2018/2/13

上司が壊す職場

しかもスキルや経験の不足であれば、実務経験の蓄積や上司の適切な指導やカウンセリングなどによって、解決に導きやすい側面があります。

また、部下のキャラクターが原因となっているケースでも、会社側がしっかり社員の特性を見きわめて、業務負担を考慮したり、本人の適性に合った部署へ異動させたりといった対応が可能になります。

「部下も悪い」と考える会社は危ない

その点、上司に原因がある場合、事態は深刻です。

マネジメントに問題があっても、部下から上司に対して「あなたは職場のメンバーにストレスを与えています」と指摘することはまず不可能です。

上司の立場にいる人が職場を壊していても、それが相当にひどくない限りは、さらに上位の役職者(課長にとっての部長など)の目に届きにくく、放置されやすいため、なかなか解決に結びつきません。

一般的な組織では、上司という立場にいれば複数の部下を抱えています。マネジメントに問題があれば、その悪影響は職場全体に広がってしまうのです。

このような要素があいまって、上司サイドの問題は、部下サイドの問題に比べて、長期化、悪化しやすい傾向があると言えます。

先に部下に原因があるのは3分の1程度と書いたのは、あくまで個別のケースについての全体の印象です。会社によっては、上司が非常にしっかりしていて、問題の多くは部下側にその原因がある、というケースもありえます。

その意味では、「部下由来の問題が、そんなに少ないはずがない」という主張も論理的には、成立可能なわけです。

ただし、こと「特定の職場で問題が続出する」というケースでは、詳しく話を聞いていくと、先述したように、やはり上司側のマネジメントに何らかの原因がある、というのがほとんどです。

そして、私の経験則ではありますが、「部下由来の問題が、少ないはずがない」と経営者や管理者が発言するような会社ほど、上司が原因となって「職場が壊れる」という危険が高まると思います。

見波利幸
 エディフィストラーニング主任研究員。1961年生まれ。外資系コンピューターメーカーなどを経て98年に野村総合研究所入社し、メンタルヘルスの黎明期から管理職向け1日研修を提唱。日本のメンタルヘルス研修の草分け的存在に。2015年から日本メンタルヘルス講師認定協会専務理事。

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