会社を退職ではなく、「卒業」する人が増えるわけライター 猪瀬聖

「卒業」という言葉はリクルートから広まった。

「卒業」が広がる背景には、テレビなどの影響を指摘する声もある。「アイドルグル―プAKB48の○○が、同グループ卒業を発表」といった具合に、最近は、グループは「脱退」ではなく「卒業」するのが主流だ。テレビ局のアナウンサーも、近ごろは、担当番組を「降板」ではなく「卒業」するようになった。

「卒業」はリクルートが先駆け

だが実は、そのはるか前から、卒業を退職の意味で使ってきた会社がある。リクルートグループだ。同社は昔から、将来の独立や転職を前提に入社する新卒者が比較的多く、実際、何年か働いた後に辞めていく人がかなりいる。そうした社風が、多くの優れた起業家を輩出する土壌にもなってきた。「元リク」という言葉も生まれるほどだ。

そのリクルートの関係者によると、同社では以前から、退職することを卒業すると言い、社内では「○○さん、もうすぐ卒業だね」といった会話がよく交わされるという。また同社では、退職者のことを卒業生と呼び、退職者とのつながりを大事にしている。ちょうど、大学が卒業生との関係を大切にするのと似ている。

会社を辞める際に「卒業します」と言う人が増えているのは、こうしたリクルートの社内文化が同社の出身者を通じて徐々に広がったのが一因との見方もある。だが、さらに探っていくと、最近の、多様で柔軟な働き方を目指す「働き方改革」の流れも関係があるようだ。

これまで日本では、「会社を勤め上げる」という表現があるように、定年まで1つの会社で働くことを是とする文化が、特に大企業の間で強かった。そういった文化の中では、転職はどちらかと言えばマイナスのイメージ。中途退社でみんなから祝福されるのは、女性社員の寿退社ぐらいだった。

しかし最近は、外資系企業の進出加速や、M&A(合併・買収)の増加、大企業のリストラ・経営破たんなどを背景に、転職者数は増加傾向。総務省によると、昨年の転職者数は311万人と7年連続で前年を上回り、リーマンショック直前の水準に戻りつつある。もともと転職が多い20~30代に加え、40~50代の転職者も顕著に増えており、転職という働き方が珍しくなくなってきている。

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