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上下関係も予算もない? 次世代型組織を探る本が人気 青山ブックセンター本店

2018/2/23

ビジネス書のメイン平台の目立つ場所で面陳列する(青山ブックセンター本店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は、2~3カ月に一度訪れている準定点観測書店の青山ブックセンター本店だ。経済ニュースアプリ、ニューズピックスと幻冬舎が組んだビジネス書シリーズの売れ行きが相変わらず好調だ。この書店に多い20~40代の若めの読者層が好調を牽引している。そんな中、新しい組織のあり方を詳細に研究した大部の翻訳書が、予想外の売れ行きを示していた。

■人間の可能性引き出す組織とは?

その本はフレデリック・ラルー『ティール組織』(鈴木立哉訳、英治出版)。著者はコンサルティングファームのマッキンゼー出身で、独立してエグゼクティブ・アドバイザー、コーチ、ファシリテーターを務める人物。新しい組織モデルについて、2年半にわたり、世界の様々な組織を調査し、2014年、本書を世に送り出した。原題は「組織を再発明する」となっており、人類の組織の歴史を追いつつ、今現れつつある新しい次世代型の組織モデルを理論と実例から綿密に検討している。600ページ近い読みごたえのある大著だが、先週の同書店では、ビジネス書のベストセラーで3位に入った。

分厚い本のわりに追いかけている問いはシンプルだ。「人々の可能性をもっと引き出す組織とは、どんな組織だろうか? どうすればそんな組織を実現できるのだろう?」。これがその問いだ。現代の組織のあり方は限界に近づいており、多くの人々は組織での生活に幻滅するようになっている。それは底辺で骨身を削って働いている人もトップ層でも変わりないというのが現状認識だ。

著者が「進化型(ティール)」と呼ぶ、次世代組織を具体的に紹介しながら、ティール組織の構造や慣行、組織文化を分析する第2部が抜群におもしろい。そこには従業員7000人のオランダの在宅ケアサービスの非営利組織や従業員4万人のグローバル企業から、従業員500人の金属部品メーカーまで、様々な組織が登場する。

■キーワードは「自主経営」

例えばオランダの非営利組織、ビョートゾルフは10~12人の看護師チームに分かれ、そのチームが約50人の患者の在宅ケアサービスを行う。どの患者を何人受け持つか、業務管理やどこにオフィスを借りるかまで、すべてをそのチームで決めるのだという。だが、チーム内にリーダーはいない。重要な判断は集団で決める。この形でわずか10人で始まった組織が、7年後にはオランダの地域看護組織で働く全看護師の3分の2を占めるにいたったという。そこまで拡大しても地域マネジャーのような中間管理職はいない。その代わりに権限を持たない地域コーチが存在する。本社のスタッフ機能も極端なまでに少なく、30人ほどで膨大な数のチームを支援をしている。これで回っていくのは、チームの「自主経営」が機能しているためだ。予算管理もプロジェクト管理もしないで好業績を上げるメーカーの話も出てくる。こんな事例を次々と分析的に紹介する一方、第3部では、こうした組織をどのように創造するか、移行するにはどうしたらよいかまで細かく検討していく。

現在の多くの企業が階層型組織で様々な管理業務に追われていることからすると、進化型組織はかなり理想主義的に見える。ただ、組織の現状に悩みを抱えているビジネスパーソンには、多くの示唆を与えてくれるだろう。働き方改革の大きなテーマ、生産性向上のヒントもある。新しい組織づくりのマニュアルのように読むのではなく、組織について根底から考え直すベースとして読んでみるといい。「最初はそこまで売れる本とは思わなかった。この辺はスタートアップ系の企業も多いので、組織づくりへの関心は高いのかも」と、ビジネス書を担当する益子陽介さんは話す。

■落合陽一氏の新刊が1位に

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)日本再興戦略落合陽一著(幻冬舎)
(2)お金2.0佐藤航陽著(幻冬舎)
(3)ティール組織フレデリック・ラルー著(英治出版)
(4)「言葉にできる」は武器になる。 梅田悟司著(日本経済新聞出版社)
(5)超AI時代の生存戦略落合陽一著(大和書房)

(青山ブックセンター本店、2018年2月12~18日)

1位はメディアアーティストであり、ベンチャー経営者、研究者、教育者とマルチな活動で脚光を浴びる落合陽一氏がこれからの日本のグランドデザインを語った本。ニューズピックスと幻冬舎のコラボ本の最新刊だ。2位も同じシリーズの1冊で、こちらは11月末の発売から一向に売れ行きが衰えない。紹介した組織論が3位。4位は前回の八重洲ブックセンター本店のランキングにも登場したロングセラー。この青山でも2017年の年間ベストセラー1位となったことで、再び売り上げを伸ばしている。5位は、1位と同じ落合氏が超AI時代の「生き方」「働き方」「生活習慣」を34のキーワードから語った本。17年3月の刊行だが、関連書として1位の本と合わせて購入する人が多いようだ。

(水柿武志)

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