親指や手首がピリッ! その痛み、スマホのせいかも?
スマホ世代に増加する手のトラブル(上)
親指や手首がピリッと痛むことはないだろうか。それは腱鞘炎(けんしょうえん)。スマートフォンやパソコンの使い過ぎが影響するが、女性ホルモンが減少する更年期以降はなりやすい。気になる腱鞘炎のメカニズムとセルフケア、治療法を3回に分けてお伝えする。1回目は腱鞘炎のメカニズムについて見ていこう。
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腱鞘炎は、筋肉と骨をつなぐ腱を束ねる「腱鞘」という部分に炎症が起こった状態。指や手首の、特定の腱鞘を使い過ぎることが原因だ。荷物を持つと手首がズキンと痛んだり、痛みで指が動かせなくなったりすることもある。
腱鞘は腱のさやという漢字の通り筒状で、この中を筋肉の動きに合わせて、腱が行き来するが、このとき摩擦が生じる。手を使い過ぎると、摩擦の回数が増え、その負荷で腱鞘が傷つき、炎症が起きてしまう。
以前はピアニストやスポーツ選手、美容師など、手をよく使う人たちの「職業病」ととらえられていたが、「最近はパソコンやスマートフォン(スマホ)を操作する時間が長くなって、腱鞘炎の症状に悩む人が少なくない」とアスリートゴリラ鍼灸接骨院の高林孝光院長は指摘する。
腱鞘炎には主に2種類ある。「ばね指」という指の腱鞘炎と、手首の腱鞘炎の「ドケルバン病」だ。ばね指は指を曲げる腱と、腱が浮き上がらないように押さえる腱鞘に炎症が起こる。「頻繁に指を曲げ伸ばす利き手の親指、人差し指、中指の痛みを訴える人が多い」と高林院長。
一方、近年アメリカで「スマートフォンサム」として話題になったのがドケルバン病だ。スマホを持ったほうの手の親指で画面をスクロールする、親指でパソコンのスペースキーをたたくなど、「親指を伸ばして、外側へ広げる動作で痛みを感じることが多いようだ」と高林院長。
ドケルバン病を疑うときは、まず下のセルフチェックを試してみよう。
一方、四谷メディカルキューブ手の外科・マイクロサージャリ─センター長の平瀬雄一医師は、「腱鞘炎は手の使い過ぎだけが原因ではない。女性ホルモンのエストロゲンも発症に関わっていると考えられる」と指摘。平瀬医師によると、エストロゲンには腱や滑膜(かつまく、関節を包む膜)の腫れを取る作用がある。だから本来、腱鞘炎に至る前にエストロゲンが腫れを抑えてくれるわけだ。
だが「更年期に入り、エストロゲンが減少すると、腱の膨張を抑えられず、腱鞘炎になりやすくなる」と話す。次回以降の記事では、痛みを感じたときのセルフケアや病院での治療を紹介する。
アスリートゴリラ鍼灸接骨院(東京都足立区)院長。柔道整復師、鍼灸師。上肢のケアを得意とする。腱鞘炎のセルフケアに詳しく、痛みに悩む人が全国から来院。主な著書に『腱鞘炎は自分で治せる』(マキノ出版)など。
四谷メディカルキューブ(東京都千代田区)手の外科・マイクロサージャリーセンター長。日本手外科学会専門医。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学後、東京慈恵会医科大学附属柏病院形成外科医長などを経て、現職。手の疾患とエストロゲンの関連に詳しい。
(ライター 海老根祐子、構成:日経ヘルス 岡本藍)
[日経ヘルス2018年4月号の記事を再構成]
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