旬のイチゴ、プレミアムに味わう 栃木のスカイベリー
イチゴが旬を迎えている。県別生産量では、首位栃木県、2位福岡県が長年にわたって定位置だが、2011年に栃木県のトップブランド「とちおとめ」が県外でも生産可能になり、一方で福岡県の「あまおう」はさらに作付面積を伸ばしている。栃木県は新たなブランド「スカイベリー」に力を注ぎ「とちおとめ」と並ぶ2大ブランドに育てることで「あまおう」の福岡県としのぎを削る。
今、さらに広がりを見せるイチゴ市場の中でも特に注目ブランド「スカイベリー」の最新動向を追った。
1月26日、東京駅前の東京ステーションホテルでは、多くの一般客も招き、スカイベリーの魅力をアピールするイベントが開催された。イベント冒頭であいさつしたのは、全国唯一のイチゴ専門研究所「いちご研究所」の石原良行所長。
スカイベリーの魅力は「大きさ、味、形」にあると訴えた。
イチゴは、ケーキのトッピングなどに使われることから、見栄えのいい大きさが求められる傾向にある。記憶の中では、子どものころ食べていたイチゴはもっと小粒だったような覚えがある。
「スカイベリー」は大きな物で25グラム以上の割合が生産量の3分の2以上を占めるそうで、その大きさには優位性がある。
また、外見もまるっこい「とちおとめ」に比べ、すっとした円すい形だ。食味も糖度と酸味のバランスがよく、ジューシーでまろやかな味わいが特徴になる。生産面では「萎黄病」への耐性が強く、病気になりにくいという点もメリットにあげられる。
イベントでも、特に目についたのは、スカイベリーのビジュアル性だ。すっきりとした円すい形や鮮やかな赤さはひときわ目を引く。会場内にずらりと並べられた試食用のスイーツを眺めれば圧巻だ。
大きくデコレーションされたケーキはもちろんのこと、パティシエたちのセンスを映した、小さくても目の残像に残るような鮮やかな仕上がりのスイーツが数多く並んだ。
バレンタインデーを前にした時期と言うこともあり、スカイベリーを丸ごとチョコでコーティングしたものも登場した。スポンジだけでなく、デニッシュや和菓子にもイチゴをトッピング。舌だけでなく、目でも多くの来場者を魅了した。
特に注目を集めていたのは、2月25日までの期間限定メニューとして、東急プラザ銀座7階、東急ハンズの新業態カフェ「HANDS EXPO CAFE」で提供される「スカイベリーラグジュアリーレッドパンケーキ」。カフェの人気メニューであるパンケーキにスカイベリーを大胆にトッピングした。スカイベリーの粒の大きさと形の良さが、プレミアム感をさらに高める。
この日はスイーツだけでなく、肉料理、魚料理にスカイベリーを取り入れたメニューも紹介した。味の面でも、懐の深さを強調する。
とはいえ、最終的に強く印象に残ったのは、各テーブルに用意された、何の脚色も施されていないそのままのイチゴだった。ガラスの皿の上に置かれたシンプルな一粒が、スカイベリーの魅力を強く訴えた。
「横にではなく縦にかじってください」。パーティーの冒頭に、石原所長にうながされて、スカイベリーをそのままかじる。イチゴは円すい形の先端に行くに従い甘さが凝縮されていくのだという。横からかじってしまうと、甘い部分とそうでない部分に分かれてしまうそうだ。そう言われてかじると、自然な甘さが実にみずみずしい。
食べてみると、畑を実際に見てみたくなった。一番ぜいたくな、とれたての瞬間を味わってみたい……。栃木県小山市にあるいちご研究所が隣接する「いちごの里」を日を改めて訪ねる。
「いちごの里」は、イチゴ狩りのできる観光施設。12月から5月まで、有料で、畑に入り、自分でもいだイチゴをその場で食べことができる。
ビニールハウスで温度管理されたイチゴ畑は、1月下旬にもかかわらず、すでに春の肌触り。ハウスの中に入ると、ずらり一直線にイチゴが並ぶ。何よりその大きさに目を見張る。
もちろん一部には花もあり、熟したもの、まだ白いものが入り乱れる畑なのだが、その中の完熟のイチゴの色鮮やかさと大きさには目を見張る。まだ摘み取られていないイチゴがとてもおいしそうに見えるのだ。ちょうど食べごろの物だけを選んで盛ったパックの方がおいしそうに見えるに違いないと思っていたのだが……。
「ぜひ食べてみてください」
そう促されて完熟の大粒を、大きく口を開けてかじる。パーティーで食べたものとは比べものにならないくらいみずみずしくおいしく感じる。
「たぶん錯覚でしょう。でも、そこにこの施設の意味があります」
そう解説された。ビジュアルにとことんこだわったスカイベリーは、見た目の良さもまた味の一部と言っても過言ではないという。その意味で、今の今まで太陽の光を浴びていたつやつやの粒を口に含めば、よりおいしく感じないはずはない。
都心から100キロほど、十分日帰りで訪れることが可能な栃木県だからこそ、地元までわざわざ足を運んで食べることの動機づけになった。
スカイベリーはもちろん、とちおとめやあまおうといった高級ブランドイチゴは1パック1000円前後する高級品だ。それを考えれば、家族連れなら、栃木までわざわざ足を運ぶ労は惜しくはない。実際「いちごの里」は大盛況で、大型観光バスが多数駐車場に乗り付け「イチゴ狩り」も予約が必要な状況という。
味の優れた食材だけに、そこにパティシエの一工夫、二工夫が加われば、極上のスイーツに仕上がることは間違いない。都心の多くの店で、春先までのシーズン、多くのスカイベリーを使ったスイーツがショーケースに並ぶだろう。
一方で、素材そのものを味わう、イチゴをそのまま食べるのであれば、わざわざ産地に足を運んで食べるのも悪くない。
プレミアムなイチゴ、スカイベリー。ぜひぜいたくに食べてみてほしい。
(渡辺智哉)
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