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英国が孤独担当相 もっと深刻な日本、対策はあるの?

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NIKKEI STYLE

「あまりに多くの人にとって孤独は悲しい現実」――。英国のメイ首相は1月、孤独担当の大臣を設けると表明しました。多くの日本人には思いもよらない発想かもしれませんが、実は米国やアジア各国のメディアも「人ごとではない」と報じ、関心を呼んでいます。

人口約6500万人の英国では900万人以上が孤独を感じ、65歳以上のうち360万人が「テレビが主な友達」だという調査があります。孤独でいることは1日にたばこ15本を吸うのと同じくらい健康に悪いという研究もあり、メイ政権は対応に乗り出したのです。

米国でも元政府高官が2017年に米誌ハーバード・ビジネス・レビューに次のような論文を発表して話題を呼びました。「孤独は伝染する病。テクノロジーで最も人とつながっている時代なのに、孤独は1980年代の2倍になった。米国の大人の4割以上が孤独を感じている」

世界で孤独な人が増えている理由は大きく2つあります。一つは高齢化によって、1人で暮らす時間が長くなっていること。もう一つは、デジタル化が進み、人と人が直接触れあう機会が減っていることです。

日本も対岸の火事ではありません。経済協力開発機構(OECD)が21カ国を調べたところ、「友達や同僚と過ごす時間があまりない」と答えた男性の割合は日本がトップ。女性もメキシコに次ぐ2位と、世界で最も孤独な国の1つなのです。

その印象は強いようで、孤独担当相のニュースの際も、米誌ニューヨーカーは英国と同様に孤独な国として日本を挙げました。韓国の東亜日報も、前向きな孤独として日本の漫画「孤独のグルメ」を紹介しています。

先はもっと暗そうです。東北大学の相田潤・准教授らが日本人と英国人を10年間追跡調査したところ、日本人のほうが英国人よりも強く、家族とのつながりが寿命を延ばす要因になっていました。ところが最近は結婚しない人が増えています。「未婚者や非正規の人の増加で日本の孤独はより深刻になる」と相田准教授はみています。

孤独は心の問題にとどまりません。千葉大学の近藤克則教授は「人との関わりが少ないと、認知症や要介護認定率が上がることが疫学研究でわかっている」と話します。健康寿命全国一の山梨県に「無尽」という独特のコミュニティーがあることはその証明かもしれません。

孤独が健康をむしばみ、医療や介護費が増えれば社会で負担することになります。孤独な人をどう減らすか。みんなで考えることが避けられない時代になってきています。

孤独増加の背景や対策について、識者2人に話を聞きました。

近藤克則・千葉大学予防医学センター教授「人の能力を生かしながら交流を促せる仕組みが必要」

――英国の孤独担当相設立をどう受けとめましたか。

「健康への影響などエビデンスに基づいて明らかなことは、大変なことでもやる国なんだなと思いました。英国の医療現場では『Social prescribing(社会的な処方)』という動きが出てきています。『薬』ではなく『社会関係』(の改善策)を処方するという考え方です。孤独が健康に影響を及ぼすという認識が日本よりずっと浸透しているのです。孤独への対応は、厚生労働省など一つの省庁でできることではありません。人と人が交流しやすいまちづくりや教育など多領域で対応しなくてはならない。だから孤独担当相をつくるという省庁横断の対応は理にかなっています」

――なぜ現代人は孤独なのでしょうか。

「自由と引き換えに孤独になってしまいました。例えば結婚。昔は地域に世話を焼く人がいてほとんどの人が結婚しました。現代はそれがなくなり、自分でパートナーを選ぶ力や財力がある人にとっては自由な生き方ができるようになった半面、力のない人は生涯未婚で孤立してしまうようになりました。働き方も変わりました。非正規が増え、職場のつきあいが薄くなりました。高齢化も影響しています。高齢期が長くなると、生活の差が大きくなりやすくなります。貧しい人は財産がどんどん減っていきますし、子や孫がいない人は1人で生きる時間が長くなります」

――昔に戻ればいいのでしょうか。

「そうではありません。政治や宗教、老人クラブといった地縁や同質性を前提とした組織に参加したとしても、趣味やスポーツといった組織に参加するよりも健康への効果は低いことがわかっています。昔の組織は窮屈に感じて都会に出てくる人が増えたのですから、新しい形を考えていかなくてはいけないでしょう」

――新しい形とはどのようなものですか。

「これから増えるのは都市部の高齢者です。都市部には大企業で活躍した人なども多いので、そうした人の能力を生かしながら交流を促せる仕組みが必要です。千葉県松戸市と共同で実験をしたところ、マネジメントを任せたりすることで男性でも多くの人が参加してくれています。孤独な人をゼロにすることはできませんが、減らしていくことはできると思っています」

藤森克彦・みずほ情報総研主席研究員「家族以外の支え合いを強める場づくり必要」

――90年代に英国で4年研究されたご経験がありますね。

「私は90年代後半に英国にいましたが、その前の保守党政権の改革がもたらした功罪がともに現れている時期でした。80年代のサッチャー首相は社会保障の削減など『小さな政府』路線の改革を進めました。サッチャー首相は就労意欲が低いなど貧困者の姿勢を問題にし、『悔しかったらがんばりなさい』という考え方をとっていました。改革の結果、英国では所得格差が拡大し、『社会的排除』という問題が起こりました」

「貧しい人々は、単に経済的に貧しいだけでなく、低所得・スキル不足・無職の悪循環に陥っています。家族や地域が崩壊し、社会的に孤立している人も少なくありません。貧困と孤立が重なって、悔しくても自力で頑張れるような環境にはなかったのです。そこで90年代後半に労働党のブレア首相が、低所得者にスキルをつけるなど、社会的に支援する政策へとかじを切ります。しかし、リーマン・ショック以降、公的な支援は減る方向にありました。今、孤立担当相の動きが出てきているのは、こうした貧困と孤立が一層深刻になっていることがあるのかもしれません」

――日本の孤立の問題をどう見ていますか。

「孤立にはいろいろな要因があると思いますが、単身世帯が増加している中で、孤立が深刻化していくことを懸念しています。例えば、一人暮らしの高齢男性の6人に1人は、2週間に1回以下しか会話をしていないという調査もあります。一方、40~50代の単身世帯では、『頼れる人がいない』と感じている人が多いです。この年代は行政支援の対象になりにくい一方で、同居家族がいないことからいざというときの不安があるように思います。未婚の一人暮らしが増えているので、社会として孤立を防止することが必要だと思います」

――どうしたらいいでしょうか。

「日本は家族による支え合いが強い国だといわれています。家族はこれからも大切ですが、一人暮らしや未婚者が増える中では、家族以外の支え合いを強めていくことが重要だと思います。そのために必要なのは『場』づくりでしょう。地域の人々が交流できる場や、困りごとを持つ人が気軽に相談に来ることができる場も必要だと思います。地域の課題解決に向けたコミュニティービジネスの場があってもいいでしょう。こうした場を通じて、仲間や地域との関係性も生まれると思います。簡単なことではありませんが、NPO法人などでは、地域住民と一緒になってコミュニティを作るノウハウをもっているところもあります。そうしたところからノウハウを吸収し、人材を育てていく必要があります」

(福山絵里子)

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