動画配信、オリジナル作続々 テレビや映画とも連動
映像作品の楽しみ方が大きく変化している。オンライン動画配信サービスの台頭が著しいからだ。2011年にHulu、15年にはAmazonプライム・ビデオが日本でサービスを開始。最近のサービスの要となっている各社のオリジナルコンテンツ作品を探った。
明石家さんま、ダウンタウンの松本人志、安室奈美恵。この3人の共通点は、動画配信サービスのテレビCMに出演していること。明石家さんまはNetflix。松本人志はAmazonプライム・ビデオ。安室奈美恵は密着ドキュメンタリーの発表の場としてHuluを選び、テレビCMにも登場した。
ジャニーズ事務所も、GYAO!でKinKi Kidのスペシャル動画を配信し、Netflixのオリジナルドラマ『炎の転校生 REBORN』ではジャニーズWESTが主演した。
コンテンツはこの1~2年で大きな変化を遂げた。当初、各サービスが力を入れたのは、人気の高い海外ドラマなどアーカイブ作品だった。だが海外ドラマの人気作『ウォーキング・デッド』が多くのサービスで見られるようになるなど、アーカイブだけでは差別化が難しくなった。
日本オリジナルの作品に力を入れる
そこで各社が力を入れたのが、オリジナルコンテンツの制作だ。世界展開するNetflix、Amazon、Huluは、特に米国で早くからオリジナルコンテンツを制作してきた。それでも「日本の視聴傾向は特殊」と複数の配信サービスは声をそろえる。Netflixは「日本ではローカル作品の人気が高い。利用者獲得にはオリジナルコンテンツが重要」と話す。
大きな話題を集めたのはバラエティー。記憶に新しいのは、17年11月に配信されたAbemaTVの『72時間ホンネテレビ』で、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾らが生出演し視聴数は7400万超えとなった。
Amazonで独占配信されたダウンタウンの松本人志と浜田雅功がそれぞれ出演する作品も注目を集めた。松本発案による『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』は16年11月からの配信。浜田は17年10月からスタートの『戦闘車』に出演した。
若者の獲得を狙った恋愛リアリティーの制作も活発だ。Netflixはフジテレビと組み『テラスハウス』や『あいのり』の新作を配信し好評。AbemaTVでは、女子高生と同世代男子の恋を追う『オオカミくんには騙されない』が10代に人気だ。
各サービスの個性が見えてきたのがドラマだ。Netflixでは『火花』が16年に注目を集めた。最近では先のジャニーズWEST主演『炎の転校生 REBORN』や人気マンガを原作とした『僕だけがいない街』などを配信した。1月からは、AbemaTVもオリジナルドラマに進出。連続ドラマ第1弾『#声だけ天使』は、3億円以上の制作費を投じた意欲作となっている。
既存メディアと連動して話題を広げる
dTVとGYAO!、Huluはテレビや映画といった既存メディアと連動しながら、話題作を生み出す。dTVは、実写映画版の『銀魂』など映画とコラボした。
さらにGYAO!は「放送と通信の補完関係」を目指していることから、地上波ドラマの見逃し配信が充実している。1月期の『FINAL CUT』(関西テレビ)では、ドラマの放送後にチェインストーリーと銘打った連動ドラマを配信。
オリジナルコンテンツは、映画ジャンルにも進出している。U-NEXTが17年に配信した初のオリジナルドラマ『あゝ、荒野 完全版』は、ミニシアター映画との連動作。菅田将暉とヤン・イクチュンが主演し、寺山修司の小説を映画化した『あゝ、荒野』を再編集し、劇場公開に先駆けて配信した。
映像業界では、劇場公開、DVD、動画配信の3つが、お互いに観客を食い合っているのではとの定説があったが『あゝ、荒野』は、その仮説に挑戦しようとスタートしたプロジェクトだったという。
調査会社ICT総研(東京・千代田)は「17年末の有料動画配信サービス利用者は1440万人だった模様で、20年末には2000万人を超える」と発表。アニメやドキュメンタリーなどでも注目作品が増えている今は、利用を始める絶好の時期といえそうだ。
(日経エンタテインメント!3月号より再構成 文/泊貴洋)
[日本経済新聞夕刊2018年3月3日付]
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