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ギョーザ、止まらぬ進化 多様化するたれ、中国仕様も

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NIKKEI STYLE

「うち、今夜はギョーザだよって日は100個作るから」

私の人生の来し方にクセがあるのだろうか。今まで生きてきて「うちはギョーザ100個」と豪語する人とは数え切れないほど出会ってきた。ギョーザの個数など尋ねてないのに、なぜかみんな誇らしげに「ギョーザ100個」とふれ回る。どうだ、うちはこんなにギョーザを食う一家なのだと、高らかにアピールしてくるのだ。

それが3世代同居の子だくさん家庭や、息子ふたりが高校の野球部とサッカー部、なんて家ならわかる。100個なんて秒殺だろう。しかし「ギョーザ100個の家」は、そんな家族構成ばかりではない。若夫婦2人に赤ちゃんだけ、老夫婦の2人暮らし、いやいや中年のひとり暮らしであろうとも、100個作ることをちゅうちょしない人が家にいる限り、ギョーザは100個単位で作られ続けていくのである。

実はオットの実家も「ギョーザ100個の家」だったらしい。中国と日本の架け橋のような仕事をしていた義祖母が、現地の友人から教わった本場仕込みの水ギョーザを「向こうではギョーザを食べるときは、ギョーザしか食べないから」と言って山のように作っていたという。もちろんその話をするときのオットも、なぜかいつも自慢げだ。

「中国」とひとくくりにしてしまったが、山のようにギョーザを食べるのは、主に北京など北の地方の特徴だ。中国では北方はコムギを中心とした「粉食」、南方はコメを中心とした「粒食」に大別できる。

中国のような大きな国をざっくり南北に分けてしまうことにはいつもドキドキするが、実際に北京と上海に住んだ経験のある友人に言わせると「北京ではびっくりするくらい頻繁にギョーザを食べてたけど、上海に引っ越したらギョーザのことをしばらく忘れてた」とのことなので、北と南でかなりの温度差はあったのだろう。その土地で一番取れる作物の地方別分布図を見ても、江蘇省から四川省にかけての東西のラインから北はムギ類、南はイネとキレイに分かれており、温度差にも納得がいく。

その北方の人たちが、さらに山のようにギョーザを食べる日がある。それが「春節」。中国の民間の祝日としては、年間最大とも言われる旧正月のことで、今年は2月16日がそれに当たる。春節はまとまった休みが取れるため、現在では旅行するのにちょうどいいと、世界各地に多くの中国人観光客が出かけることでも知られているが、少し前までは実家に帰省するための日であった。

公共交通機関が特別ダイヤを組み、駅は大混雑。家族へのお土産を抱えた人々でごったがえし、民族大移動などと例えられるほど。そして普段は離れて暮らす家族がそろって春節を祝う様子は、日本人の正月風景と変わらない。違うのは食べ物だけだ。おせちやお雑煮の代わりに北京の人が食べるもの、それがギョーザなのだ。

味はまったく違うが、おせちと春節ギョーザの存在感はよく似ている。

大みそかに「正月三が日に食べるくらいの量」を仕込むのがおせちなら、春節前夜に「春節3日間に食べるくらいの量」を包むのがギョーザである。冷蔵庫に入りきらなかったおせちを家の中の寒い部屋で保存するように、北京でも包んだギョーザを火の気のない部屋へ置いておく。どちらも手間がかかり、大量に作るため、時に家族総出で取りかからねば年が越せない。

残念ながら、時代が進むにつれ必然性が薄まっているところまでもが似ている。すべて手作り派はどんどん減り、既製品と手作りが混在する派、家では作らず店で食べてしまう派が増え、いっそのこともう食べない派も出てきているという。日本のおせちもこの数十年でだいぶ様変わりしたが、春節ギョーザもそのうちちょっとレトロな習慣となってしまうのかもしれない。

とはいえギョーザそのものが廃れてしまうというわけではない。なぜならギョーザはうまい、安い、食べごたえの良さで、日常に根づいているからだ。だて巻きなどは正月にしか出合えないが、ギョーザは春節だけでなく、いつでも食べられる。昔と違い、上海や広州などの南方でも小麦粉皮のギョーザはよく食べられるようになった。さらに日本での大人気っぷりは、もう皆さんも大いに知るところであろう。

現在、街を歩いていて感じるのは「ああ、ギョーザはあのころから10段階くらいステップアップしたんだな」ということだ。

まずバリエーションがケタ違いに増えた。本場からは現地仕様のものがどんどん入ってくるし、進化系ニューウエーブギョーザも続々と出てきている。日式焼きギョーザばかりだったあのころと比べたら、雲泥の差だ。もうゆでっぱなしの水ギョーザを見て「スープにつかってないじゃないか!」と怒る人はいないだろう。「ギョーザ食べたらニンニク臭くなるぞ」と脅かす人も減っただろう。肉が羊肉だろうと、フェンネルやトマトが入っていようと、かたちが三日月形であろうとなかろうと、もう白い目で見られることはない。むしろそれ目当てに行列ができるほどだ。

以前はあまり変化のなかった「たれ」も、自由に羽ばたいている。ココナツが入ったもの、サンショウでビリビリしびれるもの、サラサラと水のようなあっさりタイプ、それぞれギョーザを引き立てる。コショウを振った酢だけで食べるスズキさんも珍しくはないし、そもそもしっかり味つけしてあるからたれ不要のギョーザもある。

本場とはまったく違うものの、日式焼きギョーザから謎の発展を遂げた変化球ギョーザも面白い。ふっくらキツネ色がすばらしいホワイトギョーザや、パリパリと軽いひとくちギョーザなどは、近くを通りかかればつい買うか食べるかせずにはいられない。

おでんなのにギョーザが味わえる、練り物のギョーザ巻きもすごいアイデアだ。そうだ! 手羽先ギョーザという手もあった。ああ私は、手羽先ギョーザには本当に目がないんだ。いったい誰が手羽先にギョーザの中身を詰めようなどと思ったのか。最高アンド最高オブ最高じゃないか。

東京とはひと味違う、全国各地の日式焼きギョーザもよく知られるようになった。私のお気に入りは、神戸の味噌だれで食べるギョーザだ。ギョーザに限らず、ご当地メシは現地で味わうのがモットーの私だが、あのギョーザだけは「近所に来てくれたらなあ」と無い物ねだりをせずにいられない。仕方なく味噌だれのみを取り寄せ、家でつけては「ナンカチガウ」と駄々をこねる日々である。

最近、街には「何かの食べ物に特化した専門店」が増えているが、ギョーザとて例外ではない。うちの近所だけでも、ギョーザバルにギョーザ製作所、ギョーザ楼、ギョーザ本舗、持ち帰りギョーザ専門店と、片手では足りないほどのギョーザ専門店がある。

上記の神戸の店は「メニューはギョーザ、ビール、キュウリだけ」という、とてもストイックな店だったが、最近増えているのは味や調理法が違う何種類ものギョーザを選べ、いろいろな飲み物と合わせることができる、ゆるくて楽しいタイプが多い。どちらもアリだ。気分によって使い分ければいい。ギョーザならぬ「GYOZA」をシャンパンに合わせれば、心の中の女子が大喜びするだろう。

昔ながらの街中華も、全国規模のチェーン店も安定しておいしいし、チルドや冷凍食品はグイグイ進化している。手作りするにも、今は本でもネットでもいいレシピがたくさんあふれている。市販の皮も最近はハッとするくらいおいしいものがあるし、フードプロセッサーやニーダーの普及により小麦粉から手作りするのも難しいことではなくなってきた。

今のニッポンでは、まずいギョーザに出合う方が難しいのかもしれない。うちもそろそろ義実家の風習を取り入れて「ギョーザ100個の家」になるべきだろうか。初老夫婦にはちと辛いけど。

(食ライター じろまるいずみ)

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