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上司が壊す職場

「壊れた職場」なぜ生まれる? 原因の7割は上司

2018/2/13

写真はイメージ=PIXTA

 日本のメンタルヘルス研修の草分け的存在、見波利幸氏の書いた新書「上司が壊す職場」(日経プレミアシリーズ)が話題です。どのような人がメンバーの心を壊し、チームの生産性を下げるのか。本書の一部を抜粋して紹介します。

◇  ◇  ◇

■壊れた職場があれば、まず「上司の存在」を疑う

 これまで私は産業カウンセラーとして、メンタル不調者が発生してしまった会社から数多くの相談を受けました。

 「営業部の若手社員がメンタル不調になり休職になりました。その欠員補充のために異動させた社員も、今月から休職することになってしまいました。営業部ばかり不調者が出るので困惑しています。一体なぜなのでしょうか?」

 カウンセリングでは、不調になった当事者だけでなく、その周囲で働く上司や同僚も含め、たくさんの人と向き合います。

 そして、いろいろな話を聞いていくうちに、ひとつの大きな疑問が生じました。

 なぜ特定の部署にだけ不調者が続出するのだろうか――。

 その部署の業務が極端に重く、ある意味「ブラック企業」的な職場になっているのではないか、と想像する方もいるかもしれません。

 ところが多くの場合、仕事量や勤務時間の長さなどが主たる原因になっているわけではないのです。

 もちろんメンタル不調を起こす人の中には、過剰な業務負荷によって自由な時間が取れないこと、さらには成果を出せないことに悩んで自分自身を追い詰めてしまうケース、顧客との関係などで苦しめられている例は少なくありません。

 しかし、カウンセリングを通して感じるのは、仕事そのものへの悩み以上に、職場内における「人間関係」の問題によって不調になっている人が非常に多いということです。

 この「人間関係」においても、読者の皆さんが想像する通り、同僚同士のトラブルによって精神的に追い詰められる人は、それほど多いわけではありません(もちろんゼロではありません)。

 私が「特定の部署でメンタル不調者が続出している」という相談を受けた場合、その原因としてまず考えるのは、その部署の上司―部下関係に問題があるのではないか、その部署を統括する上司に問題があるのではないか、といった点です。

 残念なことではありますが、ほとんどのケースで私の推測は当たってしまいます。やはり上司―部下関係で何らかの問題が生じているのです。

■メンタル不調の7割は、上司が原因

 私が携わったメンタル問題の個別ケースについて、上司―部下関係を調べていくと、「部下に原因がある」「上司に原因がある」の2つがあり、まれに「上司と部下、双方に原因がある」という場合もあります。

 これまで多くの会社を観察してきた例を振り返ると、部下に問題があって不調になってしまうケースは、全体の3分の1程度です。そして残り3分の2、つまり7割近くは上司が抱える問題によって引き起こされています。

 この話をすると、こんな反論が聞こえてきます。

 「部下に問題があるケースが、そんなに少ないはずがない。仕事ができない社員、甘えた社員は非常に多い。何でも上司のせい、会社のせいにしていては、部下を甘やかすことになって、問題の本質的解決につながらないのではないか」

 こうした発言をするのは、多くが経営者、あるいは管理者の立場にいる方々です。では、部下側に問題があるとして、具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。

 実際にメンタル不調になった方から話を聞くと、自身のスキルや経験の不足によって仕事がうまく進められず、自らを追い込んでしまうケース、さらには本人のキャラクターにより職場や仕事にうまくなじめず、周囲から孤立してしまっている状況などが原因になっていることは、確かに少なくありません。

 この場合、上司から見れば、「何度教えても仕事を覚えない」「少し指導しただけで、必要以上に落ち込んでしまう」「周囲と打ち解けようという意思がない」といった印象となって胸に刻まれるのは間違いないでしょう。

 スキル不足、コミュニケーション不全などによって、同僚の負担を増やしたり、職場の和を乱したりして、周囲の人に「なぜ自分たちが、あいつのフォローまでしなければいけないのか」という思いを抱かせる事例は数多くあります。

 ただし「部下の問題」は、職場全体を機能不全にすることはあまりなく、影響の大きさという意味では非常に限定的です。

 しかもスキルや経験の不足であれば、実務経験の蓄積や上司の適切な指導やカウンセリングなどによって、解決に導きやすい側面があります。

 また、部下のキャラクターが原因となっているケースでも、会社側がしっかり社員の特性を見きわめて、業務負担を考慮したり、本人の適性に合った部署へ異動させたりといった対応が可能になります。

■「部下も悪い」と考える会社は危ない

 その点、上司に原因がある場合、事態は深刻です。

 マネジメントに問題があっても、部下から上司に対して「あなたは職場のメンバーにストレスを与えています」と指摘することはまず不可能です。

 上司の立場にいる人が職場を壊していても、それが相当にひどくない限りは、さらに上位の役職者(課長にとっての部長など)の目に届きにくく、放置されやすいため、なかなか解決に結びつきません。

 一般的な組織では、上司という立場にいれば複数の部下を抱えています。マネジメントに問題があれば、その悪影響は職場全体に広がってしまうのです。

 このような要素があいまって、上司サイドの問題は、部下サイドの問題に比べて、長期化、悪化しやすい傾向があると言えます。

 先に部下に原因があるのは3分の1程度と書いたのは、あくまで個別のケースについての全体の印象です。会社によっては、上司が非常にしっかりしていて、問題の多くは部下側にその原因がある、というケースもありえます。

 その意味では、「部下由来の問題が、そんなに少ないはずがない」という主張も論理的には、成立可能なわけです。

 ただし、こと「特定の職場で問題が続出する」というケースでは、詳しく話を聞いていくと、先述したように、やはり上司側のマネジメントに何らかの原因がある、というのがほとんどです。

 そして、私の経験則ではありますが、「部下由来の問題が、少ないはずがない」と経営者や管理者が発言するような会社ほど、上司が原因となって「職場が壊れる」という危険が高まると思います。

見波利幸
 エディフィストラーニング主任研究員。1961年生まれ。外資系コンピューターメーカーなどを経て98年に野村総合研究所入社し、メンタルヘルスの黎明期から管理職向け1日研修を提唱。日本のメンタルヘルス研修の草分け的存在に。2015年から日本メンタルヘルス講師認定協会専務理事。

上司が壊す職場 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 見波利幸
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 918円 (税込み)

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