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週末レシピ タマゴサンドなら、オムレツタイプに挑戦

ほんの少しのマヨネーズを入れる

しかしこれでわかっただろう。しょっぱ辛いキュウリは粉カラシで作る。これは曲げられない。そしてほんの少しのマヨネーズを入れる。これはキュウリがばらけないためのつなぎのようなものなので、小さじ2分の1でいい。全体に薄くまとわせよう。

ここでパンの準備をしよう。室温に戻したバターを、食パンの片面に塗る。サンドイッチにおけるバターには、野菜の水分をパンに伝えないという役割がある。従って、バターを塗るのはキュウリをのせる側だけだ。キュウリを並べるところまで準備できたら、いよいよオムレツを焼いて行く。

バターを塗るのはキュウリをのせる側だけ

ノスタルジックその3。タマゴサンドはバターたっぷりふわふわオムレツに限る。

なぜオムレツなのかというと、それも私の思い出の中にある。20代の終わりごろ、不器用で傲慢で穴だらけの仕事しかできなかった私を、なぜかかわいがってくれた客先のおじいちゃん専務がよく連れて行ってくれた店があった。この店のタマゴサンドがオムレツだった。いつも卵を焼くのがよく見える席に陣取っては、思ったより多くのバターを使うところや、箸でぐるぐるかき混ぜ、あっという間にふわふわオムレツになる様子をうっとり眺めていたものだ。

そしてなんとそのお店も、例のしょっぱ辛いキュウリが挟まっていたのだ。これでとうとう私のタマゴサンドは「ふわふわオムレツに、しょっぱ辛いキュウリ」と決定した。もう客先の会社もとうになく、おじいちゃん専務も亡くなってしまった。あの店もこの店も、もうない。だが私はセンチメンタルな思い出とともに、自分で卵を焼くのである。

卵に水を入れるとふわっとなる

卵は3つ。ふわふわ感を増すため大さじ1の水を入れたら、空気を含ませるようによくかき混ぜる。フライパンを強火で熱し、バターを溶かしたら一気に卵液を入れ、箸でぐるぐるかき混ぜる。全体にゆるめの半熟状になったら外側から真ん中へ寄せ、パンに収まるくらいの大きさにまとめていく。レストランのオムレツのように、美しい紡錘形にする必要はない。こんもり丸くまとまればそれでいい。

全体にこれくらいの半熟になったらまとめる

パンの上にキュウリ、その上にオムレツ、さらにもう一枚のパンを重ねたら出来上がり。ふわふわオムレツと、しょっぱ辛いパリパリキュウリの対比を味わおう。

では、付け足しのようにゆで卵サンドイッチも紹介しよう。

冒頭で「純情乙女ちっく」という表現を使ったため「今どき乙女ちっくはないだろう」と昭和臭にへきえきとした方もおられるかもしれない。だが仕方ない。なぜなら、私とゆで卵サンドイッチとの仲が決裂したのはまさに「乙女ちっく全盛時代」だったからだ。

たそがれ時に見つけたフランス窓のミルキーウェイ時代に、初恋の男の子がポロリと「オレ、ゆで卵のサンドイッチって嫌い。なんかにおいが気持ち悪い」と言ったからだ。好きな男子が意思を表明したのなら、恋する女子がとる行動はひとつだろう。「わかるー。私も嫌い。なんかにおいが気持ち悪い」と付和雷同することだけだ。

ところが言霊の力は予想以上だった。不思議なことに、それまで大好きだったゆで卵サンドイッチが、その日を境に本当に気持ち悪くなってしまったのだ。それ以降、何十年も私は「ゆで卵のサンドイッチはにおいが気持ち悪い」の暗示にかかり、やっと呪いが解けたのは実に40歳を過ぎてからのことだった。今でも食べるときは、少しだけドキドキする。

ゆで卵タイプのタマゴサンド

【材料(1人前)】

食パン 8~10枚切りのもの 2枚 / ゆで卵 2個 / マヨネーズ 大さじ2

作り方を記すまでもあるまい。卵をゆで、刻んでマヨネーズと混ぜたものをパンに挟むだけ。ただし画像のような半熟だと、マヨネーズと混ぜたときにゆるくなりすぎてしまうため、ぜひ固ゆでにしてほしい。パンにのせる時は中央にこんもり乗せると、切った時にお店のサンドイッチみたいでカッコがつく。

誰の心にもノスタルジックなタマゴサンドがあるのではないだろうか。昔は「オムレツタイプは関西」と言われていたが、最近の東京ではオムレツタイプや、だし巻きタイプのタマゴサンドがちょっとした流行だ。そのうち江戸っ子といえばオムレツサンドという時代がくるかもしれない。そのときが来ても、私は相変わらず粉カラシをオススメしていこう。それだけは曲げられない。

(食ライター じろまるいずみ)

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