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『夜のピクニック』で不思議体験 歩いて学ぶ水戸一高 茨城県立水戸第一高校の鈴木一弘校長に聞く

2018/3/4

生徒は本城橋を渡って旧水戸城薬医門をくぐって通学する(茨城県水戸市)

全国有数の名門公立高校、茨城県立水戸第一高校(茨城県水戸市、水戸一高)。東京大学をはじめ国立難関大への合格実績では公立校の上位グループ常連だが、OGの作家、恩田陸氏の出世作『夜のピクニック』でも有名になった「歩く会」など、ユニークな学校行事が盛んな学校としても知られる。政治家、経済人ばかりではなく、リベラルな校風で作家や映画監督、ゲーム作家といったクリエーティブ系の人材も多く輩出している。珍しく降った雪の残る冬の一日、水戸の地を訪ねた。

■「歩く会」は言葉にできない体験

「他ではできない経験ができることが本校の強みでしょう」。石油ストーブがたかれた校長室で、鈴木一弘校長はゆっくり語り始めた。同校を象徴する校内行事「歩く会」についてだ。

同行事は毎年10月、全校生徒が朝8時から翌日8時まで、仮眠時間をはさんで丸24時間かけて70キロを歩くという伝統行事。1日目はクラス単位で歩く団体歩行、仮眠の後の2日目は各自が思い思いに歩く自由歩行で、団体歩行のときに白いジャージでクラスごとののぼりを立てて歩く姿は、その季節の風物詩にもなっている。

現在は3つのコースが設定されており、2017年度は県北の大子町までバスで行き、そこから水戸へ向かって南下する奥久慈コースで行われた。このほか県南のつくば市から北上するつくばコースと、学校を出て海沿いを歩き、学校へ戻ってくる東海コースがある。どのコースも70キロ程度。4~5時間の仮眠で歩き通すには過酷なものだ。

戦前から続くこの行事は「『堅忍力行』いう校是を体現したもの」と鈴木校長は話す。「至誠一貫」と並んで同校が掲げる校是で、固い意志を持って耐え忍び、努力することを意味する言葉だ。だが、歩く会の1日を舞台にした恩田氏の小説『夜のピクニック』からは、そんな堅い言葉が似合わないくらい自由な雰囲気が感じ取れる。

「並んで一緒に歩く。ただそれだけのことなのに、不思議だね。たったそれだけのことがこんなに難しくて、こんなに凄(すご)いこと」。小説の中で登場人物の一人はこう言う。こんな言葉こそが、生徒たちにとっての実感だろう。「昨年10月のときはドイツからの留学生も参加し、本校の生徒と喜びと感動を分かち合っていた」と鈴木校長。やり通すことで、何か言葉にできない変化や成長が感じられる体験。それが水戸一高の伝統行事の持つ力のようだ。

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