AIで最高の医療を 東大卒で救急医に、そして起業

「ITを活用して医療を変えようよ」。豊田氏は脳外科医として中核病院に勤務。その頃は当直に明け暮れていた。医師不足が深刻化するなか、最前線の医師はいずれも多忙を極めている。だが、あらゆる患者に、最適な医療サービスが提供できてはいない。それで豊田氏はメドレーの経営に参加した。

医療ベンチャーへ 週末ドクターも

東京都内の病院では超多忙な日々を過ごした=沖山氏提供

デジタル技術を使って医療現場を効率化したいという思いに、沖山氏も共感した。メドレーは医師を集めて、オンライン医療事典「MEDLEY」という医療メディアを立ち上げた。1400以上の病気情報のほか、約3万点の医薬品や約16万件の医療機関情報を集約。約500人の医師とのネットワークを構築し、医療情報を日々更新する事業をスタートさせた。

沖山氏は、「ネット上には医療関連の情報があふれかえっている。しかし、すべてが正確なデータとは限らない。患者側は正しい情報を迅速に収集できれば、間違った診療科を受診して、結局たらい回しされたり、病気だと勘違いして、不必要な不安に駆られたりすることも少なくなる」という。

メドレーに入社したが、すぐに白衣を脱いだわけではない。会社の業務はネットワーク上でも可能だ。大型船に乗り、数カ月間を船医として太平洋上で過ごした。「実は、今もフリーランスの医師をやっています。先日の週末も救急医として勤務しました。僻地の医師不足は明らかで、北海道から沖縄まで、呼ばれた先で短期の救急医をやっています」という。いわゆる「週末ドクター」。救急医のため、地方の病院や診療所からは引っ張りだこだ。

AIで最高のドクターの技を再現

都会で救急医をやると息つく暇もない。しかし、離島など地方に行くと、ふと考える時間が生まれる。「もっと広く、深く、最高の医療をすべての患者に等しく提供するにはどうしたらいいんだ」。沖山氏は海や山を見ながら自問した。

「やはりデジタルだなと。たとえばAIを使えば、匠の技を持つ最高のドクターの五感を、その医師がいない場所でも、検査や診断支援に活用できる。古き良きドクターの中には患者さんの顔色から異変を見逃さない人や、声色の変化から診断名まで判断がつけられる人もいます。この熟練医師の目や耳をAIで再現すれば、診断の精度が上がる。そんなシステムを一つずつ開発したらいいんじゃないかと」。確かに心臓の名医のなかには、聴診器で音を聞くだけで、心臓の状態が手に取るように分かる人もいる。しかし、名医になるには多くの患者を診る必要があり、長い臨床の時間がかかる。外科医は手術の症例数で腕を上げる。

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