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入り口近くのメインの平台のほぼ中央に展示(リブロ汐留シオサイト店)

入り口近くのメインの平台のほぼ中央に展示(リブロ汐留シオサイト店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は、定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。巨額流出事件などの影響で仮想通貨やマネー全体への関心が高まっているためか、最近はビットコインをはじめ、マネー周りの本の売れ行きがいい。そんな中、この店ならではの売れ筋として、売り上げを伸ばしているのは、著名なマーケターが書いた消費者心理をつかむ思考法の本だった。

消費者心理の本質をつかむには

その本は原田曜平『それ、なんで流行ってるの』(ディスカヴァー携書)。著者の原田氏は、若者研究をしている博報堂ブランドデザイン若者研究所のリーダー。テレビのコメンテーターでも活躍しているので知っている人も多いだろう。本業のマーケターとして、「消費者心理という本質をとらえるためには、どのように考えればよいか? どこを押さえればよいか」について、まとめたのが本書だ。

原田氏はこれまで「マイルドヤンキー」「さとり世代」などの流行語を生み出してきた。これらは所属する研究所で、様々なトレンドや現象をリサーチしている中からつかみ取った成果だ。こうした発見はどのような調査や思考プロセスから生まれるのか。そこを実例に基づいて解説するところから本書は始まる。さらに、2017年にはやった「忖度(そんたく)」や「うんこ漢字ドリル」「ハンドスピナー」など、近年の流行語や流行現象のなぜを解明していく。うすうす誰もがその存在に気づいていながら名づけられていない現象をぴたっと言い当てると、それが流行語になる。そんな構造を示しつつ、それこそがマーケティング用語でいうところの「インサイト」だと原田氏は言う。そして近年、「伝え方」ばかりに焦点が当たり、その前提となる消費者心理のツボを見つけることがおろそかになりがちな状況に警鐘を鳴らすのである。

最近のトレンドも紹介

インサイト発見のための調査手法やそのために養うべき能力などもさらっているから、思考力のスキル本として読むのもいい。一方、17年の流行から16年8月~17年1月の若者調査から得られた若者のトレンドまで、最近のトレンドを拾って紹介しており、はやりものの見本帳としても読める。一石二鳥の一冊といっていいだろう。「昨年末に出て、その後じりじりと売り上げを伸ばしている」と店長の三浦健さん。広告関連の本は電通本社にほど近い同店の定番の売れ筋。新書という手軽さも手伝って、ライバル会社に属する著者であってもよく売れるようだ。

マネー周りの本が活況

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)大切なものほど、そばにある。大野靖之著(きずな出版)
(2)新橋アンダーグラウンド本橋信宏著(駒草出版)
(3)アフター・ビットコイン中島真志著(新潮社)
(4)それ、なんで流行ってるの? 原田曜平著(ディスカヴァー携書)
(5)お金2.0佐藤航陽著(幻冬舎)

(リブロ汐留シオサイト店、2018年1月29日~2月3日)

1位は、全国の小学校、中学校、高校に「学校ライブ」を出前して回り、「歌う道徳教師」と呼ばれるシンガーソングライターによる自己啓発書。2位は1月に同店を訪れたときに紹介した新橋のルポ本で、相変わらず好調な売れ行きだ。3位は、ビットコインとその中核技術、ブロックチェーンの将来を展望した一冊。4位に紹介した本。5位は、新しい経済のルールと生き方を説いた本。このところ、どの書店でも毎週のようにランキング上位に顔を出しており、3位の本と合わせて、仮想通貨やマネー周りの本の活況を示している。

(水柿武志)

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