孤独は心の問題にとどまりません。千葉大学の近藤克則教授は「人との関わりが少ないと、認知症や要介護認定率が上がることが疫学研究でわかっている」と話します。健康寿命全国一の山梨県に「無尽」という独特のコミュニティーがあることはその証明かもしれません。

孤独が健康をむしばみ、医療や介護費が増えれば社会で負担することになります。孤独な人をどう減らすか。みんなで考えることが避けられない時代になってきています。

孤独増加の背景や対策について、識者2人に話を聞きました。

近藤克則・千葉大学予防医学センター教授「人の能力を生かしながら交流を促せる仕組みが必要」

――英国の孤独担当相設立をどう受けとめましたか。

近藤克則・千葉大学予防医学センター教授

「健康への影響などエビデンスに基づいて明らかなことは、大変なことでもやる国なんだなと思いました。英国の医療現場では『Social prescribing(社会的な処方)』という動きが出てきています。『薬』ではなく『社会関係』(の改善策)を処方するという考え方です。孤独が健康に影響を及ぼすという認識が日本よりずっと浸透しているのです。孤独への対応は、厚生労働省など一つの省庁でできることではありません。人と人が交流しやすいまちづくりや教育など多領域で対応しなくてはならない。だから孤独担当相をつくるという省庁横断の対応は理にかなっています」

――なぜ現代人は孤独なのでしょうか。

「自由と引き換えに孤独になってしまいました。例えば結婚。昔は地域に世話を焼く人がいてほとんどの人が結婚しました。現代はそれがなくなり、自分でパートナーを選ぶ力や財力がある人にとっては自由な生き方ができるようになった半面、力のない人は生涯未婚で孤立してしまうようになりました。働き方も変わりました。非正規が増え、職場のつきあいが薄くなりました。高齢化も影響しています。高齢期が長くなると、生活の差が大きくなりやすくなります。貧しい人は財産がどんどん減っていきますし、子や孫がいない人は1人で生きる時間が長くなります」

――昔に戻ればいいのでしょうか。

「そうではありません。政治や宗教、老人クラブといった地縁や同質性を前提とした組織に参加したとしても、趣味やスポーツといった組織に参加するよりも健康への効果は低いことがわかっています。昔の組織は窮屈に感じて都会に出てくる人が増えたのですから、新しい形を考えていかなくてはいけないでしょう」

次のページ
藤森克彦・みずほ情報総研主席研究員「家族以外の支え
ビジネス書などの書評を紹介
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら