あなたの焼酎は何割り? 蔵元がすすめる多彩な飲み方
あなたの好きな焼酎の飲み方は? 水割り? お湯割り? ロック? 割るときの焼酎の割合はどれくらい?
焼酎と言えば九州が本場だが、東京などでも、九州の本格焼酎を手軽に飲めるようになった。水割り、お湯割りなど多彩な飲み方が楽しめる焼酎だが、焼酎をどれくらいの割合で入れたらいいのか、温めるにしろ冷やして飲むにしろ、どの程度の温度にすればいいのか、実はあまり深く考えていなかったりする。
2014年以来3年連続で県別焼酎生産量日本一を誇る宮崎県が、毎年恒例の焼酎PRイベント「焼酎ノンジョルノ宮崎 in 東京 2018」を今年も開催した。会場を訪れ、焼酎のプロにおいしく飲むポイントを聞いた。
今回話をうかがったのは、大麦焼酎「駒」「赤鹿毛(あかかげ)」や芋焼酎「母智丘千本桜(もちおせんぼんざくら)」を手掛けるメーカー「柳田酒造」の柳田正代表。酒が強い人弱い人などで飲み方は違ってくるが、あくまで「自社の焼酎をおいしく飲むためのおすすめ基準」を聞いた。
宮崎の焼酎は、最近では原料の多様化も進み、飲み方次第で多彩な味わい方ができるようになったといい、その意味でも様々な飲み方を紹介しているという。また、食中酒だけに「ぜひ宮崎県産のおいしい料理とともに飲んでほしい」とも語る。
本題に入ろう。
焼酎の飲み方の基本は「冷やすときは一気に」「温めるときはゆっくりと」だ。
たとえばロックなら、グラスに氷を入れてすぐに焼酎を注いではいけない。丸いグラスで、グラスに氷を入れたらまずは氷だけをステアする。下半分が曇る程度にグラスが冷えてきたら、溶け出た水を捨てる。その後に焼酎を氷に垂らすように注ぎ、最後に時計回りにやさしくステアする。
焼酎と水の配分は五分五分が基本。初心者なら焼酎を4割、強い人なら6割でもいい。また、事前に焼酎と水とを混ぜておき、一晩から3日程度なじます(前割り)とよいという。
焼酎には20度から25度、35度などアコール度数に応じていくつかバリエーションがあるが、これも基本は同じ原酒に水を加えてアルコール度数を調整しているという。なので、自分に合った強さを見つけたら、あらかじめ水を加えておいて寝かせておくと、より飲みやすくなるという。
水割りは、味が淡泊で脂っこい料理との相性がいいそうだ。黒豚の冷しゃぶ、ゴーヤチャンプルーなどだ。
お湯割りもやはりお湯が先だ。85度程度のお湯をグラスに注いだら、すぐに焼酎を注ぐ。ただし、かき交ぜない。お湯と焼酎の温度差で対流が起きるため、ゆっくり混じり合うのを待つ。
お湯と焼酎の割合は、水割り同様五分五分がおすすめ。焼酎ブームの際は6:4(ロクヨン)が流行したが「造りのしっかりとした焼酎は薄めても伸びますし、逆に甘さや香りがひらいて豊潤さが増します。食中酒として長い時間飲み続けるには5:5が良いのでは」(柳田代表)とのこと。
南九州では、夏に限らず1年中お湯割りという人も多いという。それだけ料理との相性も幅広く、つけあげ(さつま揚げ)やキビナゴ、ガネ(サツマイモを細く切り、野菜とともに卵と小麦粉で揚げたもの)などのつまみがよく合うという。
温めて飲むなら「かん冷まし」という飲み方もある。前割りしておいた焼酎を黒じょかなどの加熱容器に入れてなるべく弱火でゆっくり加熱する。うっすらと湯気が立ち始めたところで加熱をやめ、5分かけてゆっくり冷ましてから飲む。
かんざましをすると甘さや濃さが増すという。宮崎県には「鳩とっくり」といってハトのような形をした独特のとっくりがある。ハトのしっぽ部分、とがったところをいろりの灰の中に差し入れて加熱するという。
料理に合わせるなら、鍋料理やおでん、煮魚が相性がいいそうだ。
都市部ではチューハイに慣れ親しんでいる人も多いだろう。焼酎の炭酸割りをおいしく飲むには、水割りとは配分を変える必要があるという。
基本は焼酎3に対して炭酸水7。水割り同様にまず氷を入れてステア、グラスをしっかり冷やしてから焼酎を注ぐ。そこに炭酸水を注いでゆっくりステアする。のどごしが炭酸割りの魅力。濃くしすぎないところがポイントだ。
料理は、豚の軟骨煮、地鶏の炭火焼き、チキン南蛮などが合うという。
ソーダ割りの応用編としてレモンを加えたソーダ割りもおすすめだという。いわば、レモンサワーだ。蜂蜜漬けのレモンや冷凍レモンを加えてソーダ割りを作る。配分は、レモンなしのソーダ割りと同様だ。
料理は、てんぷらや串揚げなどの揚げ物、焼き肉や焼き鳥との相性がいいそうだ。
最後にパーシャルショット。ハードリカーの焼酎は冷凍庫に入れておいても凍らない。とろりねばりのある状態になる。これをそのまま飲む。
口当たりがいいため、アルコール度数の高さを感じにくいので飲み過ぎには注意が必要だ。高濃度の原酒を凍らせると、アルコールの甘さと丸さが楽しめるという。デザートと合わせたい飲み方だ。
ほかに地元ではカクテルもあり、甘みを加えたり、コーヒーを入れたりと、これまでにない多様な飲み方を提案しているという。
焼酎造りが盛ん、しかも芋麦米と多様な原料が使われているのは、県内で幅広くよい水に恵まれているからだ。その水は酒造りに限らず、様々な用途にも使われている。米や野菜、さらには果物と、温暖な気候と合わせて、宮崎の農業はとても豊かだ。
また、火山灰で浄化された水は魚の養殖にも適している。宮崎県から鹿児島県にかけての一帯は国内でも有数のウナギの養殖で知られる。
そしてチョウザメの養殖も盛んだ。チョウザメと言えばキャビア。「サメ」の名がつくが淡水魚で、アンモニアを分解できるため臭みはなく、白身で淡泊だ。「焼酎ノンジョルノ宮崎 in 東京 2018」でもチョウザメの料理が提供されたが、実に上品な味わいだった。もちろん、キャビアにも舌鼓を打った。
今や全国ブランドになった「霧島」をはじめ、宮崎県の焼酎は広い地域で飲まれている。行きつけの店や自宅にも、それと気づかずに宮崎焼酎が並んでいたりもするだろう。
せっかくなので、よりおいしく。蔵元の知恵を参考に、あなたの焼酎ライフをより豊かにしてはいかがだろうか?
(渡辺智哉)
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