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脆弱な仮想通貨の保全管理 「倒産隔離」機能はなし 供託・信託の義務化、具体化はまだ

2018/2/24

仮想通貨交換業者コインチェック(東京・渋谷)の不正流出事件を受け、交換業者の安全管理体制や仮想通貨の利用者保護のルールに注目が集まっています。顧客の仮想通貨や預かり金はどのように管理されているのか、交換業者が倒産した場合に顧客の資産は守られるのか、現状を見てみましょう。

2017年に始まった改正資金決済法では、仮想通貨交換業者に仮想通貨と預かり金のそれぞれについて、顧客と自社の資産を明確に分けて管理するよう義務付けています。業者が顧客資産に手を付けて返金できない事態に陥るのを防ぐためです。違反した業者には罰則もあります。

多くの交換業者は顧客から預かった現金を銀行預金口座に、仮想通貨を「ブロックチェーン」と呼ばれる電子上の台帳に保管しています。帳簿上の数字と実際の残高を毎営業日確認し、不足が生じたら一定期間内に補填することが求められています。

■分別管理の監査結果、業者への報告のみ

分別管理などが適切に行われているかどうかについては監査が義務付けられています。ただ実際には、「業者と監査法人の間であらかじめ合意した手続きを実施する」(新日本監査法人)という水準で、結果は業者に報告するだけにとどまっています。

では、交換業者が資金不足などを理由に破綻した場合、顧客の仮想通貨や現金はどうなるのでしょうか。実は、分別管理されているからといって顧客の元に資産が戻ってくるという保証はありません。

フィンテックの法規制に詳しい有吉尚哉弁護士は「従業員の賃金や他の優先債権などへの弁済が先となり、一般の債権者である投資家への返済額は一部となる可能性がある」と指摘します。仮想通貨は相場変動が激しく、倒産時に手元に戻る額はかなり少なくなる可能性もあります。

これは一般的な金融商品と大きく異なる点です。例えば株式は証券保管振替機構、預金は預金保険機構によって顧客財産を守る仕組みがあります。外国為替証拠金(FX)取引では10年から、業者に対して証拠金などの顧客資産を信託保全するよう義務付けており、FX業者が破綻しても顧客資産は守られます。

仮想通貨もFX取引と同様に供託・信託を義務化すべきだという意見はありますが、法的な問題からまだ具体化していません。ただ、三菱UFJ信託銀行が4月から、仮想通貨を信託財産として預かるサービスを始める予定です。

■安全管理体制の整備、喫緊の課題

もっとも、今回のコインチェックの問題で改めて露呈したように、仮想通貨の最大のリスクはハッキングなどによる不正流出です。仮想通貨の法律問題に詳しい猿倉健司弁護士は「信託方式も含め、顧客資産の安全管理体制の整備は喫緊の課題」と話します。

日銀の黒田東彦総裁は13日、仮想通貨を「投機的な投資の対象になっている」と指摘し、「仮想通貨(クリプトカレンシー)ではなく、仮想資産(クリプトアセット)という言い方に変えるべきだともいわれている」と発言しました。仮想通貨取引をする人の「資産」を守る仕組みは、他の金融商品に比べて脆弱な状態にあることを十分に認識しておく必要があります。

[日本経済新聞朝刊2018年2月17日付]

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