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三越伊勢丹の前社長が学んだ「元祖セレクトショップ」 サンモトヤマ創業者「長さん」の教え(上)

2018/2/19

前三越伊勢丹ホールディングス社長の大西洋さん
茂登山長市郎さんはたぐいまれな審美眼で生涯、美しいものを探し続けた

戦後日本に数々の欧州ブランドをいち早く紹介し、セレクトショップの先駆けでもあったサンモトヤマ(東京・銀座)。創業者の「長さん」こと、茂登山長市郎さんが2017年12月15日、96歳でこの世を去った。80歳を過ぎても世界中を飛び回り、一流品を追い求めた商人魂。粋で偉ぶらない人柄や、価値を目利きする力に引かれ、学んだ人は数多い。そんな「長さんの教え」をゆかりの人に聞いてみた。一人目は前三越伊勢丹ホールディングス社長の大西洋さん。

後編「美の追究、女優も魅了 『審美眼』が広げた交友の輪 」もあわせてお読みください。




茂登山さんが亡くなる約1カ月前の11月17日。東京・銀座の並木通りにある本店が、3年間の改装工事を経て営業を再開した。当時、会長の茂登山さんは自宅療養中。新店の写真を目にして、社員に電話で「うれしい。ありがとな」と何度も口にした。残念ながら、生前に足を運ぶことはかなわなかった。

2017年11月、茂登山さんが心待ちにしていた、銀座の本店が改装オープンした

この本店こそ、戦後の高度成長期を迎えた日本に欧州ファッション文化を伝える最先端の拠点であった。日比谷から銀座に移転・開業したのは東京五輪が開かれた1964年。きらびやかで美しい調度品を配したフロアに、革製品のグッチ、エルメス、ロエベ、時計のパテックフィリップ、ピアジェ、テーブルウエアのバカラ、ラリックと、一流ブランドの品々が並んだ。その豪華な売り場は、豊かさを渇望する日本人の憧れの空間であり、多くの政財界人や文化人を魅了した。

1964年に開店した東京・銀座のサンモトヤマ本店はグッチやエルメスが同一フロアに並んだ「編集型」ショップだった(写真は当時)

■売り場に「編集」を持ち込む

「売り場に『編集』という概念を持ち込んだのは、茂登山さんが初めてでしょう」。大西さんはこう語る。店の運営者が描く売り場デザインに従って、様々なブランドの品が一つのフロアに混在する。それは、今でいうセレクトショップそのものだ。「各ブランドが、独自デザインの売り場をそれぞれ設けて商売している今では、とても考えられません」

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