日経トレンディ

「神授業」というコピーを2017年春からアピール
17年9月には30万人に

料金がネックなのか、ネットで勉強をすることがネックなのか。さまざまな議論を経て出した結論は、「月額5000円は高過ぎる」。塾や予備校の月謝と比べれば安くても、オンライン動画サービスの利用料金としてはどうなのか。Huluやネットフリックスは10ドル程度だ。ウェブにはウェブのルールがあり、相場があるのではないか。そう考えて料金を見直し、全講座見放題で月額980円まで引き下げたのだ。

当然利幅は縮む。だが、それによって利用者増が見込めるし、当社(リクルート)にはBtoBの広告ビジネスなどにつなげるノウハウもある。事業として成立させることはできそうだった。

値下げが思わぬ需要を喚起

料金を一気に下げたことで、会員数はぐっと上昇し始める。と、同時に、予想していなかったことが起きた。いくつもの高校から、「学校単位で導入したい」という引き合いが相次いだのだ。月額980円は学校教育でも利用可能な料金だったのだろう。

多くは、偏差値でいえば中位以下。進路が大学一辺倒でなく専門学校、就職、アルバイトなどまで分散する、いわゆる「進路多様校」だ。聞けば先生方の悩みは、誰に向けてどんなレベルの授業をすればよいのか絞れない点だという。スタディサプリなら、中学時点でつまずいている生徒には中学校まで戻った授業を、大学進学を希望する生徒には先取りした授業を提供できる。効率的に個別対応を可能にする点で、まさに多様校が必要としていたサービスだったのだ。

それまでスタディサプリのユーザー層として想定してきたのは、自分で勉強して大学入試センター試験を受ける、受験生全体から見れば上位の50万~60万人である。高校経由でユーザーになる層はこれとは重ならず、ターゲット層の拡大によって会員数は急上昇した。その後、全国の教育委員会や自治体からの採用も増えた。加えて、受験生向けの内容であるにもかかわらず、社会人の利用者も増えている。大人の学び直し、大学院受験、あるいは、我が子に勉強を教える、といったニーズに、スタディサプリがマッチしているということだろう。

担当コーチが付く「合格特訓プラン」
コーチは東京大学、一橋大学、東京工業大学、早稲田大学、慶応義塾大学の現役学生で、チャットで質問や相談ができる

コーチがモチベーション維持

好調の理由は低料金もさることながら、学習コンテンツとしての質の高さは大きいと自負している。前述のように講師はトップクラスの実力者ぞろい。そんな講師の授業に対して、僕らはユーザーのログを基にフィードバックを行う。例えば、授業のある時点でユーザーが大挙して離脱しているとしたら、その理由は何か。講師が背中を向けて板書している、「考えてごらん」と空白の時間をつくってしまっている……。定量的なデータを基に理由を探り、講師とともに改善案を検討して、動画の再編集や撮り直しを行う。こうして磨き上げたコンテンツの蓄積こそが、スタディサプリの強みだ。

冬期講習や夏期講習では、人気講師の授業を生放送。チャットに質問を書き込むと講師が生放送で解説する。1講座4980円(税別)

サービスの幅は今後も広がる。オンライン学習サービスの課題である「モチベーション維持の難しさ」。これを解決するために17年3月に開始したのが、一人一人に担当コーチが付く「合格特訓プラン」(月額9800円・税別)だ。コーチは難関大学の学生で、問題の解き方から、勉強の仕方、生活上の悩みまで、チャットで相談し放題になる。利用者の評価は非常に高く、成績も一般会員と比べて伸びている。コーチは社会人向けの英語コースでも導入した。他にもライブチャット付き生配信で行う夏期講習や冬期講習も別料金で行っている。

海外進出にも力を入れる。日本同様に受験戦争のあるアジアにはフィットしやすいサービスだ。最高の学びを世界の果てまで届けていきたい。

(ライター 平林理恵)

[日経トレンディ2018年3月号の記事を再構成]

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