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「残業とおじさんは嫌い」が改革の原点 青井丸井社長

青井浩 丸井グループ社長(上)

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NIKKEI STYLE

2008年から働き方改革に着手した丸井グループ。「いつもおじさんが集まって、延々と会議していることが、業績が回復しない原因ではないか」と気付いた青井浩社長は、働き方改革の実現とダイバーシティー(多様性)の実現に取り組み、業績回復に道筋をつけました。青井社長に詳しく伺いました。

一般社員のプロジェクトから始まった

白河桃子さん(以下、敬称略) 御社は08年から働き方改革に取り組み、今、残業時間はほとんどゼロに近いと伺いました。

青井浩社長(以下、敬称略) 一人あたりの残業時間は平均で年間44時間ですから、月に4時間を切っています。

白河 もとは130時間(年)だったんですよね。小売りも金融も長時間労働の現場です。両方の業態を抱える御社がなぜそんなことができたんでしょうか?

青井 きっかけは、08年に一般社員たちが立ち上げた「働くプロジェクト」、通称「ハタプロ」という活動でした。当社はこういったプロジェクト活動が盛んなんですよ。

ハタプロが立ち上がり、メンバーたちが自主的に、「どうすれば残業時間を減らせるか」という問題を議論し、だんだん盛り上がってきて、「やはり上司たちの協力がないと実現できない」という結論に至りました。管理職もハタプロに参加することになり、徐々に全社的な動きに発展していったのです。

それから7年くらいかけて、残業時間を着実に減らしていきました。07年度に年間平均130時間だった残業時間は、16年度には44時間まで減少。おそらく、日本の大手企業の中では最も残業が少ない部類に入ると思います。

白河 確かにそうですね。これは、店舗にいる社員たちも含めた数字なのでしょうか。

青井 そうです。ただ、全社員約6000人のうち最も多いのは店舗で働く社員ですが、08年の取り組み以前から、店舗社員の残業時間は極めて少なかったのです。「36協定」(法定労働時間外や休日に従業員を働かせるために労使で結ぶ協定)が極めて厳格で、残業自体が極めて難しかったからです。社員が残業をする時は、その都度申請をして許可を得ないといけません。

ですから、残業時間の問題は、店舗よりも本社や関連会社の方が深刻でした。特に、店舗の内装設計や施工をする関連会社は、夜中まで作業をしなければならないこともありました。

「残業」こそが元凶だと気付いた

白河 閉店後の作業になりますものね。

青井 そうです。夜間に作業しなければならなかったり、オープン日に間に合わせなければならなかったりというケースがありますから。あるいは、本社でいえば、宣伝販促や広報なども残業が多かったですね。それをプロジェクトメンバーが中心になって、部署ごとに残業時間の目標を設定、仕事の「見える化」やITの活用などで残業を減らしました。

白河 一般社員たちが自主的なプロジェクトを立ち上げたということですが、以前青井社長自身も「残業が嫌い」とおっしゃっていましたよね。

青井 そうなんです。僕自身、残業が大嫌いなんですよ。仕事は好きでも無駄な残業が好きな人はいない。

僕も、かつては長時間の残業を強いられる環境に身を置いていました。当時は、体力的にも精神的にも疲労がたまり、極限状態まで達していたと感じます。

僕が営業を担当する取締役だった時のことです。毎週、午後3時から夜10時まで夕食もとらずに行われる「営業会議」というものがありました。バブル崩壊後の91年ごろから始まったもので、急落した業績をどうすれば回復させられるかと、「ここは正念場だ」と責任者たちが一堂に会して時間も構わず議論をしていたのです。

当初は、数年努力すれば業績は回復するだろうと考えていました。しかし、回復どころかどんどん悪化していったのです。そのまま5~6年が経過し、僕だけではなく、周囲の責任者たちも限界に近づいていました。

そんなある日、いつもの営業会議で、食事もとらず頭がもうろうとしている時、はっと気が付いたのです。「いつも同じおじさんたちばかり集まって、延々と意味のない議論をしていること自体が、業績が回復しない最大の原因なのではないか」と。

白河 素晴らしい啓示が降りてきましたね。

青井 神の啓示でしたね。それ以来、僕は「残業」と「おじさん」が大嫌いになりました。そこから、働き方改革とダイバーシティーに力を注ごうと心に誓ったのです。

白河 その後、働き方改革に取り組んだ御社は、徐々に業績を回復させていきました。「残業を減らしたら、業績が上がった」という見本のような企業だと思います。一方で、「本気で労働時間を減らしてしまうと売り上げも落ちるのではないか」と考える経営者もたくさんいらっしゃいます。

青井 残業時間は減りましたが、営業時間は少し増えたのです。例えば店舗の場合、以前は9時間営業ですとシフトに縛られない「通し勤務」が可能でした。

その後、世の中が少し夜型になってきたうえ、当社のお客様は若い方が多いということもあり、閉店時間を夜8時から9時、あるいは8時半に変更しました。すると、どうしても交代制でやらざるを得なくなったのです。

そこで、残業は一切やらないとしたうえで、最大50ものシフトパターンを組み合わせて、店長やマネジャーがきめ細かく管理するようにしました。

白河 店舗の方がシフトがある分、残業をしない形で回っているわけですね。

「自主的に取り組む」ことが成功要因

白河 働き方改革を進めるときには、3つの要素が必要だと考えています。一つはリーダーシップ。2つ目は制度などのインフラ整備。3つ目はマインドセット。このあたりは、どのように工夫されていたのでしょうか。

青井 まず、リーダーシップが極めて大切だと思います。トップが残業に対して肯定的だと、自然と社内に伝わってしまいますし、評価軸が「残業時間」になってしまうんです。しかし、僕は「残業は敵」「残業は全く評価しない」ということを貫いてきました。ボトムアップも大きいのですが、僕の姿勢は社内にも大きな影響があったと感じます。

制度に関しては、先にも触れましたように、管理者たちががんばって最大50ものシフトパターンを組んでくれたことが、残業時間を削減する仕組みになっていたと思います。

最も大事なのは、マインドセットだと思うんですよね。そこは、一人一人が自主的に考えて、話し合い、お互いに働きかけないとなかなか浸透していきません。

例えば、ノー残業デーを決めて、夕方6時半を過ぎると上司が見回りをするというように、「残業をやめろ」と言うだけでは、あまり意味がないと思うのです。

当社の基本的な考え方は、繰り返しになりますが、「無駄な残業が好きな人なんか、誰もいない」ということです。みんな、仕事を効率的にこなし、時間通りに切り上げて、その後は家族や友人と過ごしたり、習い事をしたり、趣味に興じたり、自由な時間を過ごしたいわけです。

無駄な残業時間を減らすことで、仕事自体も楽しくなる。それを上が強制するのではなくて、みんなが自主的に、やりたいようにできる環境づくりを進めていくことが大切だと思います。

人に言われてやると、すごく「やらされ感」が出てしまいますよね。そうじゃなくて、みんながやりたいことを実現するためにプロジェクトを立ち上げてもらい、会社はそれを後押しするのです。

自主的にやりたいことができる環境をつくることができれば、自然と働き方改革は進みます。そこで重要になるのは、トップなどの影響力のある人が、それを信じられるかどうかだということ。ここが、意外と決め手になるのではないかと思います。

白河 影響力のある人が、周囲の行動を信じて、後押しをしていく。その一方で、抵抗勢力もあるかと思います。

青井 抵抗勢力という言葉は、同じ社員に対して使いたくはないのですが、確かに以前は「残業文化」がありました。僕自身も、「誰よりも早く出社して、誰よりも遅くまで仕事をするのが上司だ」と言われましたし、そういうふうにしなければならないと思っていました。

しかし、その実態というのは、早く仕事が終わっても、行き場がなかったり、やることがないという、かわいそうなおじさんたちの言い分があったりするんです。しかし、その方たちは、既にかなり卒業されていきましたので、徐々に「残業文化」は解消されていきました。

女性活躍のカギは「上位職志向」への転換

白河 残業時間の削減と並行して、ダイバーシティーの推進もされているそうですね。先ほど、営業会議におじさんしか出席していなかったことが、営業成績が上がらない原因の一つだと思われたというお話がありました。そこで、ダイバーシティーの重要性にも気付いたということでしょうか。

青井 そうです。今は、どんなに重要な会議でも、必ず女性社員や若手社員が同席しています。ただ、おじさんが悪いわけではないんです。僕もおじさんですから。「おじさんだけ」という同質性がダメなのであって、ベテランにはベテランの役割があります。

白河 会議メンバーには、女性社員や若手社員も参加してもらうという点は、どうやって改善していったのですか?

青井 最初のうちは、なかなか浸透しませんでした。しかし、僕自身が、女性社員や若手社員が出席していなければ、会議に参加せずに帰ってしまうということを繰り返すうちに、周囲が「社長は本気で言っているんだ」と理解するようになりました。

白河 例えば、御社のような業態ですと、どうしても男性の仕事と女性の仕事が分かれていたと思います。昔は、女性が売り場の仕事をして、責任者に昇進していくのは男性というように。そのような古いデパートカルチャーのようなものはかなり払拭されたのでしょうか。

青井 こちらは白河さんのご専門だと思いますが、よく反論としてあるのが、「女性自身が、上位職志向ではない」という意見です。女性社員に調査をすると、やはり、管理職を目指したくないという結果が出る。実は、当社も例外ではありませんでした。

女性活躍についての改善策は、2013年度くらいから始めました。当時のアンケートによると、上位職を目指したいという女性社員は41%しかいませんでした。そこで、積極的にワークショップを行った。それで意識が変わってきまして、16年度には上位職志向の女性社員が64%まで増えてきました。

白河 残業が少ない会社は、必然的に女性が活躍するようになります。管理職の女性比率は必ず上がります。みんな、希望を持って仕事ができるようになるからです。もう一つ、社員の出産も増える傾向があります。

ただ、ここで重要になるのは、女性社員の上位職志向を刺激するということです。残業時間が短くなり、制度が充実して働きやすくなり、希望を持てるようになっただけでは十分ではありません。制度が充実しているほど、現状に安心してしまうというところがあるから。そこで、上位職志向への意識転換も同時に進めていくことは、とても重要なポイントだと思います。

(来週公開予定の下編では丸井の働き方改革と仕事に対する価値観の変化。企業文化の変革への取り組みと丸井グループが目指す「共創文化」について詳しく伺います)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 森脇早絵)

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