坂口健太郎さんの「適合力」に学ぶ 若手の役割とは

実際、綾瀬さんをはじめとする共演者は、映画『今夜、ロマンス劇場で』の公開記念のテレビ番組で「坂口さんを色にたとえるならば何色か?」という質問に対し、一斉に「白」と答えていました。

その印象は共通するようで、映画『君と100回目の恋』(17年)のプロデューサー・井手陽子氏はインタビュー記事で坂口さんのことを「純白というか、どんな色にでも染まれる純真さを持っている」と評していました。

何色でも染まれる強み

それは「塩顔イケメン」と評される外見と同時に、強い自己主張をせずに周囲に溶け込みつつ、しなやかに演じきってしまう姿が、何色にも染まる「白」という印象につながるように思います。

そして、共演者やスタッフが認めるこの坂口さんの何色にも染まることのできる「柔軟性」や「適合性」は、俳優人生の序盤戦には欠かすことのできない能力であるようにも感じます。この3年間、坂口さんへのオファーが絶えない理由は、しなやかにチームに溶け込みつつ、自分の役割を全うするという能力が多くの現場で求められるからなのではないでしょうか。『ナラタージュ』の行定勲監督も「非常に一緒にやりやすいニュートラルな俳優で、これからも注目していきたいです」と語っています。

このような能力は業種や職種は違えども、若手ビジネスパーソンにも有用です。特に入社3~4年目くらいの時期に大事なのではないでしょうか。

若手の頃は自身を磨くことや現場に慣れることに必死で、ともすればやみくもに進んでしまいがち。ですが、上司や同僚が自分にどんな役割を求めているのかを考えることが重要です。

実際、『今夜、ロマンス劇場で』でコメディーシーンに初挑戦している坂口さんは、次のようにコメントしていました。

「監督さんと相談しながら、お客さんをあえて笑わすということは逆に意識しないようにしました。すごく一生懸命で真面目な姿って、ちょっとクスッとしてしまうじゃないですか。健司も笑わそうとしているのではなく、映画のために本気で働いている姿が見ている人の頬をちょっとゆるませたりとか、美雪のためにいちずに走っていく姿に、ちょっとかわいらしいなとクスッとなったりとか……そういう方向に持っていくことを監督と話し合いました」

若手はまず求められたことをやってみる

自身の決めつけや主張を軸に演じることなく、指揮官である監督と意思疎通をはかりながら、観客の心に寄り添い、ニーズをつかみつつ、柔軟な解釈で求められている役割を全うする。そうする中で、坂口さんが初挑戦したコメディーシーンは大きな見どころの一つとして、作品全体を盛り上げています。こうして力むことなくチームに溶け込み、期待に応えていく坂口さんのような若手にはどんどん仕事を頼みたくなることでしょう。

どの現場においても、そうして頼まれた仕事をこなしていけば、自身のスキルは向上していくものです。するとさらに周囲がよく見えるようになり、さらに能力を発揮しやすくなります。組織全体で考えても、このような頼もしい若手が存在するチームや組織は、しっかりと成熟していくように感じます。

私自身も様々なプロジェクトチームとお仕事をご一緒する機会がありますが、要となるリーダーの指示が的確かどうかと併せて、若手がチームの促進剤になっているかどうかが、そのプロジェクトの成否を分ける大きな要因の一つであると感じる場面が多々あります。

好スタートを切った坂口さんの今後の俳優人生同様に、柔軟性と適合力を存分に発揮している若手ビジネスパーソンの皆さんが、今後、どのようなキャリアを構築していくのか……その姿を追うのはとても頼もしく、また楽しみでもあります。

鈴木ともみ
経済キャスター、ファイナンシャル・プランナー。日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。テレビ、ラジオ、各種シンポジウムへの出演のほか、雑誌やWeb(ニュースサイト)にてコラムを連載。主な著書に『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。株式市況番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重TV・ストックボイス)キャスターとしても活動中。