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幻のコーヒー「ゲイシャ」 最高級の味をコスタリカで

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NIKKEI STYLE

「ゲイシャ」というコーヒーをご存じだろうか。

着物をまとって三味線や踊りを披露するあの芸者さんをイメージする方も多いだろうが、それとはまったく関係ない。ゲイシャ種というエチオピア起源の希少なコーヒー豆の品種である。一定の条件を満たした高地にしか根づかず、育てるのが難しい。かつ、コーヒーの木になる実が少ない。栽培効率が悪いためコーヒー農家から敬遠され、収穫量が非常に少ないことから「幻のコーヒー」と呼ばれる。

単に希少種というだけではない。ゲイシャ種は味が強く、個性的な香りで、多くのコーヒーマニアを引きつけている。その香りはジャスミンなどの花やパッションフルーツなどの果物にもたとえられる。ゲイシャ種は中米・コスタリカのコーヒー研究所に持ち込まれ、その後パナマやエルサルバドルなど中南米の国に徐々に広まっていった。

ちょうどこの2月6日から、日本のローソンでは「マチカフェ シングルオリジン パナマ ベイビーゲイシャ」を8万杯限定で発売した。レギュラーサイズで500円と、100円や150円で飲めるコンビニコーヒーにあって、かなり高額である。同じく、日本のスターバックスコーヒーでも、過去にパナマ産ゲイシャコーヒーを期間限定、店舗限定、数量限定で1杯約2000円で出していたとか。

今回は1杯のうまいコーヒーを求め、ゲイシャ種の中南米のゲートウェイであるコスタリカを旅してきた。……というとカッコいいが、実際はコスタリカを観光し、結果的に個性と香り豊かなコスタリカのゲイシャコーヒーに出合うことができたといったほうが正しい。

その前に、まずはコスタリカの説明をしよう。コスタリカ共和国は北米大陸と南米大陸を結ぶ地峡地帯、中米に位置する小国だ。「生物多様性の宝庫」としても知られ、九州と四国を足したほどの小さな国土に、地球上すべての生物種の約5パーセントが生息している。

この豊かな自然を守るために国土の4分の1が国立公園・自然保護区に指定されており、電力も98パーセントが再生可能エネルギー。将来的には排出される二酸化炭素の量をその吸収量と相殺する「カーボンニュートラル」を目指しているという「環境先進国」である。観光を通じて自然保護や環境保全への理解を深める「エコツーリズム」にも力を入れている。

私もそんなコスタリカの豊かな自然に触れるべく、コスタリカ最大の活火山「アレナル火山」と麓の温泉に入るツアーに参加したときのことだ。首都サンホセから目的地に向かう途中のバスで、ガイドがこんなことを言った。

「コスタリカの最大の産業は観光で次が農業。農産物の輸出額はバナナとパイナップル、コーヒーの順に多く、今、バスが走っているこのあたりもコーヒー農園がたくさんあります。このあたりでは世界的に最高品質として有名な『ゲイシャ』と呼ばれるコーヒーをつくっているんですよ」

なぬ、ゲイシャコーヒー? 

恥ずかしながら私はコスタリカに行くまで「ゲイシャ種」のことを知らなかった。私の頭の中には着物をお召しになった芸者さんが「コーヒー、どうどすか?」と勧めてくれるイメージが渦巻いた。おそらくこの名前を聞いた日本人はみんなそうなんじゃないだろうか。

これはきっとその品種の開発に日本人がかかわっていたに違いない。そして、日本といえば「フジヤマ」とか「ゲイシャ」という発想でそんな名前になったに違いない。私はそう勝手に想像した。

ガイドはゲイシャコーヒーについての説明をしてくれた(私が冒頭に書いたのはガイドからの受け売りである)。コーヒーの国際品評会で過去には1ポンド(約450グラム)当たり601米ドルの破格値で落札されたこともあるという。

もう一つ、そのガイドが興味深いことを言っていた。コスタリカならではのコーヒー豆の処理の仕方があるという。コーヒー豆はご存じかと思うが、「豆」ではない。コーヒーの木になる赤い実「コーヒーチェリー」の種子である。

果肉を取り除き種子を出す方法にはいくつかあり、世界で幅広く採用されているのが「ウオッシュド」(水洗式)という方法。これは機械で外皮と果肉を取り除いた後、種子を水で洗い流し乾燥させるというものだ。

この方法だと種子のまわりの余分な成分がきれいになくなるのでスッキリとした雑味のない味わいになるのだが、種子を洗った廃液が環境破壊につながるとの指摘もある。そこで、コスタリカでは機械で外皮と果肉を取り除いた後、水で洗わずに乾燥させる方法を多く採用しているという。さすがは環境先進国!

コーヒーチェリーの果肉は甘いので、洗わないことでまるではちみつのような、キャラメルのような甘い香りが生まれるとのこと。この精製方法を「ハニープロセス」と呼ぶ。

ジャスミンみたいでパッションフルーツみたいで、さらにハニーでキャラメル? いったいどんなコーヒーなの!? 私は興味津々になった。そのツアーではトイレ休憩や食事休憩のためバスは何度かお土産屋さんやレストランに立ち寄った。コーヒーやコーヒー豆を売っているところがあったので、その都度ゲイシャコーヒーを飲もう・買おうと試みたが、置いていない。店員に聞いてもないという。

日本でもマツタケなどの高級品は産地には流通せずに築地に送られるという。きっと最高級のコーヒーも産地周辺には売っていないのだ、とこれまた勝手に解釈した。が、手に入らないと、ますます飲みたくなるのが人情というものである。

その日は結局、ゲイシャコーヒーにありつけぬまま、温泉を堪能した後、ホテルに戻った。そして、ゲイシャ種について調べてみると、エチオピアの「ゲシャ」村に在来する品種だと分かった。

話はちょっとそれるのだが、私がかつてエルサルバドルに滞在していたとき、コーヒー農園を併設する温泉施設を訪れたことがあった。その農園ではコーヒー豆を洗う過程で温泉の水を利用していた。日本がメインの輸出先だったようで、「オンセンコーヒー」という名前がついていた。その農園ではゲイシャ種も栽培しており、なんと「オンセンゲイシャ」も存在していた! 冗談みたいな本当の話である。

話を元に戻そう。さらに調べてみると、ガイドのいっていた1ポンド600ドル超のコーヒーはパナマのものらしい。また、コーヒーの生育には高地で水はけがよく、窒素・リン酸・カリウムを豊富に含む火山質土壌がよいとされ、火山国であるコスタリカは昨今コーヒーの栽培地として注目されていることも分かった。あの「スターバックスコーヒー」も初の自社農園をコスタリカに構えているほどだ。

コスタリカ産ゲイシャもそれなりに高い評価を得ているようだ。こうなったら、ゲイシャコーヒーを味わわずに帰るわけにはいかない。翌日は首都サンホセでもっとも有名なコーヒー専門店に足を運ぶことにした。

開店とともにコーヒー専門店に駆け込み、「ゲイシャコーヒーはありますか?」と聞くと「もちろん!」との答え。「ウオッシュド」と「ハニープロセス」の2種類があるという。

店員さんは「ウオッシュドとハニープロセスの違い」を解説してくれたが、私の心はもう決まっている。

「両方、お願い!」

すると、「どっちを先にする?」との質問。「朝だからシャキッとしたい場合はウオッシュドを先に飲んだほうがいいし、逆にまったりしたい気分ならハニープロセスだし……」といろいろ提案してくれる。コーヒーの好みやら、今の気分などについても聞かれる。

先にハニープロセスを飲むことにすると、次に「どういう淹れ方にするか」と聞かれる。ここでは10種類のドリッパーのなかからお好みのものでコーヒーを淹れてくれるという。ここでまた10種類の説明が始まる。

お店は日本のコーヒーチェーンやコンビニのようにカウンターで注文してお金を払うシステムだったが、日本のようにすぐにコーヒーにはありつけない。

一つ見たことのないドリッパーがあり、「これは『バンドーラ』といって、コスタリカの伝統的なコーヒーメーカー。香りを閉じ込めるつくりになっているのと、陶器なので保温性に優れているのが特徴だよ」とのこと。コスタリカに来たらやっぱりコスタリカ式でしょうと、こちらを選択。

と、結局コーヒーを注文するのに15分近く。しかし、ここからがまた長い。

注文を受けてから豆をひき、バンドーラは一度お湯を入れておいて温めてから使う。時計とスケールで時間とお湯の分量をきっちり計りながら、丁寧にハンドドリップで淹れてくれた。

そして、いよいよ「ハニープロセス」のゲイシャの登場。確かにコーヒー独特の香ばしい香りのなかにほんのりはちみつのような甘い香りがする。口にそっと含むとほどよい酸味と苦みと甘みとコクが広がった。何かが突出することのない非常にバランスのいい、おいしいコーヒーであった。

ただ、いわれているようなジャスミンやパッションフルーツ香は残念ながら感じられず。

続いてウォッシュドのゲイシャを飲むと、こちらも甲乙つけがたく美味。いや、正直に告白しよう、自分は「違いのわかる女」ではなかったことを。いわれてみれば「ハニープロセス」のほうが甘い香りが強いような気がするが、ブラインドテストされたら当てる自信はない。

味にそれほど違いがないなら水のコストもかかって環境負荷のかかる水洗式じゃなくて、世の中のコーヒー、みんなハニープロセスでいいんじゃないの? と思ったが、もともと品質のよいゲイシャ種だから両方ともおいしくいただけるのかもしれない。

ふと店内を見渡せば、一番乗りだった私以外にも客がやってきていた。店員がいろいろと説明してくれるのは私がこの国のコーヒー事情を知らない外国人だからだと思っていたが、地元民と思われる客もみな店員と会話をしながらメニューを決めたり、コーヒーを淹れるところをノンビリと眺めたりしていた。

そうか、会話を楽しむこと、コーヒーが出てくるまでの時間を楽しむことも含めて「コーヒーを飲む」ということなんだな、と思った。エスプレッソマシーンで待たされずにコーヒーが出てくるのも便利だけど、こういう時間を持つのも悪くない。と、コスタリカのコーヒーからこんなことを学んだ。

また、今回の旅では自分が飲んでいるコーヒーが生産国の環境を汚しているかもしれないことも学んだ(水洗式でも汚濁物質を処理してから排水している企業もある)。コーヒーを買うとき、不当な搾取をせずに公平な価格で取引をしている「フェアトレード」商品をなるべく選ぶようにしていたが、今後はコーヒー豆の精製方法にもちょっと気に留めてみようかなと思った。

さて、ゲイシャコーヒーは日本のコーヒー専門店やネットショップでも入手可能である。コーヒーは同じ種でも生まれ育った地の気候や土壌の特徴、ワインでいうところの「テロワール」がそれぞれにあるといわれる。各国、さまざまな農園のゲイシャを是非試してみていただきたい。

(ライター 柏木珠希)

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