更年期以降に増える手のトラブル 関節の変形も
スマホ世代に増加する手のトラブル(下)
親指や手首がピリッと痛むことはないだろうか。それは腱鞘炎(けんしょうえん)。スマートフォンやパソコンの使い過ぎが影響するが、女性ホルモンが減少する更年期以降はなりやすい。気になる腱鞘炎のメカニズムとセルフケア、治療法を3回に分けてお伝えする。3回目は腱鞘炎の治療法について見ていこう。
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病院での腱鞘炎の治療は、薬や手術が中心だ。初期の腱鞘炎には、消炎鎮痛剤の貼り薬や内服薬で痛みを止め、様子を見る。それで改善しない場合は、抗炎症作用のあるステロイドを、腫れた腱鞘の内部にピンポイントで注射する。
ステロイドを注射しても、ばね指で指が曲がったまま伸びない、ドケルバン病の痛みが引かないなど重症化した場合は手術が必要となる。ばね指、ドケルバン病いずれも、腱が引っかかる腱鞘の一部を切離して、腱がスムーズに動くようにする。「手術といっても、局所麻酔をかけて行うもので、15分程度で済むことが多いので、外来でも可能」と、四谷メディカルキューブ手の外科・マイクロサージャリ─センター長の平瀬雄一医師は言う。
大豆由来のサプリも効果的
更年期以降の腱鞘炎に対して、平瀬医師が薦めるのは、エストロゲンと似た働きをするエクオールのサプリメント。エクオールは、大豆由来のエストロゲンと似た働きをする成分で、更年期症状のホットフラッシュの軽減効果が認められている。「更年期の症状があり、手の痛みを訴える女性にエクオールのサプリメントを薦めたところ、痛みが改善した例を多数経験した」(平瀬医師)
今はまだ更年期の症状が出ていなくても、月経前症候群(PMS)の症状が出やすい人は、「エストロゲン量の増減の影響を受けやすいため、更年期以降に腱鞘炎になる可能性があると考えられる」(平瀬医師)ので、注意しよう。
なお、腱鞘炎を治療せずに放っておくと、手にしびれが出る手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)や、関節が変形する病気 につながることもある。「関節の変形が重症化してしまうと手術が必要になる。指がこわばる、痛むという症状が出たら、早めに病院へ」と平瀬医師はアドバイスする。
更年期以降、エストロゲンが急激に減少することで、関節を包む膜(滑膜)もダメージを受けやすくなる。主なものに、指の第一関節が変形するヘバーデン結節、第二関節が変形するブシャール結節や手根管症候群がある。「50代で関節の動きが悪くなり、痛みのために強く握ることが難しくなる人が多い。この段階でエクオールのサプリをのむことが関節変形の予防にもなる」と平瀬医師は話している。
四谷メディカルキューブ(東京都千代田区)手の外科・マイクロサージャリーセンター長。日本手外科学会専門医。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学後、東京慈恵会医科大学附属柏病院形成外科医長などを経て、現職。手の疾患とエストロゲンの関連に詳しい。
(ライター 海老根祐子、構成:日経ヘルス 岡本藍)
[日経ヘルス2018年4月号の記事を再構成]
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