辣腕リーダーはなぜ「ワイン党」になるのか?ライター 猪瀬聖

ワインファンとして蓄えた知識が、ビジネスの役に立つという声もある。ワインには古い歴史があり、ほぼ世界中で生産され、種類も味わいも多様だ。そのため話題やエピソードに事欠かない。

食卓の会話、ワインで盛り上がる?

例えば、18年の大相撲初場所で涙の初優勝を飾った栃ノ心関の故国、ジョージアはワイン発祥の地として知られる。最近では、その伝統的醸造法が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産にも登録された「オレンジワイン」が、世界のワイン愛好家の間で話題となっている。しかもジョージアは、このところ人気が高まっている日本ワインで主要原料に使われるブドウ品種「甲州」の故郷という説が有力。これだけでも「へーっ」と思う人は多いはずだ。

こうしたワインの話題をきっかけに食事での会話が弾むことは、想像に難くない。前沢氏は「コミュニケーションのツールとしてのワインの役目はすごく大きいと思う」と語る。今や欧米ばかりでなく、中国でもビジネスディナーの席でワインは存在感を増し、インドでも人気が高まっているという。食事のときの「共通語」としてワインを語れれば、世界を相手にするビジネスの助けになるかもしれない。

出井伸之氏

出井氏はこんな思い出を披露してくれた。「ジャック・ウェルチ(元米ゼネラル・エレクトリック最高経営責任者)もワインが大好きだった。マスターズが開かれるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで一緒にプレーしたときには、『きょうは後でいいワインを飲もうぜ』と言い、ラウンド後にクラブの会員限定レストランに連れて行ってくれた。ワインリストを見ると、どれもすごく値段が安いので、思わず『これは安いな』と言ったら、ジャックが『おまえよくワインがわかるな』と大喜びし、(世紀の当たり年といわれる)1982年のボルドーワインを注文してくれた」

ビジネス目的でワインの知識を詰め込むのは無粋だが、ワイン好きなら、ビジネスマンの「教養」として知識を深めておいて損はない。ワインはそういう楽しみ方もある酒だ。

猪瀬聖
慶応義塾大学法学部卒。米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修了。日本経済新聞社編集局生活情報部、同ロサンゼルス支局長などを経て、現在はフリーライター。キャリア、マイノリティー、米社会、ワインなど幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ)、『仕事のできる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)。
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