週末レシピ フライドポテト、切り方いろいろ味変わる
「フライドポテト」なる食べ物は、いったいいつから存在するメニューなのか、その起源があまり定かではない。しかしながら、広く世界各国で愛されている定番メニューとなっていることに異論を唱える人はいないだろう。しかも、従来はメイン料理の付け合わせ的存在、もしくは酒のおともとして「とりあえず」注文されるものであったはずが、近年ではフライドポテト専門店なるものが続々と登場し、人気を博している。
実際に足を運んでみると、ジャガイモの品種、カット方法、揚げ方、味付けなど、実に多種多様だ。そしてどれも「フライドポテトは単なる添え物」と言っていた自分を反省するほどにおいしかった。そこで今回は、この味わいを家庭でも再現すべく、挑戦してみた。
まずはジャガイモの品種から語るべきなのだろうが、昔ながらの男爵、メークインなどのほかに、近年ではキタアカリやインカのめざめ、ニシユタカなど、皮が黄色いノーマルなタイプのジャガイモだけでも、さまざまな種類が流通するようになった。
ここに、皮や身に色がついている品種も加えると、もう収集がつかない。そこから論じていたら、きっとフライドポテトのレシピにたどり着くまでに数回の連載をまたいでしまうことだろう。そのため、今回は代表的かつ近所のスーパーマーケットでも手に入りやすいメークインを使用することにした。
さて、今回着目したいのは、フライドポテトのカット方法だ。調べたところ、呼び方に多少の違いはある場合もあったが、だいたい下記のように分類される。
(1)ストレートカット:少し太めのスティック状にカット
(2)ウェッジカット(ナチュラルカット):皮付きのままくし型にカット
(3)シューストリング:ストレートカットをさらに細くカット。「靴ひも」という意味。
(4)カーリーカット(スパイラルカット):くるりとねじれたカット
(5)クリンクルカット(ウエーブカット):専用のナイフで表面をギザギザにカット
(6)手割:手で割ったもの
複数のSNS上でアンケートにご協力いただいたところ、かなりの接戦ではあったが、一番人気は「シューストリング」、次点は「ウェッジカット」となった。どうやら、油がおいしい時は「ウェッジカット」で、カリカリの食感を楽しみたい時は「シューストリング」という嗜好の人も多いようだ。大手ファストフードチェーンがいずれもこのどちらかのカットを採用している影響もあるかもしれない。
また、興味深いことに、ある一定の年齢層以上はクリンクルカットを懐かしむ傾向があり、こちらはたぶん当時スーパーマーケットで広く市販されていたフライドポテトがそのカット方法だったからであろう。沖縄県では地元ファストフードチェーンがカーリーカットを採用しているせいか、カーリーカットに人気が集まるなど、地域色も見られる結果となった。
フライドポテトを家庭で作る場合は、いくつかコツがある。コツさえ守れば、お店の味に近いものができあがるので、面倒くさがらずに、下ごしらえを行ってほしい。ポイントは「焦らず、丁寧に、余裕を持って」だ。
<材料(1人前)>
ジャガイモ(今回はメークイン)1個 / 揚げ油 適宜 / 塩 お好みのもの
<作り方>
(1)シューストリングにカットして、表面をさっと水で洗い流す。これによって、表面のでんぷんが取り除かれ、べとべとせずにカリッと仕上がりやすくなる。
(2)キッチンペーパーで(1)の水気をしっかり拭き取る。こするのではなく、並べて、上からキッチンペーパーを重ねて、かるくたたくようにしながら。これで油はねを防止し、カラッと揚がる。
(3)鍋にたっぷりの油を入れて、160℃まで加熱する。油が少なすぎると上手に揚がらないので、ジャガイモが隠れるくらいの量の油を使うこと。
(4)(3)に(2)を入れて、きつね色になるまで揚げる。一気に入れすぎると油の温度が低くなりすぎてべたつきの原因となるので、一度に揚げる量は鍋の面積の半分以下にする。
(5)きつね色になったら、網じゃくしでフライドポテトをすくい、まずは鍋の上で上下に振ってしっかり油を切る。
(6)(5)を網をおいたバットの上に、重ならないように広げておく。ポテト同士が重なったり、キッチンペーパーの上などに直接置くと、蒸気でしんなりしてしまうので注意。
(7)お好みの塩をまぶしたらできあがり!
<ポイント>
*より表面をカリッとさせたい場合は、(6)をしている間に油の温度を180℃まで上げて、再度2分ほど揚げるとよい。最後にまた(5)(6)のように油を切る。
*油がしっかり切れたら、袋にポテトと塩を入れてシャカシャカすると、全体にまんべんなくまぶしやすい。
<おすすめの塩>
シンプルな調理方法なので、ぜひとも塩にはこだわってほしい。
ド定番でおすすめなのが「トリュフ塩」だ。「トリュフ塩」をまぶせば、一瞬にしてなんだかセレブな専門店の味わいに変化する。ワインと合わせてゆっくりつまみたいような味わいだ。
シンプルな塩味で楽しみたいという人には、ぜひ「大谷塩」をおすすめしたい。石川県珠洲市の揚げ浜式塩田で生産されている海水塩なのだが、なぜか高品質な発酵バターのあとあじのようなおいしい甘さを感じるのだ。適度なしょっぱさとあまさで、極上のフライドポテトに仕上げてくれる。なかなか売っていないので、インターネットでお取り寄せがおすすめ。
また、ちょっと変わったものでは「燻製塩」も捨てがたい。ぱらりとかけただけで、ほんのりとした燻製香りが加わり、よりいっそう食欲を刺激する。燻製をかけた塩は製品によってかなり個性が異なるので、試食してから購入することをおすすめする。
アンケートの対象外ではあったが、それでも何人かからは「あれがおいしいよ!」という声があがった方法があるのでご紹介したい。それは「手割」だ。皮付きのままゆでた(もしくはふかした)ジャガイモを手で半分ないしは食べやすい大きさに割って、そのまま油で揚げる。私自身もかつておしゃれ系居酒屋でこの方法でフライドポテトが供され、そのおいしさにびっくりして以来、お気に入りの方法なのだ。不規則な切り口の部分はカリカリに揚がり、中身はホクホクとしていて、それを同時に味わえる。あまり大きすぎると1個を4分割くらいせねばならず、カリカリ部分が増えすぎるので、できるだけ小さめのジャガイモでやるのが好ましいだろう。
<材料(1人前)>
小さめのジャガイモ 3個くらい / 揚げ油 適宜 / 塩 お好みのもの
<作り方>
(1)鍋にたっぷりの水を入れ、よく洗ったジャガイモ(皮付き)をいれて、火にかける
(2)沸騰したら弱火にして、蓋をして20分ほどゆでる。竹串をさしてすっと通ればOK。
(3)粗熱が取れたら、包丁でほんの少し切り込みをいれて、そこをきっかけに手で食べやすい大きさに割る。
(4)鍋にたっぷりの油を入れて、180℃まで加熱する。油が少なすぎると上手に揚がらないので、じゃがいもが隠れるくらいの量の油を使うこと。
180度のちょっと高めの温度で揚げる以降は、シューストリングの時と同じだ。
<ポイント>
*すでにジャガイモには火が通っているので、外側だけがカリッと揚がればよい。そのため、最初から高い温度で短い時間で揚げる。
単純なようで奥が深いフライドポテト。今回はカット方法に焦点をあてたが、ジャガイモの品種にこだわるのもまた一興だ。やりようによってはパーティーにもぴったりなフォトジェニックな一品にもなりそう。ぜひ、ご家庭でチャレンジしてみてほしい。もちろん、塩にこだわるのも、お忘れなく!
(一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂)
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