今月のマネーハックのテーマは「金融商品のトラブルを回避する方法」です。今週は怪しい金融商品が必ずうたう、定番のフレーズを検証してみます。
「安全」「確実」「高利回り」という3つのワードの組み合わせは、怪しい金融商品にほぼ確実につくキャッチフレーズといってもいいでしょう。
この3つのワードからなるキャッチフレーズは強力です。まず、安全確実で元本割れがないことを示唆します。私たちにとって最も嫌な元本割れがないことはとても魅力的です。
しかも、そのうえに利回りが高いとすればこれ以上の条件はないように思えます。商品のパンフレットを見ていると、何やら金融工学の技術が生かされているとか、将来の有望性が確実視されているとか、いろんな美辞麗句が躍っており、だんだんそうかもしれないという気がしてきます。
しかし、この3つが出てくるフレーズを聞いたら、かなり警戒心を強めてください。基本的には断るくらいの感覚が必要です。
リスクとリターンにはトレードオフの関係
金融商品の原則はいくつかありますが、「リスクとリターンのトレードオフの関係」は初心者ほど知っておくべきだと思います。
簡単にいえば、あなたがもし、リスクを低く抑えたいなら、リターンは低いものしか得られないということです。逆に高いリターンを得たいなら、高いリスクを取る必要があります。
言い換えれば、「ローリスク・ハイリターン」の商品はない、ということです。リスクが低ければ元本割れしないわけではありませんが、投資初心者には「都合のよいおいしい話はない」という意味で理解してほしいキーワードです。
ことわざでは「虎穴に入らずんば虎子を得ず」といいます。安全確実と高利回りは両立し得ないものなのです。
市場原理を考えても安全確実と高利回りは同時に成立しません。仮に安全で確実なものがあって高利回りであったとしたら、その商品の価格は高くなり、結果として低利回りになるからです。
例えば、100万円の価格の金融商品が安全確実に1年後110万円になるとしたら、これはとても有利な条件です。誰もがほしがります。じきに「103万円で買ってもいい」とか「105万円で買ってもいい」というような人が出てきます。
結果としてその商品は値上がりし、利回りは下がってしまうわけです。安全確実な金融商品(例えば、定期預金や個人向け国債)の利回りと大差なくなれば、最終的には安全で確実だが低利回りということになります。債券が代表例です。
本当に安全で高利回りなら他人に売るはずがない
それでもなお、安全確実と高利回りの両立を信じて、詐欺的な金融商品にだまされる人は後を絶ちません。そうならないためにはどうしたらいいのでしょうか?
一つの手法を提案しましょう。セールスマンに問いかけることです。「なぜ、その商品を自分で買わないのですか」と。
それほどまでに有利で確実ならば、自分でそれを買えばいいわけですし、家族にも勧めたほうがいいはずです。あるいは一般人ではなく、1000万円でも5000万円でも出してくれるお金持ちに先に営業したほうが楽なはずです。そうしない理由をセールスマンに尋ねてみてください。相手は言葉に窮するはずです。
一般人のあなたに、戸別訪問や電話営業をかけてきた時点で、営業のコストパフォーマンスは極めて悪いはずです。そう考えれば「適切に疑う」視線が育ってきます。
ところで、過去の実績が安全確実で高利回りだったからといって、将来もそうなるという保証にはならないので、その点にも注意しましょう。過去の好成績は偶然かもしれないし、悪質な業者の場合は実態のない高利回りを演出するために、自転車操業をしている可能性があるからです。
売り手はお金の素人を見分けようとしている
新規に受け入れた資金を、過去の契約者への配当に回すことで、あたかも実績が存在しているようなウソをつくのが悪質な業者の典型的な手口です。過去にいくつかあったポンジ・スキームによる投資詐欺案件はほとんどがこのパターンで破綻を迎えています。
売り手はウソだと分かったうえで、あなたに安全確実で高利回りと語りかけているのです。それはお金の素人を見分ける踏み絵みたいなものです。この段階で食いついてきた人は明らかなカモと映ります。安全確実で高利回り、といったセールストークに絶対にだまされないようにしてください。
