恋人と離れずに ワークスの「アジアIT新卒」獲得術

「インドの学生が最も重視するのは、どの国でキャリアをスタートするかです」と成沢氏は話す。IITでは、学生の就職活動に対する大学就職課の関与が比較的強いという。「オープン・プレースメント・ウイーク」への参加はもちろん、学内での企業説明会や夏に行うインターンシップも、すべて大学の就職課を通す必要がある。

就職課も学生たちの思いを反映してか、シリコンバレーなど国際的に活躍できる拠点を用意する企業を優遇する形で、説明会や選考会の枠を割り当てるという。成沢氏は「シンガポールは英語が公用語だし、世界の一流企業が集まっている。そこに拠点があれば、優秀なインド人技術者をもっと採用できると考えたのです」と明かす。

シンガポール、新卒も「即戦力」志向

シンガポールに拠点をつくり、インドでの採用を始めてまもなく、シンガポール国内でのIT人材の採用も開始した。今では、採用のために1人が常駐している。入社する学生の大半が、英教育誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションが2017年9月に発表した世界大学ランキングでアジア首位となったシンガポール国立大学や南洋理工大学の出身だ。

シンガポールでは、企業が新卒者に「即戦力」となるよう求める傾向が強いという。そのため、学生側も大学1、2年生の頃から「見習い」として長期のインターンシップに参加する人が多い。インターンで優秀さを示した学生には、採用の道が開ける。就活の際の履歴書にインターンの経験を書き、自身のスキルとして売り込んでいくのが普通だという。

シンガポール政府から奨学金を得て大学に通う周辺諸国の留学生たちも、シンガポールにある企業への就職を目指す。奨学金を受ける条件として、卒業後の数年間、シンガポールの企業で働くことを義務付けられているからだ。このため留学生は、よりステータスの高いシンガポールの企業や外資系現地法人への就職を目指して活動する。

中国、家族・恋人が大切

中国最難関大の一つ、北京大学の門=PIXTA

中国の大学生が企業に求めているものは、より現実的だ。ワークスは上海にも開発拠点を持つ。そこで採用する学生には、家族や将来のパートナーとなる恋人との生活を就活時点から強く意識している人が多いという。その視点から、働く場所や給料を厳しく選ぶのだ。

背景には、2015年まで30年以上続いた「一人っ子政策」と、独特の戸籍制度がある。中国では、都市の人口をコントロールするのが政府の姿勢だ。引っ越しはできるが、教育や医療などの公共サービスで優遇措置を得るのに必要な「戸籍」は簡単に得られない。生まれた場所以外で戸籍を取るには、「教育のバックグラウンド」「納税額」など、いくつかの条件を満たす必要がある。なかでも北京や上海など大都市は狭き門だ。一人っ子の大学生は、北部出身なら北京、南部出身であれば上海の戸籍を望み、家族のそばにいようとする。同様に、将来を約束した恋人がいれば、恋人の望むエリアで働けるかどうかも、企業選びのカギになるという。

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