場する新田佳浩選手

 「2つの金メダルをもう一度取り直す」。スキー距離の新田佳浩選手(37、日立ソリューションズ)が狙うのは8年前のバンクーバー大会の再現だ。距離の短いスプリント(約1.5キロ)と、中距離のミドル(約10キロ)。両足を前後に動かすクラシカル走法の種目で達成した2冠を、再び射程圏にとらえて臨む今大会だ。

両足を前後に動かす「クラシカル走法」の技術は世界一といわれる

 3歳の時に祖父が運転する農機に巻き込まれて左ひじ先を失った。両手でストックを使ってこぐことはできないものの、力強い足の動きで補う「クラシカルの技術は世界一」(荒井秀樹日本代表監督)だ。4年前のソチ大会では長距離のロング(約20キロ)だけがクラシカル走法の種目となり、2大会連続の金を狙ったがロシア選手の後じんを拝す。4位に終わって涙にくれた。

 その後、ロシアの組織的なドーピングが明らかになったが、実はそれ以外にも不可解な動きがあった。レース前日に急なコース状況の変更が行われ、ざくざくの春雪に塩がまかれて「アイスバーンのようになった」。

 ロシアチームだけは変更を予見していたかのように、別のコースで練習をする姿があったという。「策略」の臭いがぷんぷんするが、「日本チームとしてそれに対応できなかった。でも、どういう条件でも勝つことを考えないといけない」と言い訳にはしない。

 平昌に向けては雪のない時期も含めすでに5回、現地を訪れた。気候や雪質、コースのデータはしっかり頭にインプットされている。五輪で話題となった強風も「コースの溝に風で雪が入る可能性があるので、どの溝を滑るか選択する必要がある」と冷静に戦略を立てる。2017年、プレ大会のワールドカップ(W杯)ではスプリントで銀メダル、ミドルで金メダルを獲得。準備の確かさが裏付けられた。

 本番では最初にスプリントが行われる。このため「スプリントに重きを置いた方が精神的にも安心できる」と短距離で勝つ体作りを進めてきた。2年前から国立スポーツ科学センター(JISS)で週2~3回、「爆発的なパワーを出すため」に下半身を強化。大会直前の2月末にも10日間通い、低酸素室の中で自転車をこぐトレーニングでフィジカルを鍛えた。

 事故の責任を感じていた祖父にメダルをかけてあげたいとの思いで競技をしてきた。その祖父が12年に亡くなり、ソチ大会は「原動力がなくなって精神的に苦しかった」。

 だが今回は「37歳という年齢を超えた向上心を持つことで、自分がどこまでできるか、というところがモチベーションになっている」。パラリンピック出場6大会目にして初めて、自分のための戦いに挑む。

(摂待卓)

[日本経済新聞朝刊2018年3月5日付]

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