年金・老後

定年楽園への扉

「定年料理男子」はいいけれど 大切なのは妻の理解 経済コラムニスト 大江英樹

2018/2/22

定年後の夫にとって料理は「たまにやる趣味」。写真はイメージ=123RF

最近、料理を趣味とする男性、いわゆる「料理男子」が増えてきているようです。実際、私の周りで定年後に自分で料理を始めた人はたくさんいますし、私自身も時々包丁を握ることがあります。

とりわけ、定年後のシニアの男性が趣味として料理をするのは多くのメリットがあります。「作る楽しみを味わう」「脳の活性化にも役立つ」「奥様にも感謝される」という一石三鳥にもなるということは、以前にこのコラムでも書いたことがありました(詳しくは2016年2月4日付「一石三鳥、『定年料理男子』のススメ」を参照)。

しかしながら、この「定年料理男子」が陥りがちなことがあります。それは「材料費にお金をかけすぎる」「作った後の片付けをしない」ことです。

■料理は夫にとってはあくまで趣味

なぜ、そういうことになるのか? 理由は明快です。あくまで料理は夫にとってはたまにやる趣味だからです。さらにいえば、趣味の料理は創作活動ですから、当然最高のものを作りたいと思います。材料は吟味し、お金に糸目をつけずに良い物を買って、腕を振るいたいという気持ちになります。また、創作活動なので作り終えると満足し、その後の片付けは眼中にありません。

一方、奥様にとって料理はあくまでも家事の一つですから、毎日の仕事です。いかに効率よくかつコストパフォーマンスを高めるかが最大の関心事です。もちろん、後片付けも業務の一部ですから、そこまでしないと業務が終了したことにはならないのです。

これに気づかないと結果として、妻はあまりいい顔をしなくなります。この現象は決して経済学でいう「限界効用逓減の法則」(最初は満足度が高くても、回を重ねるにつれてあまり満足しなくなるといった内容)ではありません。

実は、妻は夫のそんな行動を最初から苦々しく感じている場合が多いのです。妻は内心、こう思っているでしょう。「これだから困っちゃうのよね。食費の枠もあるんだし、お金をかけて作りゃいいってもんじゃないのよ。それに後片付けするのは私なんだから」

ところが、夫からすれば「料理を作ってやったんだから感謝してくれてもいいじゃないか」という気持ちになるでしょう。これではすれ違うのは当然です。

■家事を巡り妻と感情のすれ違い

そしてこの感情のすれ違いは、料理だけではなく、ほかの多くの家事においても生じてきます。「洗濯物をたたんで片付けてやった」(夫)のに、「いつもと違う場所に勝手に入れられた」(妻)といった具合です。夫にしてみれば、妻の労力を減らしてやろうと思ったことが、むしろ妻にとっては手間が増えてしまうことになりかねないのです。

でもこれらの場合、別に夫が悪いわけでもなければ妻が悪いわけでもありません。それぞれがよかれと思ってやったことが結果的にコミュニケーション不足で互いに不満を募らせることになってしまっているのです。

夫の立場からすると、「せっかく意欲を持って料理を作ろうとしているのだから妻にはもう少し温かい目で見守ってほしい」と考えます。一方、妻の立場からは「家事をするなら、最初に私に相談して」ということでしょう。

これは会社においても起こりがちなことです。実務をよく知らない上司が勝手に取引先とやり取りして物事を決めてしまい、後始末に苦労するという経験をした人もいるのではないでしょうか。「事前にひと言、相談してくれたらよかったのに」と思うはずです。妻も同じことを思っていると考えるべきです。

■コミュニケーションをおろそかにしない

こういう不幸をなくすためには、基本的に話し合うしかありません。夫は事前にやり方や注意点をあらかじめ妻に聞いておくべきですし、妻も自分のやり方と違っていたとしても目くじらを立てず、困ったことはさりげなく伝える気配りが大事です。

長年連れ添ってきたシニアの夫婦ではコミュニケーションがおろそかになりがちです。互いによかれと思ったことが反対の結果にならないよう、努力することが大切でしょう。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は3月8日付の予定です。
大江英樹
野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める『金持ち老後』入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/

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