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40代から孤独死対策 シングル女性の「墓トモ」探し

巨大消費を動かす40・50代「おひとりウーマン」(最終回)

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NIKKEI STYLE

40~50代のシングル女性の間に年々強まる、「終活」そして「安心できる暮らし」への関心。これらが新しいライフスタイルや商品、サービスを生み出しています。牛窪恵さんによるおひとりウーマン消費の最新事情、今回が最終回です。

◇  ◇  ◇

一般に、仕事外の人脈は、男性より女性のほうが豊かだ。ただ、女性は男性に比べて、非正規やフリーランスの割合が高い。このことが、「孤独死」の不安を増幅させる。

ひとり暮らしのヨウコさん(44歳)は、1年のうち3分の2は派遣社員として働き、残る3分の1は静養に充てている。30代後半で大病を患ってから、無理がきかないからだ。こうなると、長らく出社しない時期に突然、心筋梗塞や脳梗塞などに襲われても、会社関係者が「どうしたんだろう」と連絡することもなく、最悪のケースでは「孤独死」して何週間も発見されない、という事態もあり得る。

アラフォーから「終活」始める女性も

ただ、女性は男性よりリアリスト。40、50代のうちから、予防や老後の準備に取り掛かるケースも少なくない。派遣社員のマサエさん(50歳)もそのひとり。1年前から、健康維持のためのホットヨガと、「いざというとき」のための「墓トモ探し」を始めた。

墓トモとは文字どおり、他人同士にもかかわらず、一緒にお墓に入る友達のこと。「共白髪」ならぬ「『共墓(ともばか)』を目指そうね」を合言葉に、ヨガスクールや自治体が主催する趣味の教室、さらには霊園見学会などで、「生涯の友達になれそう」という女性に積極的に声をかけ、SNS(交流サイト)でも頻繁に連絡を取り合うようにしているという。

「いまからつながっておけば、お互いに安心。『保険』感覚かな。一番仲良くなった友達とは、毎日のようにLINEで連絡を取り合って、『風邪もう治った?』など"安否確認"しています」とマサエさん。周りのおひとりウーマンも「終活(人生の終末のための準備)」に関心が高いから、お墓や葬儀をどうしたいかも話題にのぼるそうだ。

よく「50歳を境に、女子会の話題が『恋愛』から『健康』に変わる」というが、おひとりウーマンはさらに一歩も二歩も先を行く。終活や自分の最期まで、話題にしているのだ。

50歳どころか、アラフォー年齢から終活に入る女性も少なくない。以前、大規模な樹木葬墓地を有する「杜の郷霊園」(千葉県八千代市、運営:川辺)を取材した際も、同営業担当者が「近年、アラフォーやその上のおひとり様女性が、明るく霊園見学会にやってくる様子をよく目にする」と言っていた。彼女たちは初対面同士でも、送迎バスの中で仲良くなるなどしている、とのこと。霊園見学会も女性の参加者が圧倒的で、大半はひとり参加だという。

最近は「ひとり暮らし同士」が、経済的合理性や安心・安全を求めてつながる住まい、いわゆるシェアハウスも、すっかり一般的になった。

ただ、一説によると「40代以上のミドルやシニアは、孤独死の危険性が高まることもあり、審査段階で落とされるケースも多い」ともされる。まったく時代遅れの感は否めないが、現実には確かに、入居者の多くが20、30代の若い男女中心。先日、ある業界関係者に聞いた際は、「20代と50代など、幅広い年齢層が共同生活を送るとなると、価値観の違いからトラブルが起きやすい」、だからミドル層は歓迎できないとも話していた。

そんな中、あえて「異世代」に特化した共同生活の推進に尽力する女性がいる。NPO法人ハートウォーミング・ハウスの代表・園原一代さんだ。

シングルマザーとして、既に30代になる一男一女を育て上げた彼女は、2010年に同NPO法人の認可を受け、東京・世田谷区を中心にホームシェア事業を始めた。きっかけは、「当時、おひとりウーマンだった自分も、将来子どもに(介護などの)心配をかけたくなかったから」。故にまだ元気なうちに娘のそばを離れ、シェアハウスで暮らし始めたという。そのうち、「安く家を借りたい若者と、空き家を活用したいというシニアを結び付けられれば」との考えを強くし、異世代のホームシェア推進に思い至った。

「大金をはたいて家を買っても、『ひとりの寂しさ』は拭えない」と園原さん。でも住まいをシェアすることで、家族と暮らすより自由が得られ、お金も蓄えられる。なにより付かず離れず、程よい距離感の"非血縁家族"がいることで、安心感が大きく違うという。

「友達近居」やAI、IoTがサポートする未来

以前取材した「個個セブン」という名の自立型グループの試みも、ユニークだった。

「個個セブン」の名に込められたのは、「メンバー(7人)がそれぞれ個々に自立しながら、自分らしく暮らしていこう」との思い。もともとは中高年男女のネットワーク「オパール・ネットワーク大阪」の代表を務めていた田矢きくさんが08年、志を同じくする7人の「働く女性たち(女友達)」と共に、兵庫県尼崎市のマンションで、別々の部屋に「近居」し始めたのがきっかけだ。

昔からおひとり様の女友達同士で「将来、一緒に住めたらいいね」と話していた田矢さん。当初はみんなで一軒家を建てようと、土地を探し始めたが「金額や条件が折り合わず、なかなかいい場所が見つからなかった」とのこと。

もう駄目かと諦めかけた頃に出合ったのが、ある新築マンション。ちょうど売り出し始めた時期で、49戸のうち7戸をメンバーそれぞれが購入。友達同士の近居、いわば「友達近居」が始まった。以来、普段から互いの安否は頻繁に確認し、おかずやもらい物のおすそ分け、留守中の植木の世話なども行う。まさに和気あいあいとした生活だ。

一方で、メンバーは自室とは別に「共同部屋」を借りた。ここを「いざ」という災害時の水や食料の備蓄スペースにするとともに、月1回の「土曜サロン」や「食事会」など、個個セブンのイベントスペースとしても活用。その代わり、誰か個人の部屋に入りびたって話し込んだりパーティーをしたり、といったことは極力行わない。あくまでも個々人の自立とプライバシーを重視しながら、「ゆるつながり」の関係を続ける、それが「友達近居」の大切な部分だと、田矢さんは教えてくれた。

おそらく、おひとり様の誰もが思う。「もし災害や健康被害など『何か』があったら、私はどうなるのか」。若い頃以上に、40、50代のミドル年齢になればなおさらだ。

自分がとことん傷ついたとき、あるいはいざという不幸に見舞われたとき、頼れるのは、離れて住む「血縁(家族)」より、「地縁」や「知縁」、そう感じている独身女性も数多い。すなわち、すぐ身近な場や地域に「近居」するご近所さん(「地縁」)や家電、そして趣味やイベント、SNSを介して、知の共有でゆるくつながる仲間たち(「知縁」)など。

だからこそおひとりウーマンは、住まいや家電、あるいは趣味の仲間を「保険」や「お守り」、あるいは悩みをシェアする「パートナー」や「サポーター」だと位置づける。そして時には、その分野に「えっ!?」と驚くようなお金を投じることもいとわない。

また、今はまだシンプルなモノ対人、あるいは人対人のつながりだが、近い将来、そこに「AI」や「IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)」が、当たり前のように入り込んでくる時代になる。

たとえば、AIを搭載して既に会話まで楽しめるロボット掃除機。シャープの「COCOROBO(ココロボ)」はおしゃべり機能付きで、「ゴミ発見!」などとしゃべりながら掃除をしたり、持ち主の「ただいま」という言葉に「おかえり」「大変だったね」などと反応したりもする。これが進化すれば、突然病に倒れて電話さえできないときも、ロボット掃除機が異変を察知、「救急車を呼ばなきゃ」と気付いてくれるようになるだろう。

手取り300万円台でも「安全な住まい」に家賃26万円

住まいのセキュリティーも、同様だ。今回取材したおひとりウーマンのひとり、マナミさん(52歳)は、手取り年収300万円台ながら、家賃26万円もする最新鋭のマンションに住んでいる。理由を聞くと、「過去に怖い目に遭ったから」。家賃4万円台の木造アパートに住んでいた20代の頃、朝起きたら「知らない男性」が部屋にいた、というのだ。

「思わず『キャ~!』ってものすごい悲鳴を上げたら、隣のオバサンがホウキを持って助けに来てくれた。でもあんな思いは二度としたくない。だからお守り代わりに毎月26万円、自分に投資しているんです」

今のマンションはオートロックやドアモニターはもちろん、防犯カメラが5台あり、セコムとも契約しているなど、万全のセキュリティー体制を誇る。「本当は危険を感じたとき、セコムやホウキ持ったオバサンじゃなくて、頼れる彼氏が来てくれればいいんですけど」とマナミさんは笑うが、今後は「スマート(賢い)ハウス」や「スマートホーム」、すなわちITを使って家庭内のエネルギー消費を制御したり、IoTによって家電や家具、情報端末とつながったりする新時代の住まいの実現で、セキュリティーだけでなく体の不調や心身の疲れまで、住まいが自動的に感知してくれるようになるはずだ。

たとえば17年、IoTデバイスを集結させたスマートホステルの運営などを行うandfactoryが、横浜市、NTTドコモと共同でスタートさせた「未来の家プロジェクト」。住まいにIoTやAIを活用し、居住者のリラックス度合いや活動量など生活状態を可視化することで、快適な室内環境づくりを検討・推進する試みだ。こうした家そのものが居住者の健康や心理状態を察知できれば、当然ながら「いざというとき」のサポーター役にもなってくれる。そうなれば、将来不安を抱えるおひとりウーマンも、マナミさん並みにお金を投じるだろう。

だが、提供者側が忘れてはならないのは、おひとりウーマンたちの不安の根底にある、繊細な心のひだ。すなわち、彼女たちがなぜ肉親や親友ではない家電や住まい、あるいは趣味トモ(趣味の友達)や墓トモを「保険」や「お守り」と位置づけているか、そしてゆるくつながる第三者に、自分を守る「パートナー」や「サポーター」として機能して欲しいのか、その背後にあるおひとり様ならではの心境に、思いを馳せることが大切だろう。

先のマナミさんの、こんな言葉も印象的だ。

「親や地元の友達には、余計な心配をかけたくない。私も、もういい大人なんだから」

牛窪恵
 マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。同志社大学・創造経済研究センター「ビッグデータ解析研究会」部員。現在、立教大学大学院(MBA)在学。財務省財政制度等審議会専門委員、内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーターなどを務める。1968年東京生まれ。執筆や講演のほか、テレビ番組のコメンテーターも務める。マーケティング関連の著書多数。

[「『おひとりウーマン』消費! 巨大市場を支配する40.50代パワー」(毎日新聞出版)を基に再構成]

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