訪日クルーズ船の寄港、3年で倍増 九州・沖縄に集中港湾整備が急ピッチ、乗客に「お金」落としてもらう仕掛け課題

17年の寄港数を県別でみると、515回の沖縄が最多で長崎、福岡と続いた。沖縄は「東アジアから最も近い日本として立ち寄るツアーが増えた」(内閣府沖縄総合事務局)。18年も那覇港(那覇市)で17年比3割増の292回、石垣港(同県石垣市)で2割増の158回など県内全体で662回と3割増を見込む。

クルーズ船は一度に1500~2000人以上と新幹線1編成分を超える観光客が寄港地に降り立つ。このため誘致に向け港湾整備に取り組む動きが広がっている。

大阪市は14年から、大阪港に寄港するクルーズ船への給水を無料にする「全国でも珍しい」(市の担当者)取り組みを展開。500トンで約32万円かかる水の代金のほか岸壁使用料なども免除し、15万トン級の船舶ならば最大500万円超の負担軽減になる。こうした施策が実り、18年の寄港数は68回と17年比36%増える見込みだ。

京都府は「海の玄関」である舞鶴港(舞鶴市)について、5年後をメドに一部埠頭の水深を0.5メートル深い10メートルにするなど、大型船誘致のためのインフラ整備を進める。八代港(熊本県八代市)では、クルーズ船運航の世界大手「ロイヤル・カリビアン・クルーズ」(RCC、米フロリダ州)が旅客ターミナル、国が岸壁、熊本県が埠頭用地の整備を担当する官民の共同事業が始まった。

伏木富山港(富山市など)では新たな港湾整備により、3月までにクルーズ船の受け入れ能力を16万トン級から22万トン級に広げる。博多港では、寄港需要は旺盛なものの受け入れ体制が追いついていないため、より大型のクルーズ船が着岸できるように岸壁の延伸工事を実施中だ。

年30回超の港湾、成長の正念場

港別の寄港ランキングで上位を占めた西日本でも、課題は山積している。上陸後にバスで特定の免税店などを回り、地元の商店街までは足を延ばさないケースが目立ち、「経済波及効果には偏りがある」との指摘がある。

訪日客の案内を手配するのは、ランドオペレーター(ランオペ)と呼ばれる事業者だ。収益は立ち寄り先の免税店の売り上げに応じて店側から受け取る手数料に大きく依存している。その結果、特定の免税店ばかりに誘導する実態はなかなか改善していない。

地元店の受け入れ体制の整備も課題になっている。中国では「支付宝(アリペイ)」などのスマホ決済が普及しており、訪日時の利用ニーズも高いとみられるが、地域によっては対応できる店が限られる。

ランキングで2位に入った長崎港。県によると、17年も中国からの寄港が増えたが、「爆買い」のピークが過ぎた今は上陸後に免税店や家電量販店をバスで回る従来型が飽きられ、不満の声が増えているという。このため県では市町と連携して長崎港に降りた観光客をバスで島原半島などに連れて行き、雲仙地獄を巡るツアーなど、これまでと違ったルート開発に力を入れている。

官民で神戸港にクルーズ船を誘致する「神戸市客船誘致協議会」は、乗客に地元周遊を促す実証実験に取り組んでいる。乗客が自分のスマートフォンで通信できるよう「SIMカード」を無料配布し、三宮センター街などを訪れると利用できるデータ通信量が追加される仕組み。効果を検証し18年度以降の継続を検討する。

クルーズ船誘致策に詳しい大阪大学大学院の赤井伸郎教授は「地域が潤う仕組みづくりが、寄港地としての地位を確立するカギ」と指摘する。寄港数が年間30回を超えた「成長期」の港湾が「正念場を迎える」という。

月平均で数回の寄港が見込まれるようになると、ボランティアに頼った歓迎だけでは対応しきれない。自治体が受け入れ体制を強化し騒音やゴミ対策にも取り組む必要があるが、地域経済への波及効果が明確でなければ予算を投じにくい。

[日本経済新聞夕刊2018年1月29日付、同朝刊30日付を再構成]