「任せる勇気、応える気概」が指針 性別は関係ない
東京海上日動火災保険常務執行役員 柴崎博子氏
管理職として活躍する女性が仕事やプライベート、働き方への思いを自らつづるコラム「女性管理職が語る」。これまで8人の女性管理職の方に登場してもらいました。その8人が交代で執筆を続けます。今回は東京海上日動火災保険常務執行役員の柴崎博子氏の2回目となります。
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私は2003年に新横浜支社長となりました。当社では初めての女性の支社長、マネジャーでした。プレッシャーはありました。それでも「自分に何ができるか」「何をするために自分が存在するのか」を考えるよう努めました。何事もあきらめない強い思いがあれば何とかなると信じ、自分のできることから取り掛かることにしました。
新横浜支社では、支社長としてマネジメントの重要さを学ぶことができました。
マネジメントでは、組織のビジョンをつくり、メンバーと共有する必要があります。さらに、数ある施策を遂行し目標を達成するには、一人ひとりに丁寧に伝え指導していくことと、そのための仕組みが求められます。
「三人寄れば文殊の知恵」ということわざをヒントに「文殊チーム」という仕組みを採り入れました。スピード感をもって取り組むべき施策を実行するため、また役割を明確にするため、3人のチームを支社内にいくつもつくったのです。
それぞれのチームがなすべき施策を主体的に考え、責任感を持って実行する。それによって支社の業績が伸びるようになり、メンバーが自信を持ってくれたと思います。
チームの活動に口を挟みたくなるときもありました。それでも、できるだけメンバーに任せるように努めました。メンバーも私の期待に応え、自立自走してチーム活動を推進できるようになりました。
やがて私のなかに「任せる勇気、応える気概」という言葉が生まれました。その意味は「マネジャーは部下に勇気を持って任せることが時として必要であり、部下はマネジャーの期待に応えるために気概をもって物事に取り組む必要がある」というものです。今でも私の指針の1つになっています。
「女性マネジャーの強みは何か」と聞かれることがあります。正直なところ、マネジメントに性別は関係なく、よいマネジメントかそうでないマネジメントかしかないと思っています。「女性ならでは」とか「きめ細かな」と言われますが、女性にも大ざっぱな人もいます。よく気がつく男性もいます。
メンバー一人ひとりが当たり前のことを当たり前にきちんとできるように仕事の品質を上げ、人間性を高め、結果として組織の品質を上げることが重要と考えています。組織の品質が上がれば、仕事の成果も自然と上がります。成果はそのバロメーターの1つなので、成果にはこだわっています。
マネジメントに関する自分の信条は「シンプルに思慮深く」です。
ものごとの本質を見極め、やるべきことは優先順位を考えて素早く対応する。一方、案件によっては、とことん考え抜き、十分に時間をかけるようにしています。
メンバーからいつ相談されても親身に応じられるように、どんなに多忙な時でも常に2割は心の余裕を持つように心がけています。
今、私が担当している九州・沖縄ブロックの社員数は1600人を超えています。全員が明るく元気に各人の役割、組織の役割を果たし、社会のお役に立つこと、それが私の責務です。
一般職で東京海上火災保険入社後、1988年に総合職へ転換。2012年執行役員福岡中央支店長、15年常務執行役員(現職)として、九州・沖縄エリアを担当。
[日経産業新聞2018年2月15日付]
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