2018/2/20

スポーツイノベーション

18年1月にはアリババ集団の電子決済サービス「アリペイ(支付宝)」で、顧客が自分の利用履歴を閲覧しただけで「個人情報を利用しても構わない」という規約に知らないうちに同意させられていたことが発覚。システムはすぐに変更されたが、アリババのプライバシー軽視の一端にすぎないとの見方もある。

アリババが江陵のオリンピックパークに設けたパビリオン
平昌五輪の会場周辺では、競技が終わるとバス停に長い行列ができた(2月10日、江陵市)

アリババはアリペイの決済データをもとに、個人の信用力を評価するシステムを運用している。中国の多くの利用者が自分の評価を高めるために、自ら積極的に個人情報を登録しているといわれる。中国のプライバシー意識は低く、日本を含む欧米諸国とは乖離(かいり)が大きい。

こうした懸念についてCMOの董氏は「アリババがクラウド事業を展開するうえで最も重視しているのは、(事業をする)国々のルールに従うこと。すでに全世界で17カ所のデータセンターがある」と説明する。日本でもソフトバンクとの合弁会社がデータセンターを分離して管理しているという。

アリババはもともと馬会長が99年、企業間取引のサイトとして立ち上げた企業だ。個人向けのネット通販や個人間売買に手を広げ、いまやアマゾンに並ぶ規模にまで成長した。次に狙っているのが膨大な顧客データを武器に金融、物流、旅行など幅広い分野を網羅するとともに、クラウドそのものを事業の柱に育てることだ。それは五輪で彼らが目指す姿と重なる。

世界で事業を拡大するうえで、最大のネックが「アリババ」という見知らぬ中国企業に対する不安感とすれば、五輪はそれを払拭するための格好の場になりうる。CMOの董氏はこう語った。「五輪では選手の記録を含めて、非常に重要なデータを扱う。その五輪の信頼を得て、我々がクラウドサービスを提供するということは、我々のサービスが非常に安全だということが証明されていると思う」

「中国の旅行客、数百万人を東京に送る」

アリババ集団CMO 董本洪氏
インタビューに答える董本洪CMO

――なぜアリババは五輪のTOPスポンサーになったのか。

「創業者の馬会長が常に『Small is beautiful(小さいことは美しい)』『Small is powerful(小さいものは力強い)』と言っているように、我々は創業以来、小さな企業を支えてきた。一方、五輪において(個々の)アスリートはみな平等で、小さな努力を積み重ねている。そうしたアスリートを支えるという意味で、五輪の考え方とマッチしていると思う」

「五輪をサポートすることは、グローバルなブランド力を高めることにつながる。現在は世界中に5億人のユーザーがいるが、これを近い将来で20億人に増やしたい」

――アリババのクラウド事業の強みは何か。

「世界で最も安く、コストパフォーマンスが良いことだ。五輪を開催する都市はどこも財務的に負担を感じている。毎回使うシステム、毎回使うものをクラウドにあげて、次に別の都市で開催するときにそれを使うことでコストを削減できる。交通の利便性や安全についても、クラウドでビッグデータを分析することで実現できる。観客の効率を上げることも可能だ」

――IOCとの契約期間には、平昌以降でも20年の東京、22年の北京、24年のパリ、26年のまだ開催都市が決まっていない冬季五輪、28年のロサンゼルスと5回の大会がある。それぞれどんな目標を設定しているのか。

「まず東京は、これまでの五輪のなかで最も革新的な大会になるだろう。アリババの技術をたくさん提供したいと思っていて、すでに組織委員会と話し合いを進めている。北京ではETシティーブレインを含めて、アリババが持っている技術のすべて、パビリオンで展示しているサービスすべてを実現させたい。その結果、実際にコストを下げて効率を高められることを、皆さんに感じてほしい。パリとロサンゼルスについても、平昌五輪が終わったら、すぐにそれぞれと協議を始める」

――東京大会について決まっていることは。

「五輪の組織委員会と話していることの1つは、アリババが何百万という旅行客を東京に送り込むことだ。アリババには旅行関連のプラットフォームがあって、中国人が海外に行くときに最も使われている。東京五輪は中国から日本に旅行に行くきっかけとして、一種の『爆発点』になると思っている」

「2つ目として、日本の優れたブランド、商品を中国に紹介する。いろいろな日本企業と話し合っているが、アリババのプラットフォームを使って中国に進出したいという話をたくさんいただいている。3つ目としては、アリババのクラウドサービスについても、日本企業が利用する話を進めている」

(オリパラ編集長 高橋圭介)