マネー研究所

投資道場

世界のフィンテック銘柄への投資 剛腕女性CEOの見方 世界のどこに投資する?(13)フィンテック銘柄

2018/2/6

画像はイメージ=123RF

 最近、「フィンテック」という言葉を聞かない日はない。これはIT(情報技術)と金融の融合の意味で、スマートフォン(スマホ)決済やクラウドファンディングなどのサービスが急速に進展している。世界でこうしたサービスを展開するフィンテック企業は米シリコンバレーなどに集まっている。具体的にはどんな企業があり、どんな革新力を持つのか。米ニューヨークに本拠を置くアーク・インベストメント・マネジメントのキャサリン・ウッドCEO(最高経営責任者)に聞いた。

 アーク社は日興アセットマネジメントにアクティブ型投資信託「グローバル・フィンテック株式ファンド」の運用を助言している。同投信は2016年12月の設定開始以来、2000億円近い純資産残高(17年末時点)を積み上げている。

■破壊的イノベーションは成長エンジン

――フィンテック関連銘柄に投資する意義とは。

アーク・インベストメント・マネジメントのキャサリン・ウッドCEO。米アライアンス・バーンスタインに12年在籍し、50億ドル(約5500億円)を運用した経験もある

 「お金が使われる場所には常に、フィンテックの技術が入る余地がある。フィンテック分野では破壊的イノベーション(Disruptive Innovation)が急速に進むといわれており、今後はこれが世界経済の成長エンジンになると見ている」

 「米欧だけでなくアジアの動きも早い。特に中国がフィンテックによる革新をリードしている。決済を含めた同国の電子商取引(EC)は目覚ましく進展しており、消費を大きくけん引している。国内総生産(GDP)で計算されない部分もある。また日本のフィンテック技術は高く、インターネットの普及により物を買う際のスマホ決済などの利便性が高まっていると聞いている」

――「グローバル・フィンテック株式ファンド」の上位組み入れ銘柄の多くは米国企業だ。米国の強みは何か。

 「インターネットのプラットフォーム(基盤)を手掛ける会社が多いこと。例えば17年の1年間を通して、良好な運用成績に大きく寄与したのが、決済サービスのスクエア(17年末時点で1位、組み入れ比率5.5%)やレンディングツリー(同4位、4.3%)。両社はデータとAI(人工知能)を組み合わせて使う点に特徴がある。米シリコンバレーではビッグデータとAI、アルゴリズムを使って最適な組み合わせを見いだすのが一種のトレンドになっている。これらを専業にしている有力企業が多いのが米国だ」

 「ただ、米国だけが運用対象ではない。中国のテンセント・ホールディングス(同3位、4.4%)は『微信支付(ウィーチャットペイ)』というスマホ決済サービスを手掛け、爆発的な広がりを受けて収益も急速に拡大し、ファンドの運用成績に貢献している。日本のSBIホールディングス(同9位、3.1%)も米リップル向けブロックチェーン技術が評価されて、良好な成績を収めた。日本のメガバンクなど大手金融機関もフィンテック関連事業を広げているが、私たちはより特化している企業に注目して調査している」

――フィンテック銘柄への投資は世界の様々な国に広く投資することになるのが分かった。では調査体制はどのようになっているのか。

 「現在6人のアナリストがいて、近く2人増員予定だ。伝統的な運用会社の調査体制とは異なり、それぞれがセクター(業種)分類にとらわれることなく、破壊的イノベーションのテーマごとに担当している。具体的にはロボティクスや次世代インターネット、ブロックチェーン技術、自動運転など自動化、エネルギー貯蔵システム、DNA解析……などだ。大学で研究したり各分野の先端企業で調査したりした経験を持つなど、それぞれの技術の知識が豊富なアナリスト集団といえる。各人がアカデミズムとも連携して技術を分析し、運用助言に生かしている」

■生活を変える技術としても注目

――仮想通貨も昨今の大きな話題だが、これも分析対象なのか。

 「その通り。仮想通貨の将来には楽観的で、今後、大きく伸びていくと見ている。仮想通貨の流通が広がれば、海外送金に伴うコストを劇的に下げる効果が期待でき、越境ビジネスの拡大につながる。米エヌビディアが手掛ける画像処理半導体(GPU)は仮想通貨のマイニング(採掘)にも使われており、とても重要なパーツだ。一方、仮想通貨を各国の規制当局がどう取り扱うかも大切な視点だ。米国でも仮想通貨は有価証券なのかどうか、議論が進んでいる。見解がどう統一されるかに注目している」

――個人投資家にとって、フィンテック分野への理解は大切か。

 「フィンテックは投資対象としてだけでなく、私たちの生活を大きく変えるものだ。次世代を継ぐ子供たちにも、私たちが指針を与えないといけない。私は破壊的イノベーションに焦点を当てるために当社(アーク)を立ち上げた。今後は大学などの研究機関とも連携し、フィンテック分野の普及・啓発をさらに進めたい」

◇  ◇  ◇

 AI、フィンテックなど次世代イノベーション関連の投資信託はおおむね成績好調だ。今回紹介した「グローバル・フィンテック株式ファンド」の17年のリターンは実に46%、世界のロボット関連銘柄に投資する「ロボット・テクノロジー関連株ファンド」(大和証券投資信託委託)は36%、AIによる成長期待銘柄に投資する「グローバルAIファンド」(三井住友アセットマネジメント)は29%となっている。17年は運用環境が良かったこともあるが、革新技術を持つ成長企業への投資が奏功し、高い収益率を確保した。

 ただし技術革新のペースは速く、運用面でも素早く対応する必要がある。今後の狙い目の一つは新興国拠点の企業だ。中国にはアリババ集団、テンセントという有力企業があり、インドや東南アジアでもスマホ決済が急速に広がる。南米ではアルゼンチン発祥のメルカドリブレ(南米最大のECサイト)がモバイル端末を使った決済サービスを急速に広げている。ウッドCEOも今回のインタビューで、運用対象を米国だけに限らない姿勢を明確に示していた。新しい技術への目利きと機敏な運用ができるかどうか。信託報酬などのコストに見合う価値の提供が求められている。

(マネー報道部 南毅)

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL