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美の追究、女優も魅了 「審美眼」が広げた交友の輪 サンモトヤマ創業者「長さん」の教え(下)

2018/2/20

1959年、パリのディオールを訪れた茂登山さん。欧州の美術館やブランド店などをくまなく見て回った

セレクトショップの先駆け、サンモトヤマ本店(東京・銀座)を欧州の一流品とともに彩ったのは、政財界人や文化人といった一流の顧客だった。無類の人好きだった創業者の「長さん」こと、茂登山長市郎さん(2017年12月15日没、96歳)。交友の輪は広く、女優の真野響子さんや東京・新橋の日本料理店「京味」の西健一郎さんも、茂登山さんの審美眼や仕事に対する姿勢に、大いに影響を受けた。

前回掲載「三越伊勢丹の前社長が学んだ『元祖セレクトショップ』」もあわせてお読みください。




「そんな日本人がいるなんて。とにかく衝撃でした」
女優、真野響子さん

「銀座に行くたび、茂登山さんの社長室を訪ねるのが何よりの楽しみでした」と語る女優の真野響子さん

「イタリアのフィレンツェに取材に行きませんか」。1980年の年末、真野響子さんは自身が案内役を務めた美術番組のプロデューサーからこう持ちかけられた。

テーマは、フィレンツェのシンボルともいうべきサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(ドゥオモ)にある、サン・ジョヴァンニ洗礼堂の東側扉、「天国への扉」。ギベルティ作のルネサンス期の傑作だ。ドゥオモの付属博物館に収納されたオリジナルに代わるレプリカを、日本人が製作・寄贈するという内容だった。

■ビジネスの恩返しとして文化財保護

その人こそが茂登山さんだった。「そんなことをする日本人がいるなんて。とにかく衝撃でした」。茂登山さんにとってフィレンツェは、ブランドビジネスで長年、お世話になった土地。その恩返しとして私費を投じ、大切な文化財の保護に一役買って出たのだ。「酸性雨にさらされてロダンの彫刻などが傷みはじめていると問題になった時でした」。真野さんは3回ほど現地でレプリカの製作工程や美術館、メディチ家を取材した。

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