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瓶にライム挿すはウソ? メキシコビール本当のお作法

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NIKKEI STYLE

メキシコのビールといえば「コロナ」を思い浮かべる人が多いだろう。メキシコのビールメーカー、グルーポ・モデロ社の銘柄で、世界180カ国以上で飲まれている、薄い黄金色が特徴のピルスナータイプのビールである。

メキシコに行ったことがなくても、メキシコ料理を食べたことがなくても、カフェや居酒屋で、あの透明でスタイリッシュなボトルを一度は目にしたことがあるのでは?

事実、「コロナ・エキストラ」は、日本のビール輸入量第1位なのだそうだ。

日本の飲食店で、コロナビールは一般に、瓶の口に8分の1にカットしたライムやレモンを挿して供される。客はそのライムを瓶の中に押し込んで、そのまま瓶に口をつけて飲む。たしか本場メキシコではそうやって飲むのだと教えられた記憶がある。

しかし、ここ2~3年メキシコや近隣の中米(食文化的にはメキシコに非常に近い)を旅してきた中で、私は現地でこのような飲み方をしている人を一度も見かけたことがない。

思えば、「本場ではこうして飲む・食べる」という情報には昔から不確かなものが多い。私が幼いころは、スパゲティーはフォークとスプーンを持って食べるものだとか、フランス料理店でライスを食べるときにはフォークの背に乗せて口に運ぶのが正しいマナーとかいわれたものだ。

しかし、パスタの本場・イタリアではこのような食べ方はしないし(スプーンを使うのはフォークだけで上手に食べることができない子どもだけとか)、フランスではそもそも白いご飯を食べる習慣がない。後者はイギリス海軍がマッシュポテトや豆を食べるときに(豆は潰してから)フォークの背に乗せて食べていたのを日本の海軍が真似するようになり、明治時代、日本に洋食が入ってきた際にテーブルマナーとして広まったようである。

これらと同じように、本場のお作法とは違うものがまことしやかに伝わる不思議な現象がコロナビールにも起きている。

では、本場メキシコではどのようにビールを飲むのかというと、普通にグラスやジョッキに注いで飲んでいる。ビールの口にライムが挿されて出されるのもあまり見たことがない。そのかわり小皿にカットしたリモン(=「limon」。スペイン語でレモンの意味)が添えられて出てくることが多い。これをビールにキュッと絞って飲むのだ。

日本ではレモンというと黄色いが、メキシコや中南米のレモンはちょっと小さめで緑色。味や香りは日本人が知っているところの「ライム」に近いので、以下、ライムと呼ぶことにする。

「チェラーダ」という飲み方も非常にポピュラーだ。これはカクテルの「ソルティドッグ」や「マルガリータ」のようにグラスの淵に塩をつけ(チリパウダーを混ぜてある場合も)、ライム果汁にキンキンに冷えたビールを注いで飲む。

日本の一般的なビールのアルコール度数は5パーセントであるのに対し、コロナは4.5パーセント。もともと軽い飲み口がライムによってさらにサッパリし、ゴクゴク飲める。暑い日にピッタリだ。汗をかいたときにはグラスの淵についた塩をナメナメしながら飲むのがなんともうまく感じられる。

そして、もう一つメキシコや中南米ならではの変わった飲み方がある。「ミチェラーダ」といって、要はビールで割って飲むカクテルなのだが、ビールと合わせるものが日本人の想像をちょっと超えている。

ジョッキやグラスの淵に塩やチリパウダーをまぶしてあるところまでは「チェラーダ」と一緒。ジョッキの4分の1くらいのところまで、トマトジュース、ウスターソース、タバスコ、ライム汁、氷が入っていて、ビールで割るのだ。

「トマトジュース+ビール」までは「レッドアイ」というビールカクテルがあるから、まあ許せる。が、ウスターソースにタバスコって「学生のコンパの罰ゲームかよ!」とツッコミたくなる。

しかし、恐るおそる口をつけてみると、これが意外とうまい。しょっぱくて、酸っぱくて、辛くて、ほどよいビールの苦みとトマトジュースの甘みで、味覚のすべてが満たされるからだろうか。

ミチェラーダは中南米の国や地域、店によっても作り方がちょっとずつ違い、上記のレシピは私がメキシコシティーで飲んだもの。グアテマラではウスターソースの替わりに「マギーソース」という中米や東南アジアで人気の調味料が入っていた。これは甘みとコクが加わったしょうゆのようなもので、メキシコや中米ではタコスのソースとしてよく添えられている。

また、エルサルバドルのミチェラーダはトマトジュース抜きで、「ウスターソース+ライム汁」であった。こうなるとウスターソース味のビールである。かなり塩分が強いので、ビールをチェイサー(水)替わりにしてミチェラーダを飲みたくなるほど。

私は未体験であるが、メキシコのカンクンあたりのリゾートエリアではウスターソースの代わりにオイスターソースを入れるそうである。マギーソースはダイズからできたものであり、ウスターソースも野菜や果物を煮詰めたもので、どちらも植物由来。カクテルとしては多少気持ち悪い(失礼!)「割りもの」ではあるが、まあ許すとしよう。

しかし、オイスターソースって!? カルーアミルクに牛乳を使うくらいはあるが、ほかに動物性のものが入ったカクテルにはなじみがない。しかも、魚貝のフレーバーって!? と、メキシコ・中米のビールの飲み方の自由さには本当に驚かされるばかりなのである。

ミチェラーダは自分でビールを注ぎ入れて割って飲むものなので、濃さも自由自在だ。「混合ソース」入りのジョッキだけを頼むこともできる。

日本の居酒屋でおなじみ「ホッピー」(麦・ホップを原材料としたノンアルコールでビールテイストの炭酸飲料)は焼酎入りのジョッキに注いで飲む。酒飲みは焼酎を「なか」、ホッピーを「そと」と呼び、「『なか』だけちょうだい!」などと注文する。ちょうどそんな感じで、ミチェラーダも「なか」だけ注文できるのだ。

自分だけのちょうどいい塩梅で飲みたいというのは、世界の酒飲み共通のようである。

さて、もう一つメキシコビールに関して日本人が勘違いしているだろうことがある。それは、メキシコではみんなコロナビールを飲んでいると思っているかもしれないが、「メキシコにはコロナ以外にもたくさんおいしい銘柄がある」ということ。

キリンビールの調べによると2016年国別ビール生産量は1位の中国、2位の米国、3位のブラジル、4位のドイツ、5位のロシアに次いで、メキシコは6位。ちなみに、7位が日本である。メキシコというと「テキーラ」というイメージが強いかもしれないが、実は日本以上のビール大国なのである。

「コロナ・エキストラ」と同じメーカーからリリースされている「モデロ・エスペシアル」や、コロナ同様苦みが少なくクリアなのど越しの「ソル」、日本のメキシコ料理店でも見かける「テカテ」など、20種類以上の国産ビールがある(クラフトビールを除く)。

先に紹介した「チェラーダ」や「ミチェラーダ」も、コロナだけではなく自分の好みのビールを注ぎ入れて飲む。だから、レストランやバーで「ミチェラーダください」と注文したら、「ビールは何にします?」と必ず聞かれる。メキシコ・中南米の旅に行くことがあったら、いろいろな組み合わせを試していただきたい。

ところで、なぜ日本ではコロナの瓶の中にライムを入れて瓶のまま飲むようになったのか、疑問に残るところである。昔は瓶の口を消毒する意味でメキシコではコロナにレモンやライムを添えていたとか、コロナの瓶は透明ゆえ日光に当たると化学変化が起き「太陽臭」がするので、それを消すためなど諸説ある。

マツダなど日本企業が多数進出しているメキシコ・グアナファト州の経済開発省日本代表事務所代表で、メキシコ・日本両国の文化に精通するロドルフォ・ゴンザレス氏に聞いたところ、意外な答えが得られた。

「メキシコでも、ライムを瓶ビールに挿す姿は見なくもないですよ。ただ、私が子供のころ、メキシコ人の大人たちは、缶ビールを飲むときにライムを搾っていましたね」。

缶のプルタブを外した脇に搾ったライムをため、缶の飲み口に塩とチリパウダーをつけ、缶のビールを飲むときにライムと塩とチリがいっしょに口に入るように飲んでいたというのだ。「メキシコ人はライムとチリが大好きで、ライムはそこらにいっぱいあってタダみたいなものだから、料理や飲み物になんでもかんでも使います」とゴンザレス氏。

さらに続けて、「コロナが海外(日本も含む)に輸出を始めるときに、キャンペーンとして、メキシコのビールのイメージを瓶ビールで表現したのが例のスタイルになったのではないでしょうか。瓶ビールでは缶ビールのようにライムの汁をためることができないですからね」という。

いずれにしても、メキシコのビールにライムは欠かせないようである。メキシコや中米式のビールの飲み方、是非お試しあれ。

(ライター 柏木珠希)

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