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世界最古の洞窟壁画、現生人類より前と判明 その衝撃

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ナショナルジオグラフィック日本版

ピカソの祖国スペインには、はるか昔から革新的な芸術家がいて、貝殻のビーズを作り、洞窟壁画を描いていたようだ。驚くべきは、彼らが現生人類(ホモ・サピエンス)ではなく、ネアンデルタール人だったらしいことだ。

2018年2月22日に学術誌『サイエンス』と『サイエンス・アドバンシズ』に発表された2つの論文によると、スペインの3カ所の洞窟で見つかった10点以上の洞窟壁画は6万5000年以上前のもの、またスペイン南東部の洞窟クエバ・デ・ロス・アビオネスで見つかった貝殻ビーズと顔料は11万5000年以上前のものであるという。

これらはともに、現生人類であるホモ・サピエンスが最初にヨーロッパに到達する以前の最古のアート作品である。つまり、作者はホモ・サピエンスではないということだ。

「アビオネスで発見された貝殻ビーズは、世界でこれまでに見つかっている装飾品の中で最古のものです」と、論文共著者でスペイン、バルセロナ大学の考古学者であるジョアン・シルホン氏は言う。「アフリカ大陸で似たようなものが制作されたのは2万~4万年後です。これらはネアンデルタール人が作ったものなのです」

従来、ネアンデルタール人には粗野で頭が鈍いイメージがあったが、実はホモ・サピエンスと同等の認知能力をもっていたと、研究チームは主張する。彼らの見方が正しいなら、今回の発見は、アート作品を作ることにつながる才能が約50万年前、つまりホモ・サピエンスとネアンデルタール人の共通祖先まで遡れることを意味しているのかもしれない。

米ウィスコンシン大学マディソン校の古人類学者ジョン・ホークス氏は、「ネアンデルタール人は、現生人類と共通の文化的能力を持っていたようです」と言う。「彼らは知性のない無法者ではなく、分別ある人間だったのです」

「愚かなヒト」ではなかった

1856年、ドイツのネアンデル谷で、石灰石の採石場の労働者が変形した人骨のようなものを見つけた。当時の科学者はこの骨を、がっしりした胸をもつ、それまで知られていなかった人類「ホモ・ネアンデルターレンシス」のものであるとした。

当初、ネアンデルタール人は脳よりも筋肉が発達しているタイプであると考えられ、ある科学者などは「ホモ・サピエンス(賢いヒト)」との対比で「ホモ・ステューピドゥス(愚かなヒト)」と命名するべきだと主張していた。けれども1950年代以降、専門家の間では、ネアンデルタール人の見方が大きく変わった。彼らが心を込めて死者を葬り、石器を作り、薬草を利用していたことがわかってきたからだ。

DNA分析からは、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの間で交雑が起きていたことも示された。今日のヨーロッパ人とアジア人のDNAの約2%はネアンデルタール人まで遡ることができる。

しかし、ネアンデルタール人が象徴的なアート作品を制作できたとは認めたがらない研究者もいた。当時の証拠からは、約4万~5万年前に現生人類の大集団がヨーロッパ大陸に到着してはじめて初期ヨーロッパ芸術が花開いたように思われたからだ。

ただ、ほかの研究が話を複雑にしていた。フランスでは約4万3000年前にネアンデルタール人が宝飾品を作っていたことが明らかになった。スペインのある洞窟では、同じくらい古い時代の炭が洞窟壁画のすぐそばに残っていた。しかし、どの遺跡もホモ・サピエンスがヨーロッパにやって来た時期にかなり近く、ネアンデルタール人が彼らの真似をしたと考える余地が残っていた。

論文著者で英サウサンプトン大学の考古学者アリステア・パイク氏は、「代表的な考古学者100人に対して、ネアンデルタール人は洞窟に絵を描いただろうかと尋ねれば、90%が『ノー』と答えたでしょう」と言う。

元素に残っていた証拠

ネアンデルタール人が芸術家であったことを示すためには、5万年前よりもっと古い芸術作品をヨーロッパで見つける必要がある。2003年からその方法についてアイデアを出し合っていたパイク氏とシルホン氏は、鉱物の年代測定を専門とするドイツ、マックス・プランク進化人類学研究所のダーク・ホフマン氏に出会うという幸運に恵まれた。

ホフマン氏の手法は、放射性元素のウランは水に溶けるがトリウムは水に溶けないという性質を利用している。洞窟内では、鉱物が溶け込んだ水が壁からしみ出し、鉱物が沈積して表面に層を形成してゆく。このとき、水に溶け込んでいたウランが鉱物中に閉じ込められ、放射性崩壊により一定のペースでトリウムに変化してゆく。トリウムがほかの方法で鉱物中に入る可能性はないため、壁画を覆う鉱物に含まれるウランとトリウムの比率を測定することでその年代を明らかにし、これにより壁画の年代を知ることができるのだ。

年代測定に必要なのは、米粒ほどの大きさの岩のかけらだけだ。しかし、サンプルの採取はなかなかたいへんで、値段がつけられないほど貴重な芸術作品からわずか数ミリのところをメスで傷つけなければならない。

「一度でも手が滑ったら、何万年も前から壁に付着していた顔料を剥がしてしまうかもしれないのです」とホフマン氏。彼は今回の2本の論文の筆頭著者だ。「新たに作業に入るたびに、こうした思いに圧倒されます」

研究者たちは、壁画のある3つの洞窟を調査し、絵の表面を覆う鉱物に6万4800年以上前のものがあることを明らかにした。ということは、その下にある絵も少なくとも6万4800年以上前のものであることになる。さらに、クエバ・デ・ロス・アビオネスの貝殻と顔料を覆う鉱物は、少なくとも11万5000年前のものという結果になった。これは、シルホン氏が2010年の研究で同じものを調べたときに推定した年代より2倍以上古い。

これらを考え合わせると、洞窟での発見は、「ネアンデルタール人が特定の時期だけこのような行動をしていたわけではないことを示しています。例外的に賢い集団が一時的に現れて消えていったというわけではないのです」とパイク氏は言う。

ホモ・サピエンスだった?

研究チームは、同じ才能をもつネアンデルタール人とホモ・サピエンスについて、本当に別々の種なのだろうか、もしかすると、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスのヨーロッパの孤立した亜種なのかではないかとさえ考えるようになった。

「ネアンデルタール人とホモ・サピエンスは認知能力の点では見分けがつきませんでした。ならば、両者を分けて論じることはできません」とシルホン氏は言う。「ネアンデルタール人もホモ・サピエンスだったのです」

しかし、ほかの専門家は、もっと慎重にならなければいけないと警告する。米カリフォルニア大学バークレー校の名誉教授で、先史時代の洞窟アートの権威であるマーガレット・コンキー氏は、古代の芸術作品を定義するのは難しく、古代の芸術家がどれほど洗練されていたかを評価するのはさらに難しいと指摘する。彼女は、議論をより説得力あるものにするためには、年代測定や洞窟壁画をネアンデルタール人の存在と明確に結びつける研究が必要だと考えている。スペインのほかの洞窟ではネアンデルタール人の骨が見つかっているのだから、研究は不可能ではないはずだ。

「年代が一致するというだけで、そこにネアンデルタール人がいたと断定できるものでしょうか?」と彼女は言う。「私も、ネアンデルタール人が黄土や炭を使って印や絵を描くことができたとする点には異論はありません。けれども、複数の証拠から一つの事実を明らかにするというのが、ふつうの考古学の進め方だと思います」

一方パイク氏は、将来の考古学研究に使えそうな手法の多さに心を躍らせている。「私たちは氷山の一角に手をつけたにすぎません。仕事は山ほどあります」

(文 Michael Greshko、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年2月26日付]

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