中小企業の業界再編 仕掛け人の著書、八重洲で話題に八重洲ブックセンター本店

ビジネス書の売れ筋を集めた1階の平台にも2列で平積みする(八重洲ブックセンター本店)
ビジネス書の売れ筋を集めた1階の平台にも2列で平積みする(八重洲ブックセンター本店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は、定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。仮想通貨が話題になっているためか、ここでもマネー関連の本の売れ行きがいい。その一方で、年度替わりを控えて先読み本の売れ行きも伸びてきている。そんな中、中堅・中小企業の経営層に向けて、今後10年の長期戦略として業界再編を呼びかける本が注目を集めている。

著者は日本M&Aセンターの業界再編部長

その本は渡部恒郎『業界メガ再編で変わる10年後の日本』(東洋経済新報社)。一見産業動向に着目した未来予測本のようなタイトルだが、副題に「中堅・中小企業M&Aが再編の主役だ」とあって、こちらのほうに本書の狙いはよく出ている。著者の渡部氏は中小企業のM&Aを仲介する日本M&Aセンターの業界再編部長。2006年から同社で様々なM&A案件を手がけ、その実績をもとに16年から業界再編部という事業部門を立ち上げたこの分野のエキスパートだ。まさに業界再編の仕掛け人その人が、見取り図を示しながら、そこに加わってくるべき中堅・中小企業の経営層に向けて、M&Aの有用性を訴えている本なのだ。

著者はまず、この先10年をメガ業界再編の時代と位置づける。少子高齢化やIT化の進展など、背景の分析はよくいわれていることだが、中堅・中小企業にとっても他人事ではないという視点を随所に織り込んでいるのが読みどころになる。全体を俯瞰(ふかん)した1~2章に続いて、第3章では具体的に業界再編が待ったなしになっている業界を見ていく。そこで取り上げている業界は、食品、IT、ファシリティマネジメント、医療、介護、調剤薬局、会計事務所の7つ。いずれも中小企業がひしめき合っている業界で、成長期のところもあれば、衰退期を迎えている業界もある。さらに事業承継問題を抱えている企業も数多い。それらの業界で「志を持って業界を切り開いている」経営者へのインタビューと、業界再編部の担当者による業界動向解説という構成で、再編への見取り図が示される。雑誌の特集のようなつくりで、メガ業界再編の様々な側面がわかる編集だ。

業界再編とは新しいビジネスへの挑戦

「業界再編とは新しいビジネスへの挑戦である」「もう一度起業するような、ダイナミックな変革を企業にもたらす」――。M&Aや業界再編を語る著者の言葉からは熱い思いがほとばしる。「この辺りは中堅・中小企業や、企業向けのビジネスを手がけている会社も多い。そうした企業の悩めるビジネスマンや経営層の人に響いたようだ」と、副店長の木内恒人さんは話す。年末に入荷した後、一度ランキング入り狙いのまとめ買いがあって、売れ筋本として店頭の露出が増えたところ、売れ行きに火がついたのだと言う。

『お金2.0』、八重洲でも1位に

それでは、先週のベスト5を見ていこう。

(1)お金2.0佐藤航陽著(幻冬舎)
(2)どんな会社でも結果を出せる!最強の「仕事の型」村井庸介著(クロスメディア・パブリッシング)
(3)企業1年目のお金の教科書今井孝著(かんき出版)
(4)「言葉にできる」は武器になる。 梅田悟司著(日本経済新聞出版社)
(5)業界メガ再編で変わる10年後の日本渡部恒郎著(東洋経済新報社)

(八重洲ブックセンター本店、2018年2月4~10日)

1位は、このところ毎週のように登場している新しい経済のルールと生き方を説いた本。2位は野村総研やリクルート、グリーなどで豊富なビジネス経験を積んできた著者が自身の仕事の型を伝授した本。3位は起業セミナーの講師による本。2、3位ともに著者や版元によるまとめ買いでランクインした。4位は、1月に訪れたときに続いてのランクイン。同書店独自の販促策もあり、1年半にわたってランキング上位に顔を出すロングセラーだ。ここで紹介した業界再編本は5位。この表にはないが、『東京大改造マップ 2018―20XX』(日経BP社)、『会社四季報業界地図 2018年版』(東洋経済新報社)も9、10位に入り、予測本の勢いがいい。

(水柿武志)

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