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ソフトバンク 親子上場に理解得られるか(安東泰志) ニューホライズンキャピタル会長

2018/2/19

ソフトバンクグループは携帯事業子会社の株式上場を目指している。写真は決算について説明する孫正義会長兼社長(2月7日午後、東京都港区)
「親子上場は、大株主である親会社と少数株主の間の利益が相反する恐れがある」

ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が2月7日の記者会見で、携帯事業を手掛ける子会社ソフトバンクの株式を上場させる方針を表明した。孫氏は東京証券取引所への上場時期については明言を避けたが、「できれば1年以内に行いたい」と述べた。保有株の約3割を売却して2兆程度の資金を調達するとみられる。

孫氏は資金の使途について「財務バランスの強化とグループのさらなる成長のために使う」と説明。現在は社債や銀行借り入れに頼っている資金調達の手段を広げることを目的の一つとした。

■携帯子会社上場は「親子上場」

では、SBGの株主はこうした動きを歓迎すべきなのだろうか。SBGは携帯事業子会社の上場後も、70%程度の株式を継続保有するという。いわゆる「親子上場」だ。親子上場の場合、大株主である親会社と少数株主の間の利益が相反する恐れがある。

東証が定めるコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の第1番目は以下のように記されている。

「上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである」

最近は親子上場を解消する動きが主流の中で、あえて親子上場を目指す理由をどう説明するのだろう。携帯事業子会社の大株主と少数株主に利益相反は起きないと言い切れるであろうか。

例えば、少数株主にしてみれば、親会社との取引よりも有利な取引機会があれば取締役会はそれを選択すべきということになるが、それは可能だろうか。むしろ、親会社を助けるために親会社に有利な取引条件に応諾してしまう恐れはないだろうか。

SBGはいまだ多額の有利子負債を抱えており、大きな利益を生んでいる携帯事業子会社からの資金還流に頼らざるを得ない。しかし、上場後の携帯事業子会社の少数株主からすれば、携帯事業で生まれた資金を配当などの形で親会社に吸い上げられることは利益にかなわないはずだ。

これこそが、コーポレートガバナンス・コードが指摘する少数株主保護の必要性である。

■投資ファンドでも利益相反の恐れ

SBGにはこのほかにも利益相反の可能性が存在する。子会社が運営する投資ファンド、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)である。SBGは財務諸表にSVFを連結した。四半期報告によると、SVFは2017年9月末現在で出資規模が約977億ドル(約10兆6000億円)に達し、その割合はSBGが325億ドル、サウジアラビアなど外部投資家が652億ドルとなっている。

SVFはSBGによる実質支配なので、SBGに連結するという意思決定自体は妥当なのだが、そうすると、ファンド運営をSBGの株主利益のためにしなければならなくなり、ファンドの投資家の利益には沿わない可能性がある。

SBGはサウジアラビアなど他の出資者に対して、その利益を極大化するという受託者責任(忠実義務・善管注意義務)を負っている。その一方で、SBGの取締役は自社の株主に対してその利益を極大化する善管注意義務を負っている。

ある投資案件があった場合、SBG本体で投資するのか、SVFで投資するのかはSBGの裁量に任されているのだが、優良な案件には本体で投資し、不確実な案件にはSVFで投資するということにならないのか。

■諸問題についての説明が必要

また、投資案件のエグジット(売却など)はSBGにとってどんなに不都合であっても、ファンドの投資家にとって最も有利な先に売却することを許容できるのか。ファンドの投資家をないがしろにすれば善管注意義務違反で訴訟の対象となり、自社の株主をないがしろにすれば株主代表訴訟の対象になる。典型的な利益相反の構図といえよう。

こうした状況はコーポレートガバナンス・コードが定める株主保護に適合しているのか。あえて親子上場を目指そうというのなら、これを機にSGBはこうした諸問題について改めて株主への説明責任を果たすべきだろう。東証や投資家の理解を得るハードルは極めて高いといわざるを得ない。

安東泰志
1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、88年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。2002年フェニックス・キャピタル(現ニューホライズンキャピタル)を創業。三菱自動車など約90社の再生案件を手掛ける。東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。

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