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米の国民食、チリコンカン スーパーボウルにも不可欠

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NIKKEI STYLE

「米国人はスーパーボウルを観戦するとき、必ずチリコンカン(チリビーンズ)を食べる」

チリコンカンは料理名がスペイン語のチリコンカルネ」(chili con carne)に由来(carneは「肉」の意味)。言ってみれば肉辛味噌。これに豆などを加えて煮込み、ゆでたジャガイモやトルティーヤチップスなどにかけて食べる。一方、スーパーボウルは米国の国民的スポーツ、アメリカンフットボールの全米一を決める頂上決戦。2月上旬の日曜に開催される米国最大級のイベントだ。これらがなぜ、結びついているのか。

米国大使館農務部に照会すると、「2月5日に都内のレストランでスーパーボウルのパブリックビューイングがあるので、そこで米国大使館農産物貿易事務所(ATO)のモーガン・パーキンス所長とアレックス・ブランバーグ農務官が米国人とスーパーボウルとチリコンカンについて説明をします」ということになった。

訪ねたのは、東京・恵比寿のエンタテインメント・レストラン「アクト*スクエア」。着席約200人収容という客席を360度のマルチスクリーンが取り囲む。日本時間2月5日の夜にはすでに現地での試合は数時間前に終わっているので、観るのは録画だが、熱気は十分。

わざわざこのイベント会場まで出向いてくれたパーキンス所長は、まず、「アメリカンフットボールは米国で最も人気のあるスポーツです。そして、スーパーボウルは米国で最も人気のあるイベントです」と説明した。

ブランバーグ農務官も「普段スポーツに興味がない人も、スーパーボウルは観るものです」と続ける。

実は後で、今年の米国でのスーパーボウルの視聴者数が低下したという報が伝わってきたのだが、どっこい、平均で1億340万人が視聴した(Nielsen)というではないか。米国人口のざっと3割という割合もすごいが、実数として1億人以上の人々が一度に同じ番組を観ているということ自体がすさまじい。

「そして、このイベントでは食が重要な役割を担っています。スーパーボウルの試合当日を『スーパーボウルサンデー』と言いますが、この日は、年間で2番目に食品が消費される日なのです」とパーキンス所長。

1番目は11月の感謝祭だ。それに匹敵する食品消費が発生するのが「スーパーボウルサンデー」というわけだ。当日、米国の人々は家族や友人たちが集まって観戦パーティーを催す。そこで飲み、食べながらテレビに向かって声援を送る。そして、そのパーティーの食の主役がチリコンカンだという。

まずは、パーキンス所長に作り方を尋ねると、「Morgan's Chili recipe」と書かれた紙を差し出した。自身が愛するチリ(彼はこの料理をそう呼ぶ)のレシピを、わざわざ書いて来てくれたのだ。A4用紙両面という丁寧なものだ。そしてこう説明した。

「米国人なら誰でも、チリを小さい頃から食べています。チリはバーベキューと並んで米国の食文化を語る上ではずせないものですが、チリの場合、これは温かい料理ですから、寒くなってくると、米国人はチリの味を思い出すのです。いつでも食べられるものですが、特に冬に食べたくなる」

パーキンス所長は、チリコンカンを食べると子供時代のことを思い出すと語った。冬の寒い日に外で遊んで、家に帰って来るとチリコンカンが待っている。それを食べてほかほかとする。そんな温かな思い出とチリコンカンはセットであるという。

「そして、スーパーボウルの試合は、冬にあるわけです」

寒く、木々も草花も枯れて静まる冬の世界。しかし暖房の効いた家の中には家族と友達がいて、テレビでは米国で最も力のある選手たちが走り回り、歓声が起こっている。この対比の中心で、チリコンカンが湯気を立てている。これが「スーパーボウルサンデー」というものだったのだ。

人々が集まってチリコンカンを食べる機会はほかにもあるのだろうか。

「学校だとか地域のコミュニティーなどでも、何かパーティーやイベントがあれば、よく各家庭お手製のチリを持ち寄って食べるものです」とブランバーグ農務官。

そこでお互いの味自慢があるようだ。ただし、そこにまたチリコンカンの特徴が現れることになる。パーキンス所長が続ける。

「チリの料理コンテストも各地で行われます。そして、チリに何を入れるかについては、常に侃々諤々(かんかんがくがく)の論争が巻き起こるものです。典型的なレシピでは、牛挽き肉、キドニービーンズ(アカインゲン)、トマト、レッドペッパー、オニオン、そしてチリパウダーが入ります」

そして、先ほどのレシピを指しながら、自身のこだわりを説明した。

「たとえば、私のレシピでは肉は角切りの牛肩肉(cubed chuck steak)で、チリパウダーは3種類を使います」

さらに、豆の種類が違ったり、ほかのいろいろな豆であったり。また、テキサススタイルでは豆を入れないのが一般的だという。「チリコンカン」は「チリビーンズ」と呼ばれるにもかかわらず……。

一方、ベジタリアンは肉抜きで作る。料理名に「肉」という意味が入っているにもかかわらず、肉抜きとは……。では、この料理は実のところ何と呼ぶべきかとの問いに、パーキンス所長の答えは「チリだよ」だった。

また、チリコンカンは、食べる前にチーズをトッピングすることが多いが、これにも議論があるという。サワークリーム、タマネギのみじん切り、ハラペーニョをのせるべきという意見などなど。そして、チリコンカンにいろいろなものがトッピングされ得る一方、チリ自体もほかのいろいろな料理のトッピングに使われるという。たとえば、ホットドッグにチリを乗せるスタイルは定番の食べ方の一つだ。

だから、実際には、とても一つの名前の料理では分類できないような、多様なチリコンカンがあるわけだ。よく間違われるのが、名前からしてメキシコ料理ではないかということ。もちろん、メキシコにも同様の料理はあるが、米国人は皆、「チリはれっきとした米国料理」と口をそろえる。

チリコンカンが米国人にとってこれほど重要な食べ物とは知らなかったが、その料理の存在自体を知ったのはずいぶん昔のことだ。かつてNHKで米国の人気ドラマ「刑事コロンボ」を放映していたが、その主人公コロンボの好物がチリコンカンであった。

コロンボはいつも1人で行動し、ちょっと冴えない風貌が特徴だ。あのちょっと変わり者の好物ということで、何か変わった食べ物なのかと思い込んでいたが、今回、それが大きな誤解であったことが分かった。米国の国民食は、あの劇中でセレブとして描かれる犯人に対して、コロンボの方は視聴者にとって身近な存在であることを印象づける小道具であったわけだ。

また、彼がチリコンカンを食べるシーンでは、ほかの人がその様子を見て愉快ではなさそうだった印象が残ってるのだが、それも「私のチリの食べ方はそうじゃない」という、米国人らしい心の表現だったのかもしれない。

さて、例のレシピを元に、実際にチリコンカンを自宅でも作ってみようとチリパウダーを買いに行った。昨今、日本の食品店でも各国の調味料売り場ではチリというとタイ料理に使うスイートチリソースが目立つのだが、よく探してみるとチリパウダーはあった。ただ、見つけたそのパッケージを見て少し驚いた。ローストビーフの高級店「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」のロゴではないか。

パーキンス所長は「チリはカジュアルな食べ物」と説明していた。レストラン、しかもハリウッド・セレブも利用する高級店でチリというのは、また印象が変わる話で、コロンボも「こりゃ驚いた」とか言いそうだ。

しかし、同店のWebサイトを調べると、米国の店舗のランチメニューの中に、確かにチリコンカンがラインナップされていた。やはり、どんなシチュエーションであれ、これがないと困るという客が米国にはいるのだろう。まだまだ日本人には理解しきれないチリの世界があるような気がした。

自作初のチリコンカンができ上がる頃、パーキンス所長が「作るときには、ぜひ」と付け加えたことを思い出した。「仕込んでから翌日食べるようにしてください。ずっとおいしいから」。そして、温かい料理と言いながら、彼は翌日冷えたチリコンカンをつまみ食いするのも好きだと話していた。

結局、筆者もこれを試してみたのだが、確かに「一晩寝かせたカレーはうまいの法則」は、チリコンカンにも有効であった。それでチリコンカンが少し身近に感じられた。

(香雪社 齋藤訓之)

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