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私のモノ語り

染谷将太 中国の映画撮影で驚いたこと、役立ったモノ

2018/2/23

「撮影は最長12時間、週1回は絶対に休みがあって、労働環境がしっかりしていました。

撮影は1シーンに2~3日はかけていて、新しいシーンに取りかかる朝は、メインスタッフとキャストを集めて、円になって話し合いをするんです。そこで監督がシーンの説明をしたり、『ここは、こういうふうに演じたらどうだろう』とみんなでディスカッションしたりする。その場で意見を求められることで、自分のなかで考えがまとまることもありました。

本番が始まると、カメラを回して演じては、またみんなでモニターの前に集まって、話し合いが始まる。1カットずつ細部にまでこだわっていて、1枚の絵画を作るような感覚といいますか……。普通はそんなに時間をかけられないので、本当に貴重な経験でした。

一日の撮影が終わると、監督がよく食事会を開いてくださいました。料理には、蛇が出てきたり、カエルが出てきたり……いやあ、楽しかったです(笑)。

そしてお酒は、白酒(バイチュウ)という強いお酒を、お互いをたたえ合って乾杯しながら、ガンガン一気飲みをするんですよ。初めて食事会に行った時は、乗り越えられるかな、と不安になりました(笑)」

完成した『空海』は、中国では中国語版、日本では日本語吹替版で公開される。染谷さんは中国語で演じた空海に、もう一度日本語の吹き替えを行った。

「自分が一度演じた役に対して吹き替えるという作業が、すごく難しかったです。中国語と日本語では気持ちの乗り方が違うので、撮影の時の気持ちに戻って演じると、うまく吹き替えができないんですよ。なので、日本語版には、また新たな空海を作るような気持ちで挑みました。

完成版を見た時は、夢みたいでしたね。けんらん豪華な夢の世界に、自分が一部としている感じ。ファンタジックなジェットコースタームービーになっていると思いますので、みなさんにもぜひ、ファンタジーの中に浸って、楽しんでもらえたらうれしいです」

一番大きな壁は言語だったという。「セリフは中国語で、現場で飛び交う言葉も中国語。発音も文法も違うので最初は苦労しましたが、向こうで過ごすなかで徐々に慣れて、簡単な指示であれば聞き取れるようになりました」

■写真を撮ることで、仕事に必要な絵心を養う

趣味は写真で、雑誌に写真連載も行ってきた染谷さん。愛用のカメラは、富士フイルムの「NATURA CLASSICA」。広角ズームレンズとフラッシュを搭載したコンパクトフィルムカメラだ。

「10代の頃にカメラ屋に行ったら、『こんな写真が撮れます』っていうサンプルの写真と一緒に置いてあって。それを見て、すてきだなあと思って買いました。

NATURAの魅力は、独特の雰囲気の、味のある写真が撮れること。小さいのでポケットに入れて持ち歩けて、フルオートで簡単に撮れるところも良いです。フィルムカメラということで、現像して仕上がるまで、どんな写真が撮れているかわからないところも好きですね。昔は、それが当たり前だったじゃないですか。でも今はデジタルが主流で、それが当たり前じゃない。むしろ醍醐味みたいになっているのも、面白いなあと思います。

僕が撮るのは、町の風景やモノが多いです。モノは、写真で切り取るからこそ美しく見えるものが多いですね。町中のゴミでも、切り取ることで作品になるっていうのが面白い。

写真を撮ることは、仕事にも生きていると思います。絵心は、映画の仕事に欠かせない大切なもの。それを養うことにつながっているんじゃないかと思っています」

フィルムカメラの醍醐味は「現像して仕上がるまで、どんな写真が撮れているかわからないところ」だという

NATURA CLASSICAは、現在は生産中止。「ネットで見るとどんどん相場が上がっていて。ストックを2台持っているんですけど、もう1台買っておこうかな」と笑う。

「NATURAは中国ロケにも持って行ったんですけど、向こうでは全然、撮らなかったです。余裕がなかったのか、写真を撮ろうという方向に、気持ちが向かなかった。

息抜きのためにプレステも持って行ったんですけど、それもほとんど使わなかったですね。週1日の休みは中国語のセリフの準備に追われていたので、部屋にこもって、ずっと練習してました。

そんな生活で良い気分転換をさせてくれたのは、BOSE(ボーズ)の小さい、防水機能付きのBluetoothスピーカーでした。それは『空海』の宣伝チームの方にいただいたものなんですよ。今回の映画にかけて、BOSEということで(笑)。

今でも地方ロケとかに持っていって、愛用しています」

「撮影中、唯一娯楽として行ったのは映画館。ちょうど中国で『寄生獣』が公開されていて、観客と一緒に見たんです。驚いたら『わーっ!』と言うし、『何だ、あれ!』とか声をあげる。リアクションがすごくて、面白かった」
染谷将太
1992年生まれ、東京都出身。2001年、9歳の時に映画デビュー。09年、映画『パンドラの匣』で長編映画初主演。11年には『ヒミズ』でベネチア国際映画祭の新人俳優賞を受賞。主な出演映画に『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』(14年)、『さよなら歌舞伎町』(15年)、『海賊とよばれた男』(16年)、『3月のライオン 前編/後編』(17年)など。ドラマに『みんな!エスパーだよ!』(13年)、『MOZU Season1』(14年)などがある。
(C)2017 New Classics Media,Kadokawa Corporation,Emperor Motion Pictures,Shengkai Film

『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』

唐の長安で、権力者たちが謎の死を遂げる怪事件が発生。遣唐使船で唐に渡っていた若き僧侶・空海は、詩人の白楽天(のちの白居易)とともに謎の解明に当たる。そこで浮かび上がったのは、約50年前に唐に渡っていた阿倍仲麻呂と、絶世の美女・楊貴妃の存在。空海が最後にたどり着いた真実とは…。監督・チェン・カイコー 原作・夢枕獏(『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』角川文庫/徳間文庫刊) 出演・染谷将太、ホアン・シュアン、チャン・ロンロン、火野正平、松坂慶子、阿部寛 2月24日(土)全国ロードショー

(文 泊貴洋、写真 藤本和史)

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