北海道の訪日客、スキー場離れ回遊 SNS投稿で解析
冬のニセコにはいたるところに外国人がいるという現象が以前話題になった。千歳空港や札幌市中心部から距離の割にアクセスが悪いという条件にもかかわらず、である。筆者が所属するナイトレイの訪日外国人動向解析サービス「inbound insight」を使うとTwitterや写真共有サイトのInstagramなどのSNSに投稿されたパブリックなビッグデータを基に、ロケーションや国籍などを分析できる。これによって冬の北海道を訪れた外国人観光客の動向を可視化した。
まず、北海道における日本人と外国人観光客の動態の違いについて触れておこう。北海道経済部観光局が発行する2016年度「北海道観光入込客数調査報告書」によると、日本人の宿泊者数は夏季休暇の時期に合わせて大きな山があり冬季は減少している。若年層のスキー・スノボ離れが影響していると考えられる。それに対し訪日外国人の宿泊者数はなだらかなカーブになっていて、夏季に集中することなく通年にわたり北海道を訪問している。むしろ冬の方が宿泊者数は多い。
夏より冬に投稿数が多い
夏と冬で外国人観光客の滞在場所に違いはあるのだろうか。外国人が滞在した市町村で彼らがSNSに投稿した内容を解析し、投稿数を色で表現した。濃い色ほど投稿が多いことを示す。
2つを比較すると、夏よりも冬の方が広範囲でかつ投稿数も多いことが分かる。札幌や富良野といった有名観光地は通年で投稿が多いが、釧路、網走、稚内といった道東や道北の地域は冬の投稿が目立つ。「最北の地まで来た」「本当に美しい景色。言葉で伝えきれない」など写真とともに、冬の北国ならではの自然に触れたことの感動を共有している。
タイやインドネシアのように雪が降らない地域から来る観光客の投稿内容を見ると、温泉の体験や雪景色などの自然が「また来たい」と思わせる観光資源なのは間違いない。
移動に伴い消費も動く
次に、観光客がどのような移動をしているのかを、周遊データを使ってビジュアライズした。ここではナビタイムジャパンが提供する、分析利用の許諾を得た外国人の移動実績データを活用している。千歳空港や札幌を起点に、室蘭、登別、小樽、函館を観光し、さらに日程に余裕のある観光客は、ラーメンという食体験のメッカとして知られる旭川、富良野、そして手つかずの自然を体感できる網走など道東まで足を延ばしていることが分かる。
消費についてはどうだろうか。スキー客には富裕層が多いことが特徴で、長く滞在し消費も多いと予想される。香港からの観光客をターゲットに、inbound insightの「訪日消費データプラン」を使って2016年12月のデータをビジュアライズしたところ、周遊データを裏付ける結果が得られた。色の濃さは消費金額の高さを表す。冒頭のニセコで色が濃く表れていることが、スキー目的の滞在中に多く消費しているだろうという仮説と合致する。このように、外国人が滞在して移動するエリアには消費も生まれる。
冬の北海道に外国人が多く訪れ、移動しながら自然を楽しみ、美味しいものを堪能して宿泊(消費)するという行動パターンをデータから検証することができた。受け入れる地域にとって訪問地としての魅力が増せば、雇用が増えるなど経済的な好循環が生まれる。データ分析・可視化はその一助になるだろう。
(文 神部律子=ナイトレイ、ビジュアライズ 金城海斗=ナイトレイ)
[日経ビッグデータ 2018年2月号記事を再構成]
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