相続・税金

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父が民泊を行っていた家屋 相続時の評価はどうなる 税理士 内藤 克

2018/2/9

写真はイメージ=PIXTA
「先生、聞いてください。最近、父が実家の離れを民泊にして運用しているようでして……」
「民泊は最近何かと話題ですね。お父様は面倒見がいいから宿泊者から喜ばれているんでしょうね」
「ええ、でも初対面の旅行客ばかりですから私は心配です」
「確かにマンションの一室と違い、自宅の敷地内ですからね」
「ところで父はこの民泊で毎月10万円ほど収入があるようなんですが、税務署に申告しなければならないんですか?」
「もちろんです」
「では相続の際には賃貸用の不動産として、評価額を減額する特例は使えますか?」

■民泊の収入は雑所得として申告

民泊の話題をよく見聞きするようになりました。国税庁も確定申告時期を前に、タックスアンサー(https://www.nta.go.jp/taxanswer/index2.htm)で民泊にかかる収入の扱いを明らかにしました。そこには「個人が空き部屋などを有料で旅行者に宿泊させるいわゆる『民泊』は、一般的に、利用者の安全管理や衛生管理、また、一定程度の観光サービスの提供等を伴うものですので、単なる不動産賃貸とは異なり、その所得は、不動産所得ではなく、雑所得に該当します」と記載されています。

今年の6月15日からは「住宅宿泊事業法」、いわゆる民泊新法が施行され、住民が所管の自治体に届け出れば住宅でも民泊ができるようになります。しかしそれまでは「旅館業法」または「民泊条例」に従う必要があり、勝手に民泊事業を行うことは違法です。現時点では旅館業法の「簡易宿所営業」許可を取るか、国家戦略特区で「特区民泊」となれば正式な民泊と認められますが、実態は8割程度が無許可のヤミ民泊ではないかと報道されています(厚労省が2017年3月発表の全国調査で合法と確認できた物件はわずか16.5%)。

ただ、たとえ法的に問題があるとしても収入を得ていることには変わりないため、税務の世界では所得税の対象となります(業としての収入ではなく、『泊めてもらったことの謝礼』程度であれば贈与税の非課税に該当しますが)。

所得税の対象となる場合は、所得区分がどうなるかによってその後の扱いが異なるので注意が必要です。宿泊事業についての所得区分で考えられるのは「不動産所得」「事業所得」「雑所得」の3種類です。

不動産所得とは不動産の貸し付けにより生じた所得で、おもにアパート経営がこれにあたります(名前が似ていて混同されやすいのが、不動産を売却した時の譲渡所得です)。事業所得とは個人経営の旅館などの宿泊事業により得た所得をいいます。雑所得とは他のどの所得にも当てはまらない所得をいい、前述の通り民泊の所得は雑所得になるわけです。

この3種類の所得はどれも「収入-経費(減価償却費含む)」で計算するため、計算結果は同じになります。ただし赤字が出た場合は別で、不動産所得や事業所得は給与などの他の所得と損益通算できますが、雑所得ですと他の所得と損益通算できないので注意が必要です。

■小規模宅地の特例は使えるか

では冒頭の会話のように、民泊用住宅を相続した場合、相続税の計算はどうなるでしょうか。まず故人の財産をそれぞれ評価し、それらの合計から遺産にかかる基礎控除を差し引いて税額計算を行うことになります。

財産評価の方法は、土地に関しては以前「最新の『路線価』発表される 相続にどう役立てるか」で紹介したように、路線価をもとに間口や奥行きを加味して一筆(土地登記簿の一枚の用紙に書き込まれた一つの土地)ごとに計算していきます。この場合に注意しなければならないのは、借地権や借家権です。自分の持ち物でも他人に貸している場合、借り手側に借地権や借家権が発生するため、その分権利関係を調整して評価が下がることになります。

この権利関係の調整としての減額以外に、相続記事でよく出てくる「小規模宅地の評価減」という制度もあります。この規定は主に自宅を相続した場合に、一定要件を満たすと評価額を最大で80%も減額できるというものですが、事業用や貸し付け用の不動産についても適用があります。

冒頭のケースのように自宅の敷地内の別棟を民泊に使用している場合、貸し付け用不動産と認められれば200平方メートルまでの部分につき50%、「宿泊施設としての事業用」となれば特定事業用不動産として400平方メートルまでの部分につき80%減額できます。問題はこの特例が個人の小規模な民泊でも使えるかどうかです。

民泊新法によるとそもそも民泊として貸せる日数は最大でも年間180日までと制限されており(自治体の条例によってはさらに少なくなる可能性も)、簡易宿所営業のレベルでは「事業」とはいえないこと、税法上も民泊の所得は雑所得という扱いになることなどから、民泊では小規模宅地の評価減の適用は難しいと思われます。もちろんこの離れを貸家として長期賃貸している場合には貸し付け用として50%の評価減ができるのですが、収益力は民泊として一泊単位で貸し出すほうが高くなるため、どちらを取るか慎重に検討する必要がありそうです。

内藤克
税理士法人アーク&パートナーズ 代表・税理士。1962年生まれ、新潟県長岡市出身。97年に銀座で税理士・司法書士・社会保険労務士による共同事務所を開業。2010年に税理士法人アーク&パートナーズを設立。弁護士ら専門家と同族会社の事業承継を中心にコンサルティングを行っている。日本とハワイの税法に精通し、ハワイ税務のコンサルティングも行う。趣味はロックギター演奏。

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