Qちゃんも頼ったシューズの名工 東京五輪は新天地で三村仁司氏、「アディダス」から「ニューバランス」へ

三村仁司氏は厚労省から「現代の名工」として表彰を受けたこともある(ニューバランス提供)
三村仁司氏は厚労省から「現代の名工」として表彰を受けたこともある(ニューバランス提供)

五輪の女子マラソンで金メダルを取った高橋尚子さんや野口みずきさんら一流選手の靴を手掛けてきたシューズ職人の三村仁司氏(69)が、スポーツ用品メーカーのニューバランス(NB)と専属アドバイザー契約を結んだ。2018年に古希を迎える第一人者は「やりたいことができる場所。素晴らしい成果が出るように、するからには夢を持ってやる」と意欲に満ちている。

ニューバランスの靴については「まだまだ改良の余地がある」という(1月17日の記者会見、ニューバランス提供)

契約選手のシューズ製作や商品開発に携わっていく。ニューバランスの靴は箱根駅伝で着用する学生が増えてはいるが、競技者向けは発展途上。04年に厚生労働省から「現代の名工」として表彰を受けた職人の目にも「まだまだ改良の余地がある」と映る。長年培ってきた経験と技巧を生かし、選手が故障しにくいシューズを目指すという。

数社からオファーを受けるなかで「全社を挙げて一緒に仕事がしたいという熱い思いを感じた」ことが決め手に。契約期間は18年から8年間で、トップアスリートにシューズを供給してシェアを伸ばしたい同社と「方向性も一致」した。

アシックスを定年退職後、09年に自身の工房を設立。その後はアディダスジャパンと契約していた。綿密な計測のもとに仕立てられた「逸品」を履きたいという選手は多い。

18年の全日本実業団対抗駅伝で旭化成の2連覇に貢献した市田孝はそのひとり。高校時代からの愛用者で、「自分に合った靴を作ってくれるだけでなく、足の左右の差を見て弱いところを指摘してくれる」。平昌五輪でメダル獲得が期待されるスピードスケートの小平奈緒からも現地で使用するトレーニングシューズを依頼された。

「20年の東京五輪ではマラソンを中心に長距離を強くしたい。責任は重いが、やりがいがある」と三村氏は決意する。「限界が来たときは終わり。選手が困らないように長く(仕事が)できたらいい」。世界と戦うアスリートを足元から最上の一品で支えたいという情熱は、なお尽きることがない。

(渡辺岳史)

[日本経済新聞夕刊2018年2月3日付]

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