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ドイツのカツレツ 大切な青春の味 都倉俊一さん

食の履歴書

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NIKKEI STYLE

「君の中にはなんの違和感もなく、乃木希典大将とビートルズが共存している」。盟友だった作詞家の阿久悠さんはこう評したそうだ。外交官の父と暮らした通算7年のドイツ生活が食と音楽に独特の感性を育み、クリエーターたちとの化学反応を生み出してきた。

独り暮らしで培った和と洋の味覚

「和洋折衷」が子どものころから当たり前だった。だから「食文化のジャンルにはまったくこだわりがない」。外交官だった父に随行し、小学校時代はボン、高校時代はベルリンで家族と暮らした。

晴れがましかったのは正月や天皇誕生日。日の丸を高々と掲げた大使館や領事館の公邸でそぼろご飯やシイタケの煮付け、カンピョウ、卵焼き、さつま揚げなどが入った幕の内弁当に舌鼓を打った。

「かつお節と昆布で出しをとった本格的な日本料理が出るのでいつも楽しみにしていた」。日本人に生まれて良かったと思える瞬間だった。

一方で日々の食卓で慣れ親しんだのはドイツの家庭料理。母や住み込みのドイツ人シェフがよく作ってくれた。

シュニッツェルはソウルフード

特に忘れられないのが「シュニッツェル」と呼ばれるカツレツ。豚や子牛の肉をたたいて薄く延ばし、パン粉をまぶして油で揚げ、そこにレモンをギュッと絞って食べる。

「サクサクした食感がなんとも絶妙。粗野だけど栄養が豊富でおいしい」。いまでも懐かしいソウルフードだ。

音楽も食事と同様、ジャンルを問わずに楽しんできた。4歳からバイオリンを習い、クラシック音楽に親しむ一方で、高校に入るとエレキギターにも熱中。ビートルズのコピーに明け暮れてきた。

「カラヤンが指揮するベルリン・フィルの厳かな演奏に感銘を受けた」。そうかと思えば「現地の仲間とバンドを組み、ロックコンサートで演奏するのも楽しかった」。

そんな自由で柔軟な感性が花開くのは、2度のドイツ生活を終えて日本に帰国したすぐ後のこと。学習院大在学中に作曲を始めると「あなたの心に」が大ヒット。仕事が次々と舞い込むようになる。

阿久さんと出会ったのもそのころだ。初めて食事をしたのは神奈川県湯河原町にある風光明媚(めいび)な海沿いの旅館。ある音楽プロデューサーから曲作りを依頼され、一緒に合宿することになったのだ。

地元産の鮮魚に合いそうな白ワインをテイスティングしていると「おい、君は何をしているんだ?」と阿久さんが不思議そうに眺めている。

「淡路島で生まれた阿久さんは11歳上。育った環境も、時代感覚も、性格も違うから僕のことが宇宙人に見えたらしい。それが逆によかった」

互いに嫌な感じはしなかった。異質な才能が響き合い、話題は日露戦争からビートルズまで多岐にわたった。この合宿がきっかけとなり、日本歌謡界の最盛期をけん引する黄金コンビが誕生する。

「狙いうち」「ジョニィへの伝言」「ペッパー警部」「サウスポー」……。星の数ほどのヒット曲を連発した。

地方ロケで知る郷土の味

山口百恵さんら多くのアイドルを輩出したのがオーディション番組「スター誕生!」。阿久さんらと審査員を務め、地方ロケで各地の郷土料理を堪能することができた。

海の幸あり、山の幸あり。日本の豊かな食文化に目からうろこが落ちる思いだった。海外暮らしが長く、日本では都会生活しか知らない都倉さんには貴重な体験になった。

やがて転機が訪れる。名付け親にもなったピンク・レディーが1981年に解散すると、新たな可能性を求めて活動を世界に広げたのだ。

米国では「ニューヨーク・シティ・ナイツ」のヒットで知られる歌手レイフ・ギャレットのアルバムを制作し、ビルボードに初チャートイン。

88年には拠点をロンドンに移し、ミュージカル制作にも取り組んだ。原爆投下時に長崎にいた米国人捕虜と日本人女性との恋愛を描いた独自作を本場のウエストエンドで上演。大きな話題を呼んだ。

その後、日本に帰国してからも映画、ドラマの音楽を精力的に手がけている。日本音楽著作権協会(JASRAC)会長、横綱審議委員会委員など「文化人の顔」として活動領域は広がるばかりだ。

日本にいると無性に食べたくなるのがシュニッツェル。時折、自ら腕を振るう。フランスパンをミキサーで砕いて肉にまぶす。「買ってきたパン粉ではダメ」。油にバターを湯煎した上澄みを入れると絶妙なコクが出るそうだ。

「大切な青春の味」。揚げたての熱々の肉をほお張ると、懐かしいドイツの記憶がジワリとよみがえってくる。

心安らぐ日本の洋食

長年通っているのが東京・銀座の並木通りにある「南蛮銀圓(えん)亭」(電話03・3573・1991)。初代店主、萩本光男さんが老舗西洋料理店「小川軒」でシェフとして修行していた時代からの付き合いだという。

「心がホッと安らぐ日本の西洋料理を味わえる」。好物は上質な黒毛和牛を使ったビーフカツレツ(4000円税抜き)。柔らかいが食べ応えがある。

そこにオードブルの小皿(1皿900円)や「季節のサラダ」(1200円)を添えるのが定番メニュー。お気に入りは「チキンとオレンジのサラダ」「ポルチーニのクリーム煮」「ハマグリのシュロンソース」など。

40席の店内は白が基調の明るい雰囲気。店名の「圓」は常連だった英文学者で吉田茂元首相の長男の吉田健一さんの随筆からとったそうだ。

最後の晩餐

肉好きなので最後は和牛にしようかな。赤身の多いヒレをミディアムで焼き上げたステーキにフライドポテトを添える。お酒は仏シャトー・マルゴーのエレガントな赤ワイン。当たり年と言われる82年産か、89年産あたりを味わいながら、人生を締めくくりたいですね。

(編集委員 小林明)

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