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ルンバに貢いで家を改装 シングル女性は「男前」消費

巨大消費を動かす40・50代「おひとりウーマン」(中)

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NIKKEI STYLE

「ルンバが働きやすいように家をリフォームしました」。ハマったものには思いきりよくお金を投じる「男前な消費行動」のシングル女性が増えています。そのニーズが新たな消費分野を創出することも。40~50代「おひとりウーマン」消費の最前線を牛窪恵さんが取材。3回連載の第2回です。

◇  ◇  ◇

私は10年ほど前の講演で、よく「独身男性は『ピンポイント型トラップ消費』、でも独身女性は『全方位型バスタブ消費』なんです」とお話ししていた。

一般にミドル世代の独身男性は、女性より興味関心がピンポイントで、無関心なことにはほとんど消費しない。その代わり、「トラップ(罠)」のようにハマった趣味にはとことんお金を使う。たとえば、サッカーのプレミアリーグのファンなら、スカパーの専門チャンネルに加入し、好きなチームのユニフォームを買い、海外まで応援に行くといった具合。よく言われる鉄道やプロレス、アイドルファンも同様で、ある意味で「値段を見ない」、支出に上限を設けないことが、男性の美学でもある。

対する独身女性はというと、多くが消費については「浮気性」。

お気に入りの店に通い続けるより、「話題の」や「初上陸」などの売り文句に弱い。消費分野も移り気で、先月はバーゲン時期だから洋服に3万円使った、でも今月は旅行に30万円、来月は部屋を模様替えしたいからインテリアに5万円使おうかなといった具合。

一般に男性より、興味関心が幅広く、何にでも全方位にアンテナを張り巡らし、浅いバスタブにお湯を張るように薄く広く消費する。それが「全方位型バスタブ消費」のゆえんだ。

ところがここ数年、そして今回の取材でおひとりウーマンの消費行動を観察すると、極めて男性的な「ピンポイント型トラップ消費」に近い様子が見てとれる。

年齢や時代とともに興味の範囲もだんだんと狭まり、ハマる分野には見境なくお金を使う独身女性が多いのだ。男性に比べれば、まだ「ふだんはスタバ(スターバックス コーヒー)に入るのはもったいないから、ペットボトルにお茶を入れて持ち歩く」といった堅実ぶりも目立つが、使うとなったらお金に糸目をつけない。

女性はミドル年齢になると消費が男性化、「男前」になりやすいのだ。

彼女たちの多くは、そんな男前消費の自分を称して、こうも言う。「自分の趣味や興味に『貢げる』って、ある意味、すごく快感なんですよね~」

なぜルンバのために数十万円も「貢ぐ」のか

興味対象に貢いだおひとりウーマンのひとりが、前回記事「福山ロスでマンション衝動買い シングル女性の胸の内」で登場した、ルンバオーナーのユリエさん。

まずは「カレ(ルンバのピーちゃん)」がスイスイ掃除しやすいよう、廊下の床材を交換。続いて、家具を3つ買い替えた。ひとつは、カレが下に潜り込んで掃除しやすいソファ、残る2つはカーテンとラグマット。それぞれ、カレとしっくりくるデザインをコーディネートして選んだという。かかったお値段、締めて60万円超!

実はユリエさん、2年前から全社的な「業務改革推進」のPJのメンバーだ。会社の役員たちは「無駄を省いて、生産性の向上を!」など声高に叫ぶが、日々の業務に追われて余裕がない支社スタッフのノリは悪く、「アンケートにご協力ください」と声をかけても「うるせえな」と舌打ちされることばかり。毎日、職場に通うのが憂鬱だった。

ところがある日、ピーちゃんを買い、思い切ってリノベーションしたマンションに引っ越すと、生活が一変。疲れて帰っても、ゆっくり着実に床のほこりを取り除いていくカレ(ピーちゃん)の動きを眺めるうち、「『業務効率を上げて、無駄な仕事を省く』って、所詮はマイナス(ほこり/無駄な仕事)をゼロに掃除するのと同じだな」と思えるようになった。「だったら、なにも急ぐ必要はないな」「人生長いんだし」……。

実は、私がレギュラー出演する番組「所さん! 大変ですよ」(NHK総合)でも、ペット化するロボット掃除機の話題を取り上げたことがある(2016年2月25日放映)。この時、ルンバを「キヨシ」と命名するアラフォーのおひとり様(名古屋在住)が登場した。

彼女はそれまで、会社から大きな仕事を任されたプレッシャーで体調不良になった時期もあったそう。だが、7万円でキヨシを買い、「彼」のためにマンションをリフォームすると、次第に元気を取り戻した。しかもユリエさんのように床材を変えるだけでなく、なんとルンバが動きやすいように、部屋全体の間取りまでリフォームして変えていたのだ。 彼女らのように、ルンバに名前をつけて可愛がる、あるいは唯一無二の存在として愛着を抱く、そんな独身女性も決して少なくない。

彼女たちの多くは忙しく、ストレスをためながら仕事をこなし、疲れて帰ってきて愚痴を言う相手もいないのだろう。掃除する気力もない中、リビングのソファに体を沈めてふと部屋を見回すと、たまったホコリがあちこちに見える……。ぐったりする瞬間だ。

でも留守の間、あるいは就寝中や会社に行っている間にロボット掃除機が掃除をこなしてくれれば、その分帰宅後にストレスを感じずに済み、「だったら料理でも作ろう」「洗濯しようかな」と余裕が持てる。まさにユリエさんも、「ルンバを買ってから、平日に料理する頻度が上がった」と話していた。

彼女たち、おひとりウーマンがロボット掃除機に込める思いは、まるで「パートナー」。家事を「手伝う」のではなく「シェア」してくれる。私の辛い気持ちも、黙って聞いていてくれる。そんな理想の彼氏さながら、なのだろう。

私が合わせるんじゃない、家を私に合わせて欲しい

何かに優しく寄り添って欲しい。それはルンバだけでなく「住まい」についても同じ。最近は、そんなおひとりウーマンたちに「中古住宅」も売れている。

賃貸物件などに住んでいる男女に行った調査を見ても、持ち家を希望する人のうち「中古住宅を購入し、リノベーションして居住したい」と答えた女性は、6~7人に1人(15.1%)。新築でなく「中古のリノベーション」を選ぶ理由の、圧倒的トップを占めたのは、「自分の理想や好みを反映しやすい」から(50.0%)だった(Marketing ResearchCamp「住まいのリフォーム・リノベーションに関する調査」、17年)。

先のユリエさんが「ピーちゃん」のためにリノベーションをと選んだ依頼先は、札幌で住宅やリフォーム工事の設計・施工を行う、ジョンソンホームズ。

おひとりウーマンが家を買う際、年齢的に先々のローン返済を考えて「新築は厳しいから中古のリノベーションで」と判断するケースもあるだろう。だが、それだけではない。同社の谷本泰さんは、「すでに自分の生活スタイルが確立した女性にとって、自分が家に合わせるのではなく『自分に合わせてもらえる』点が大きなメリット」だと話す。

たとえば、同社が手掛けるマンションのリノベーション事業「M+」を以前利用した、シングル女性のA子さん。なんと靴を数百足も持っていて、「リフォームして、靴をズラリと並べられる広い土間を作りたい」と希望したそうだ。

また、趣味でピアノを弾く女性は防音室を、ダーツが趣味の女性はダーツ室をそれぞれオーダー。ほかにも、アクセサリー作りのための部屋や、ペットの猫のキャットウォーク、犬の通り道付きの部屋(各ドアに通り穴を開ける)など、おひとり様が希望するリノベーションは、実に多種多様だと谷本さん。

「札幌も都市部なので、40代でバリバリ働く女性層が多い。彼女たちはストレスにさらされている分、趣味をゆっくり楽しめ、自分を解放できる場所を求めている。ただ寝に帰る『ねぐら』ではなく、自分の気分が『アガる場所』が欲しいからこそ、思い通りに合わせてくれる中古のリノベーションを選ぶのではないでしょうか」

気分がアガる場所、まさに先のユリエさん(ルンバオーナー)も漏らしていた言葉だ。

14年前に拙著「男が知らない『おひとりさま』マーケット」を書いたとき、私はひとり暮らし女性が家に込める思いを、ホッと心を癒やせる「ホッとステーション」のようだと表現した。だが、おひとりウーマンの思いは、もっと深いこだわりや「自己マン(自己満足)」精神に満ちあふれている。誰に自慢するわけでもない、でもそこに帰れば「この空間こそが、私そのもの」だと実感できて、気分がアガる。たとえるなら「私の城」「一国一城の主」感覚だ。

先のジョンソンホームズも、事業部化して約5年間で250軒の中古マンションリノベーションを手掛けるが、オーナーの3分の1はひとり暮らし、うちほとんどが30~50代の独身女性で、おひとりウーマンはボリュームゾーンとのこと。

「ただ意外に、当初は『こういう生活を実現したいから、こんな空間を作りたい』とまで具体案を持っていない女性が多い」と谷本さん。

ゆえに同社では、専属の女性インテリアコーディネーターを配置。彼女たちのぼんやりした夢や方向性を元に、ほぼカウンセリング形式で、コーディネーターが共に理想の住まいをデザインしていく。ひと手間、ふた手間かかるが、「住むことで、自分がどうなりたいか」という夢を具現化していくので、彼女たちもおのずと前向きになっていくとか。谷本さんいわく「リノベーションし終わると、きれいになる女性が多い」そうだ。

牛窪恵
マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。同志社大学・創造経済研究センター「ビッグデータ解析研究会」部員。現在、立教大学大学院(MBA)在学。財務省財政制度等審議会専門委員、内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーターなどを務める。1968年東京生まれ。執筆や講演のほか、テレビ番組のコメンテーターも務める。マーケティング関連の著書多数。

[「『おひとりウーマン』」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー」(毎日新聞出版)を基に再構成]

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