医療費をなるべく安く… 見落としがちな節約ワザ
いまさら聞けない大人のマネーレッスン
こんにちは。経済エッセイストの井戸美枝です。今年はインフルエンザが大流行していますね。既に病院や診療所に行かれた人も多いのではないでしょうか。
私たちは健康保険に加入しているので、医療費の自己負担は1割から3割ですみます。とはいっても、実際に支払う治療費や薬代は少ない金額ではありません。
実は医療費は、ちょっとしたことで節約ができます。今回は賢く医療費を節約する方法をご紹介します。
急病でなければ、まずは診療所へ
ところで、みなさんは「病院」と「診療所」の違いを知っていますか?
スタッフの人数や医療機器の数や種類……。いろいろな違いがありますが、法律ではベッドの数が20床以上ある医療施設を「病院」、19床以下もしくはベッドがない施設を「診療所」と定めています。
病院の中でもさらに大きな病院、例えば500床以上あるような総合病院や大学病院があります。こうした大きな病院へ行くと、「診療情報提供書」いわゆる「医師の紹介状」がないと、通常の料金に加えて初診時は5000円以上、再診時は2500円以上の「選定療養費」が請求されます(2018年4月からは「400床以上」の病院に変更されます)。
急病などでない限り、まずは診療所か、ベッド数200床未満の病院で診療を受けるようにしましょう。選定療養費がかかるかどうかは、病院のウェブサイトや受付で確認できます。
診療時間外は割増料金がかかる
次に、診療を受ける時間帯です。朝早く、もしくは夜遅くに診療を受けると、料金が高くなります。
病院や診療所には「診療時間」があります。病院の診療時間は原則、平日は午前8時から午後6時まで。土曜日は午前8時から正午まで。日曜・祝日(年末年始を含む)は休み、となっています。
この診療時間以外の時間帯に診療を受けると、「時間外加算」「深夜加算」「休日加算」といった料金が上乗せされます。
「時間外加算」は、午前6時から8時と午後6時から10時(土曜日は午前6時から8時と正午から午後10時)に受診したとき、「深夜加算」は午後10時から翌朝6時に受診したとき、「休日加算」は日曜や祝日、年末年始(12月29日~1月3日)に受診したときに加算されます。
加算される金額は、初診と再診で異なります。図を参照してください。
これらの加算分に対しても健康保険は適用されます。
診療所・調剤薬局でも上乗せがある
診療所の診療時間も、病院と同じく平日は午前8時から午後6時まで、土曜は午前8時から正午まで、日曜・祝日はお休みです。
診療所によっては、患者が受診しやすいように診療時間を午前7時から午後8時まで設定しているところがあります。しかし診療所が独自に決めた診療時間内であっても、午前8時より前と午後6時以降の診察には、時間外加算や深夜加算が上乗せされています。
病院へ行くと薬を処方してもらうこともありますね。調剤薬局にも「夜間・休日等加算」があります。こちらは終了時間が1時間遅く、平日は午前8時から午後7時まで、土曜は午前8時から午後1時までが通常の料金となります。それ以外の時間帯に処方してもらうと、400円が別途加算されます(保険が適用されるので、3割負担の人なら120円の加算です)。
少し話がそれますが、2018年度の診療報酬の改定で、薬価が平均7%程度引き下げられることが決まりました。4月以降、私たちが支払う薬代は下がるでしょう。
このように、診療時間外に受診すると病院・診療所での加算、調剤薬局での加算のため割高になるかもしれません。できるだけ午前8時から午後6時までの間に診療を受けると、医療費を節約できます。もちろん、急を要する場合は別です。
インフルエンザ予防接種や人間ドックには補助金制度
病気になる前の予防も大切です。初冬から春先にかけて流行するインフルエンザ。今年は既に流行してしまっていますが、予防接種を受けることでウイルスに対する免疫を作ったり症状を軽くしたりできます。
インフルエンザ予防接種は病気の治療ではないため、健康保険の適用外。地域や医療機関によって異なりますが、1回当たり2500~3000円程度の費用がかかることが多いようです。家族がいる場合は、世帯全員で接種すると結構な金額になりますよね。
そこで、各健康保険組合のインフルエンザ予防接種の補助金制度を利用しましょう。補助金の内容は健康保険組合によって異なりますが、保険の加入者やその家族に対して、1人1回1000~3000円程度の補助金が支給されます。少なくとも、かかった費用の半額は補助されるはず。
申請の方法は、予防接種を受けて代金を支払った後、申請書や領収書といった必要書類を送付します。領収書は必ず保管しておきましょう。
病気の早期発見といえば「人間ドック」ですが、こちらも治療ではないため、全額自己負担です。
人間ドックに対しても、健康保険の補助があります。国民健康保険に加入している人は、自治体が実施している人間ドック助成金制度。会社員の人は、勤務先が加入している健康保険の補助金制度を利用できますが、支給条件を35歳以上と定めているところが多いようです。
1年間に10万円超かかった医療費は確定申告を
最後に、「医療費控除」です。医療費控除は、1年間の医療費の自己負担額が10万円を超えた分を所得から控除できるというもの。家族全員の医療費を合算できますので、10万円を超えている世帯は多いのではないでしょうか。
ただし、医療費控除の対象とならないものもあります。
医療費控除の申告には、病院・診療所や調剤薬局での領収書が必要となります。うっかり捨ててしまうと、その分は合算できません。家族全員分、きちんと保管して、確定申告しましょう。
・急病でない限り、まずは診療所へ
・病院や診療所は午前8時~午後6時以外に受診すると、割増料金あり
・調剤薬局も午後7時以降に処方されると割増料金あり
・インフルエンザ予防接種や人間ドックを受けるなら、補助金制度の活用を。領収書は保管しておこう
・1年間の医療費が10万円を超えたら医療費控除を
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金部会委員。確定拠出年金の運用に関する専門委員会委員。経済エッセイストとして活動。近著に「ズボラな人のための確定拠出年金入門」(プレジデント社)、「定年男子定年女子」(日経BP社)、「5年後ではもう遅い! 45歳からのお金を作るコツ」(ビジネス社)など。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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